賃貸物件のオーナーをしている方は、家賃滞納トラブルに悩まされることもあるのではないでしょうか。
特に長期的な家賃滞納はオーナーにとって死活問題であり、何としても家賃を回収したいものです。
家賃滞納トラブルを解決するには、最終手段として裁判が挙げられますが、費用もかかるためオーナーとしても躊躇するところです。
そこでこの記事では、裁判までに行うべきことやその流れについて、詳しくご説明していきます。
家賃滞納トラブルを解決したい!裁判の前に催促を
家賃滞納トラブルは、家賃を主な収入源とするオーナーにとっては死活的問題で、年々増加している「空室問題」よりも厄介であるといわれています。
というのも、家賃滞納の場合、家賃を回収できないことが大半な上に、トラブル解決までに長い時間を要するからです。
さらに、滞納者との交渉がうまくいかない場合は、裁判によって法的な対応をしなければならないため、その分費用も発生してしまいます。
そのため、裁判はあくまでも最終手段と考え、まずは家賃滞納者に対して支払いを求めることから手順を踏んでいきます。
では、その流れについて以下で見ていきましょう。
①電話による対処
家賃滞納が1週間ほどの場合、まずは本人に直接電話をすることで家賃支払いの催促を行います。
催促の第一手段といえ、これに応じなければ、督促状で通知をします。
②督促状による催促
督促状とは、家賃の滞納や借金の返済を催促するための手紙です。
電話に応じず、家賃滞納から半月以上経過する場合は、督促状で催促を行います。
③連帯保証人への連絡
電話や督促状による催促に反応がない場合、契約時の連帯保証人に家賃滞納の旨を連絡します。
④催告書を通知
上記の連絡にも応じず、家賃滞納から1か月以上が経過している場合は、滞納の支払いに加え、契約解除を踏まえた最終通告を通知してください。
この催告書は、その後の裁判の際に重要な証拠書類となるため、必ず内容証明郵便を介して通知してください。
裁判沙汰になる前に!家賃滞納者に効果的なプレッシャーを
裁判ではなく、督促状・催告書の段階で家賃滞納トラブルを解決することができれば、オーナーにとっての負担は大幅に減らすことができます。
では、催告書の通知によって滞納者との交渉が可能になった場合、どのようなことをポイントに交渉を行えばよいのでしょうか。
交渉をうまく成立させるためには、滞納者の状況をある程度汲み取った上で、効果的なプレッシャーをかけることが重要です。
具体的なプレッシャーとしては、以下になります。
・指定日までに入金しなければ法的処置をとる
・裁判、弁護士にかかった費用は滞納者に請求する
・連帯保証人に対しても訴訟を起こす
・家賃が回収できない場合は契約解除をする
以上のような厳しい対応の旨を滞納者に伝えると良いでしょう。
ただし、分割支払いや減額、立ち退き日の日程調整など、滞納者側へのある程度の譲歩も必要です。
また、口約束ではなく、交渉内容に関した同意書を交わし、公生証書を作成することで、万が一の場合にも強制執行の申立をすることができます。
注意したい家賃滞納者への催促方法!訴えられる場合も
これまでに、裁判を起こすまでにできる、家賃滞納の催促方法についてご説明してきましたが、その中で気を付けたい点もあります。
それは、行き過ぎた催促が違法行為になり得る点です。
特に、頑なに催促に応じない滞納者に対しては、強引な催促をしてしまう場合があり、逆に訴えられてしまうケースも少なくありません。
犯罪になり得る行為については、主に以下になります。
・脅迫や恫喝、暴力
・早朝や深夜の電話、訪問
・玄関鍵の交換
・家財の無断搬出
・玄関、ポストへ張り紙をする
・保証人以外への催促
上記のような恐怖心を与える行為については、滞納者に訴えられる要素になり得るので注意が必要です。
したがって、支払いの催促は感情的にならないように、慎重に行うようにしてください。
家賃滞納トラブルを裁判で解決!手続き方法と流れ
家賃滞納者に対し、これまでの催促を行ってもなお応じない場合は、最終的な手段として裁判を起こすほかありません。
裁判所での民事訴訟には、明け渡し請求の申立と同時に、滞納家賃の請求もすることができます。
明け渡し請求とは、裁判所の判決に伴い、滞納者を強制的に物件から退去させる手続きを指します。
明け渡し請求を申立するには、以下の書類を揃えて裁判所に提出してください。
・訴状
・不動産登記簿謄本
・固定資産評価額証明書
・代表者次項証明(原告・被告が法人の場合)
・証拠書類
前述したように、証拠書類には内容証明郵便を介した催告書を始め、賃貸借契約書などを揃えてください。
請求の申立後、裁判が始まるまでには遅くとも1か月半を要しますが、被告人の滞納者が裁判を欠席した場合、ほとんどの場合は、訴状に記載された請求通りの判決が下されます。
また、家賃滞納を巡る裁判の場合、裁判が長引くことはほとんどないため、申立から2か月~3か月で退去手続きは完了すると見て良いでしょう。
判決後に滞納者が退去しない!強制執行による明け渡し
裁判での判決後、滞納者に対してオーナーによる明け渡し交渉が行われます。
しかし、判決が下されたにも関わらず、それでもなお、滞納者が退去しないケースもあります。
その場合、オーナーは強制執行の申立を行うことができます。
強制執行とは、確定判決に基づいた債権者の請求を、国の強制的な手段によって執行することです。
この強制執行の申立が受理されると、裁判所から滞納者に対して「立ち退きの催告状」が通知され、1か月以内の退去が命じられます。
催告状に記された期日通りの立ち退きが行われなければ、最終的な手段として、執行官によって強制的な明け渡しが行われます。
滞納者の家財や私物は部屋から全て撤去され、執行官の倉庫に一定期間保管されます。
また、訴訟時に滞納家賃の請求も同時にしていた場合、その後滞納者による支払いが行われなければ、資産の差し押さえをすることもできます。
弁護士に依頼する選択肢も
これまでに、家賃滞納を巡る裁判から強制執行までの流れをご説明してきました。
裁判によって家賃滞納トラブルを解決するには、費用だけでなく時間もかかるため、全てを一人で行うには非常に大変なことです。
そのため、プロである弁護士に依頼することで、家賃滞納トラブルを円滑に解決させることをおすすめします。
では、弁護士に依頼するメリットについて、以下で見てみましょう。
・法的に有利な催告書を作成してもらえる
催告書は、裁判の有力な証拠書類として役立ちます。
そのため、オーナー側にとって有利な催告書を作成することができます。
・交渉の代理を務めてくれる
滞納者と交渉の機会が生じた場合、弁護士が代理人となって交渉してくれます。
オーナー、滞納者間では感情的になりやすい話も、プロの弁護士であればまとまりやすくなり、効果的なプレッシャーをかけることにも繋がります。
・裁判には心強い
最終的な手段として裁判を起こすことになった場合、裁判所へ提出する書類作成や申立手続きを弁護士に任せることができます。
以上のように、弁護士に依頼することができれば、裁判沙汰になる前にトラブルが解決することも望めます。
もちろん、弁護士に依頼するにはその分費用がかかりますが、素人では時間がかかる交渉や法的手続きも、スピーディに進めることができます。
家賃滞納トラブルの解決には大きな負担が伴うので、弁護士に依頼するのも一つの選択肢として考えると良いでしょう。
まずは交渉でトラブル解決を
家賃滞納者に対しては、まずは通知を介した催促から始め、話し合いでトラブルが解決できるようにしましょう。
ただし、催促の中で脅迫や恫喝などの行為があった場合、逆に訴えられてしまう場合があるので、感情的な交渉は避けるようにしてください。
それでも問題が解決しない場合は、裁判所に訴えることで、強制的な立ち退きと滞納請求を行いましょう。