土地の分筆を検討しているという方もいらっしゃるかもしれません。
大きな土地を所有していたり、親の土地を相続することになったり、その理由はさまざまでしょう。
分筆には費用がかかりますから、メリットやデメリットを十分に踏まえた上で行動に移す必要があります。
ここでは、分筆についてくわしくお話しすると同時に、手続きの流れについてもご紹介していきましょう。
分筆する目的とは?
まずは、「分筆」についてくわしくご説明していきましょう。
土地について少しでも知識のある方は、分筆がどのようなものか、だいたいご存知かと思います。
分筆とは「ぶんぴつ」と読み、1つの土地を複数に分けて登記しなおすことを指します。
土地は1筆、2筆というように「筆」という言葉で数を数えます。
したがって、1筆の土地を2筆以上に分けることを分筆と呼び、分筆する目的としては、以下のことが挙げられます。
・土地の一部分を売りたい
・隣家が境界を越えてきたため、一部分のみ清算したい
・新築で融資を受ける際、担保の対策として土地を狭くしたい
・相続した土地を兄弟で分けたい
・道路として使われた部分を清算するため
・土地の一部分の地目を変更したい
上記のように、分筆を検討するにはさまざまなケースが考えられます。
しかし、分筆にはメリットもデメリットもあります。
次項では分筆のメリットからご紹介していきましょう。
分筆のメリット①「権利関係」「融資の際の抵当権設定」
ここからは、分筆することで生まれるメリット・デメリットをご紹介していきましょう。
まずはメリットからです。
通常、1筆の土地は1つの登記であり、所有者も1人となります。
そのため、土地の一部分のみ売りたい場合や、兄弟で土地を分けることで、異なる権利関係を登記しなおすことができるのが、分筆の最大のメリットとなります。
また先ほど、分筆する目的として「新築で融資を受ける際、担保の対策として土地を狭くしたい」というケースもあるとご説明しました。
例えば、自分が広い土地を所持していたとします。
その土地に家を新築するとして、銀行から融資を受けるとしましょう。
融資を受ける際は抵当権などを設定する必要がありますが、1つの広い土地のままではその土地全体に抵当権がかかります。
広い土地全体に対して抵当権がかけられると、万が一ローンの支払いが滞った際、土地のすべてを失う可能性も考えられます。
そのため、新築する土地と使わない土地を分筆することで、抵当権の負担を少なくすることができるのです。
分筆のメリット②「一部地目変更できる」「税金が安くなる」
続いても、分筆することで生まれるメリットをご紹介していきましょう。
分筆することで土地の「地目」を分けることが可能となります。
もともと「畑」や「田」として使っていた土地に、家を新築したいと考える方もいらっしゃるでしょう。
その場合、分筆を行い、一部分を「宅地」へと変更できるのです。
逆に、宅地だった土地の一部を文筆して、「畑」へ変更することももちろん可能です。
また、分筆することで税金が安くなる場合があります。
固定資産税や相続税などの税金は、評価の高い土地であるほど高くなります。
土地の評価は、土地に面している道路の幅、土地の形、また間口などによって決まります。
特に土地が大通りに面している場合は、税金は高くなるでしょう。
そこで、土地を2つに分筆して、大通りに面している土地、面していない土地に分けるのです。
それにより、道路に面していない土地の税金をかなり安くすることができるのです。
今までは土地の全体にかかっていた税金が、分筆することで、2筆の総額で支払ったとしても、安くなる可能性があるということです。
続いては、デメリットをご紹介しましょう。
分筆のデメリット
分筆にはさまざまなメリットがあることが分かりました。
ここでは、分筆することによって発生するデメリットを見ていきましょう。
以下でデメリットをまとめました。
・分筆すると費用がかかる
・新築できない土地になってしまう可能性がある
・税金が上がってしまう可能性がある
・使い勝手が悪くなることがある
・リフォームしづらくなることがある
・登記を分けるため手間が増える
以上が考えられるデメリットとなります。
分筆費用に関しては仕方のないことですが、固定資産税などの税金が上がってしまう可能性は無視できません。
先ほどはメリットとしてご紹介した分筆による税金対策ですが、心配な方は実行される前に土地家屋調査士に相談することをおすすめします。
減税に精通した調査士であれば、良いアドバイスをしてもらえるでしょう。
また、使い勝手やリフォームのしづらさに関しても、分筆前に十分に検討する必要があります。
メリット・デメリットを踏まえよう!分筆の手続きの流れ
分筆のメリット・デメリットを十分に踏まえたら、手続きを行っていきましょう。
分筆は、土地家屋調査士に依頼して行うことが一般的です。
以下で手順をご紹介しましょう。
【分筆の手順】
①土地家屋調査士に依頼する
②法務局・役所が調査する(登記事項証明書、測量など)
③現地予備調査を行う
④現場の立会いをする(境界の確認をする)
⑤境界確定後、測量を行う
⑥分筆案が作成される
⑦境界杭の設置を行う
⑧登記書類が作成される
⑨登記を申請する
土地の分筆を土地家屋調査士に依頼することは一般的ですが、費用がかかります。
節約のために自分で行おうと考える方もいますが、専門的な知識が必要となるため、あまりおすすめできません。
特に、測量や境界杭の設置などは技術が必要となるため、素人には難しいでしょう。
また、自分で分筆した場合と、いくつかの土地をまとめて土地家屋調査士に依頼した場合とでは、あまり費用が変わらない場合もあるのです。
土地家屋調査士は土地のプロですから、安心してお任せしましょう。
メリット・デメリットを踏まえよう!分筆の費用の目安
分筆のメリット・デメリットを十分に踏まえたら、まずは土地家屋調査士に相談します。
そこで気になるのが「費用」がどのくらいかかるかでしょう。
以下で費用の目安をまとめました。
【分筆にかかる費用の目安】
・測量費…10万円~
・筆界確認書作成費…10万円~
・官民境界画定図作成費…10万円~
・境界杭設置費…10万円~
・登記申請費…5万円~
・登録免許税…分筆した後の筆数×1,000円
「境界線」がすでに確定している場合は、筆界確認書作成費および官民境界画定図作成費は必要ないので、その分費用を抑えることができます。
そのため、それぞれ次のようになります。
・境界線が確定している場合…25~50万円
・境界線が確定していない場合…50万円~150万円
費用にかなり差が出ることが分かりましたね。
ただし、現在の土地で境界杭が見当たらない場合は、改めて境界画定が必要となるため、注意が必要です。
このように、分筆するには大きなお金が動くこととなります。
メリット・デメリットを踏まえてしっかり検討しましょう。
分筆はメリットが多い!よく検討しよう
土地を分筆すると、さまざまなメリットが生まれます。
広い土地に新築する場合などは、税金対策のためにも分筆を検討しましょう。
ただ、分筆には費用がかかります。
土地の使い勝手が悪くなった場合も、登記済みのものは取り消しができず、再度登記しなおすといった形となります。
余計な費用を払わないためにも、メリット・デメリットを踏まえて事前によく検討しましょう。