家賃延滞に対し利息は請求できる?民法改正後はどうなる?

賃貸経営を行う中で大家さんが困る事案の一つが、家賃の延滞です。

家賃の延滞に対して利息は請求出来るのか、そもそも家賃の延滞リスクを避けるためにはどのような対策があるのかを詳しくご紹介していきます。

また2020年4月からの民法改正によって、今後連帯保証人から今まで通りの賃貸借契約書で家賃が回収できるのか等を検証します。

家賃を延滞した場合利息も請求出来るのか?

入居者が家賃を延滞した場合、家賃の延滞日数に応じた利息を請求することは可能なのでしょうか?

結論から申しますと可能です。

契約書に、家賃を延滞した場合は延滞損害金(遅延利息)を支払わないといけないとの条文が載っている場合があります。

家賃を延滞するという事は、債務不履行という事になってしまいますので、大家さん側は延滞損害金を請求出来ます。

では、どの程度の延滞損害金を請求出来るのでしょうか?

この場合は消費者契約法に基づき、年14.6%を上限と定められています。

14.6%を超える部分にあたっては無効となってしまいます。

多くの賃貸借契約書を見てきましたが、大部分の契約書は年14.6%に準ずる内容が記載されています。

しかし、例外として年14.6%以上の延滞損害金を請求出来るケースがあります。

主に2点あり、

1.事業用として物件の賃貸借契約を締結した場合

2.法人にマンションを貸す場合

この2点に関しては、消費者契約法上の利息上限以上の利息が請求出来ます。

契約書に記載されていなくても家賃延滞に対し利息は請求出来るのか?

上記ケースは、契約書に延滞損害金の内容が記載されているので、消費者契約法を超えない範囲での利息を請求することは可能です。

では、契約書に延滞損害金の文言がなかった場合、家賃を延滞した場合の利息は請求できないのでしょうか?

これも結論から言えば、請求出来ます。

契約書に記載の有無は関係なく、民法の中で延滞損害金は請求出来ると謳っています。

金銭債務の債務不履行にあたりますので、文言の有無に関係なく請求出来ます。

では、この場合の利息も消費者契約法に基づいて、最高利息の14.6%を超えない範囲になるのでしょうか?

契約書に損害賠償の利率や延滞損害金の金額が入っていない場合は、年5%の割合と記載されています。

これにも例外があり、貸主が事業として、賃貸業を行っている場合は、年6.0%まで、利息を上げることが可能です。

家賃の延滞が起こった場合の対処法

家賃の延滞が起こった場合、まず大家さんがなすべきことを考えましょう。

通常契約書には、前月の末日までに翌月分を支払うか、当月1日までに当月分の家賃を支払うと契約書には明記されています。

この期日を1日でも過ぎた場合は、直ちに入居者へ連絡した方が良いでしょう。

どうしても、生活が苦しく家賃が遅れ気味になってしまう入居者は出ることもあります。

良かれと思って期日を伸ばしていると、家賃の滞納が1ヶ月、2ヶ月と延びてしまい、どんどん延滞額が増えるといった負のスパイラルに陥りがちです。

実際、家賃の支払いに1ヶ月分でも苦慮している入居者が2ヶ月、3ヶ月と溜めてしまって支払えるのかと言ったら、なかなか難しいと言わざるを得ないでしょう。

先程も述べましたが、家賃を延滞すると延滞損害金という利息が発生します。

家賃と利息の2重で支払わないといけなくなったら、更に支払いに困窮するといったことも十分に考えられます。

結局、入居者が家賃を払えなくなってしまい、裁判や訴訟となり、大家さんは費用を払って家賃を回収して、部屋は明け渡してもらうという、あまり良くない結果になることもあります。

大家さんは、家賃を待つよりも早め早めに家賃の延滞を解消する方が、かえって入居者にとっては良いことなのだと考えて請求するべきです。

家賃を延滞した場合の利息の計算方法や時効について

家賃の延滞利息について、利率に関しては契約書に記載されている場合の最高税率は14.6%と先程述べましたが、実際の計算方法について考えましょう。

損害遅延金の計算式は下記の通りとなります。

【賃料×延滞利率×延滞日数÷365日=損害遅延金】

この式に当てはめて具体的な例を挙げてみます。

家賃10万円のマンションで、滞納期間が1ヶ月間としますと

10万円×14.6%×30日÷365日=1,200円となります。

10万円の家賃を1ヶ月間延滞してしまったら1,200円の利息が発生します。

延滞損害金に関しては日割りでの計算となりますので、1日延滞するごとに、「1,200円÷30日=40円」の利息が増えていっていると考えてください。

家賃を延滞してしまったら、本来であれば払わなくていいお金を支払うことになってしまいますので、毎月契約書に沿った期日に応じて家賃はきちんと収めていくことを心がけていきましょう。

では、この延滞損害金に対して時効は発生するのでしょうか?

民法では家賃に関しては支払期限から5年を経過すると、消滅時効に該当するようになります。

延滞損害金もこれに準じて5年で債務が消滅します。

民法改正により家賃延滞者への対応も変わる?

2017年6月2日に公布され、2020年4月1日より民法の一部が改正されます。

120年ぶりの改正ですので、大きな話題となりましたが、賃貸借契約における部分も一部改正されます。

大きく変わったところが連帯保証人に対する部分です。

賃貸借契約では一般的に、入居者の身元を保証する人として連帯保証人をたてて賃貸借契約を締結します。

賃貸借契約における入居者の行動に対して責任を持たないといけないのが連帯保証人で、万が一、家賃の延滞などがあった場合に、入居者が払えない場合は利息も含め、連帯保証人に請求することが可能でした。

しかも請求金額に上限がなく、1年でも2年でも家賃の延滞金額が溜まっても連帯保証人への請求は可能でした。

しかしながら、今回の民放改正にあたって、連帯保証人に対する負担があまりにも大きいという理由で、賃貸借契約を交わす際に極度額を設定しなければならなくなりました。

極度額を設定することにより、連帯保証人は賃貸借契約時に、最大いくらの負担をすればいいのかが分かるようになります。

あまりにも高すぎる極度額の設定は、今回の改正における連帯保証人の身分の保護から離れることになってしまいます。

そのため、あまりにも高すぎる極度額の設定に関しては、無効となる可能性もあります。

家賃延滞を解消する家賃保証会社の存在

近年、家賃保証会社による家賃保証というのが主流になっています。

賃貸借契約時に入居者に家賃保証会社に加入してもらうことにより、万が一家賃の延滞があった場合、家賃保証会社が入居者に代わって、大家さんに支払ってくれます。

家賃保証会社が入居者に対して未払い賃料の請求も行います。

大家さんが自分で管理している時に、入居者に家賃の延滞があった場合、利息の請求どころか家賃の請求すらやりずらいという大家さんが多い様です。

それが悪循環となり、どんどん家賃が溜まってしまい、結局溜まった家賃を払わないまま退去してしまったというケースも今までは多かったのです。

その為、家賃保証会社の存在は非常に大きく、滞納リスクをほとんど負わなくなっており、賃貸経営にとって大きなプラス材料となっています。

家賃の延滞リスクを極力避けるためにするべきこと

入居者の家賃延滞が続くと、大家さんは利息の請求どころか家賃の請求さえ難しくなってしまいます。

なるべく延滞リスクは避ける、若しくは被害を最小限にすることが賃貸経営にとって大事です。

家賃保証会社を活用したり、連帯保証人への極度額を適正に設定したりすることで、家賃の延滞リスクを極力さけることが可能となるでしょう。