普段郵便物や身分証明等に使用している住所ですが、不動産売買の時には住所ではなく地番を尋ねられることがほとんどです。
地番は日常生活では使うことが少ないので、住所と異なること自体認識している人は少ないかもしれません。
なぜ地番と住所が異なるのか、それぞれの違いを理解しておけば不動産売買や相続の時に慌てることがありません。
地番と住所は異なる?
地番と住所が異なるとの認識がある人は、そう多くはありません。
これは「地番」が、普段の生活ではそれほど重要なものではないからです。
実際に不動産を所有している人でも、自己所有の土地の地番を覚えていない人もいるでしょう。
登記事項証明書を取得する場合には必ず地番が必要となりますが、登記事項証明書を取得する機会はそう多くはありません。
身近な場面で言うと、不動産売買や不動産相続の時なとです。
固定資産税などの税金などを支払う時に送られてくる納付書には課税明細書が記載されていますが、いくつもの土地や家屋を所有している場合「どの地番がどの土地のものか」までは分かりません。
一方で、住所は普段の生活に密接したものとなっています。
郵便物に記載されているのも、住民票に記載されているのも、免許証などの身分証明書に記載されているのも、全て「住所」です。
地番が分からなかったとしても、住所が分からないことはないでしょう。
それほど生活の中で当たり前に存在しているのが「住所」なのです。
基本的には住所が分かっていれば生活に支障のないことから、地番と住所が異なることを認識されずらいと言えるでしょう。
地番と住所の違いは?
地番とは、土地の一筆ごとにつけられた番号のことです。
そしてこれは登記所がつけるものです。
しかし全ての土地に地番があるとは限りません。
登記がなされていない土地には地番はありませんし、所有権が明白で徴税の必要がない国有地などにも地番がないことがあります。
一方で住所とは、市町村役場が決める住んでいる場所の正式名称を指します。
家が建ってから住居表示の申請をすると役所の人が玄関の位置を確認し、町名、街区番号、住居番号が割り振られる仕組みです。
だから建物がないところには住所は存在しません。
住居で「◯番△号」と表示される場合、◯番に相当するのが「街区符号」、△号に相当するのが基礎番号と呼ばれます。
街区符号は道路や線路、河川、水路などで区切りをつけるものであらかじめ決定されています。
基礎番号は一定の角を起点として区市町村ごとに決められた一定間隔でつけられるもので、同じ場所でも玄関の位置によって変わる仕組みです。
また、建物が隣接していて玄関が同じ基礎番号にあたる場合には同じ住所になることは珍しくありません。
大きな土地を分筆し建売住宅として販売された住宅も、近所と住所が同じだったということがよくあります。
このように地番と住所には何の関連性もなく、異なるものであると言えます。
地番と住所が異なる理由は?
ではなぜ「地番」と「住所」を異なっているのでしょうか。
住居表示に関する法律が制定されたのは、昭和37年5月10日のことです。
実は「住所」が導入されてからまだ60年も経っていないのです。
住居表示に関する法律が制定される以前は、地番で全てが管理されていました。
しかし区画割りが変更されたり、都市が密集化してきたことにより地番のみでの管理が不便となってきました。
戦後は特に市街化が進み、町界が道路や河川などの実際の境界と必ずしも一致しておらず、その土地がどこにあるのかを地番で特定することが難しくなってきたのです。
そのため住居表示に関する法律が導入されました。
住居表示に関する法律では、第1条に「合理的な住居表示及びその実施について必要な措置を定め、公共の福祉の増進に資することを目的とする」と明確な目的が記載されています。
これにより町名、街区番号、住居番号が割り振られることによって、これまでの地番で管理するよりも管理がしやすくなりました。
全ての土地の地番と住所が異なるとは限らない!?
しかし、地番と住所が必ずしも異なるというわけではありません。
住居表示は区市町村が決定するもので、住居表示を導入していない区市町村も存在するからです。
住居表示に関する法律は住所を必ずしも導入させるものではなく、導入はあくまで自治体の判断に委ねられています。
住所を導入すれば管理はしやすくなりますが、従来の地番も管理しなければならないためトラブルのもとになると否定的な自治体も存在します。
このような自治体では以前同様に地番で住所が表記され、住所と地番が同じになります。
特に地方都市では市街化が進まず、地番での管理が難しくないことから住所を導入しない自治体も多いようです。
主要都市である東京でも新宿区や国立市、日野市、調布市などでは住居表示は未実施となっています。
地番の調べ方は?
地番と住所が異なるかどうかさえ判断がつかない場合、地番を調べるためにはどうしたら良いのでしょうか?
自己所有の不動産であれば登記識別情報や権利証などに記載されていますから、簡単に調べることが可能となります。
さらに年に一度送られてくる、固定資産税の納税通知書にも記載されているので確認してみましょう。
しかし複数の不動産を所有している場合には、固定資産税の納税通知書では対応関係までは分かりません。
自己所有でない不動産の地番を調べるにはブルーマップを使う方法があります。
ブルーマップは住居表示と地番を重ねて表示している住宅地図のことで、法務局や図書館などに備え付けられています。
ブルーマップは大変高価なものなので入手は現実的ではありませんが、近年では「登記情報提供サービス」や「JTNマップ」からも地番を調べることができます。
自治体によってはホームページ上で地番を調べることのできるシステムを導入していますが、一般的には法務局へ行って地番照会を行うのが確実でしょう。
マンションや山林の地番には気をつけよう!
マンションのように大きな建物は、複数の土地にまたがって建築されていることがあります。
住所と地番は別物ですから、そのままの場合には該当する地番がいくつもあることがあるので注意しましょう。
また山林の地番については境界がどこからどこまでなのか、非常にわかりづらいものです。
公図と地積測量図を法務局より取得し、調べる必要があるでしょう。
法務局はあいている時間がかぎられていますが、登記事項証明書や公図、地積測量図などはオンライン請求が可能です。
さらに区画整理などがあった場合、従前の土地と換地後の土地の地番情報が異なることがあります。
その場合、市町村ごとに区画整理事業に関する資料が作成されているはずですから自治体に確認してみると良いでしょう。
地番と住所に関係性はない!
住居表示に関する法律が制定されるまでは地番と住所は同じものでしたが、現在の地番と住所には何ら関係性はありません。
地番と住所が異なるということは、普段の生活ではあまり気にとめることが少ないかもしれませんね。
しかし不動産売買や不動産相続などでは必ず必要になってきます。
地番と住所の役割の違いを認識した上で、どのような方法で調べれば良いのかを理解しておくと慌てずに済むでしょう。