登記上の地目が墓地である土地を売買することはできるのか?

墓地というと、都会では霊園などの一区画にお墓を建てるのが一般的でしょう。

しかし、田舎では村落の墓地があったり、所有する土地を墓地として利用していることがよくあります。

今回は、このような地目が墓地である土地は、相続や売買ができるのか、また、どのような手続きが必要なのかを勉強していきましょう。

墓地は法律で用途が定められ、登記上の地目も「墓地」である

昨今は「終活」というものが流行しています。

人生の終わりに向けて、安心して逝けるように身の回りを整理することをこのように呼んでいるのです。

その終活の1つが、墓地の購入や廃止でしょう。

生きている間から立派な墓を建てておく人もいれば、代々の墓地の墓じまいをして、永代供養などを利用する人もいます。

昨今は少子化、核家族化が進み、墓1つとっても子供にとって負担が大きくなっています。

そこで、子供に墓を建てさせたり、代々の墓地の管理をさせることのないよう、親が終活として、墓の始末をしておくのでしょう。

ちなみに、皆さんは墓地というものはそもそもどのようなものかご存知でしょうか。

土地にはそれぞれ地目というものがあり、墓地は23ある地目のうち「墓地」という地目で登記されています。

そして、「墓地」とは「人の遺体又は遺骨を埋葬する土地」と不動産登記の法律で定められています。

都会の霊園や田舎の共同墓地、また個人所有の墓地などであっても、遺骨などを埋葬している土地は、いずれも墓地として登記されているはずです。

ところで、よく「家を買う」のと同じような言い回しで「墓を買う」などと言いますが、墓地も宅地と同じように相続や売買ができるのでしょうか。

霊園にお墓を建てる場合、墓地は売買契約ではなく使用権契約になる

私たちが新たに「墓を建てる」「墓を買う」などと言う場合、特に都会などでは、一般的に霊園やお寺などに墓を建てることを意味します。

なぜなら、現行の墓地、埋葬等に関する墓埋法により、個人の土地などに墓を新設することは認められていないからです。

つまり、他の選択肢がないのです。

そこで、霊園やお寺のなどが所有し、すでに墓地として登記している土地の一区画を使用する契約を結ぶのが一般的です。

正確に表現するなら、「墓を買う」とは墓地を売買するのではなく、永代使用料や管理費を支払って土地を借り受けるということになります。

この場合は、借りる方は特に登記や地目変更をする必要はなく、霊園などと契約を結ぶことで墓を建てることができます。

また、墓は祭祀財産であり、慣習に従って祭祀継承者が引き継ぐことと民法で定められており、墓石と同じように永代使用権も引き継ぐことができます。

つまり、契約した人が亡くなっても、その子や孫が権利を引き継ぐことができるわけです。

ただ、墓地の所有権はあくまで霊園やお寺にあり、契約で無関係の他人にその権利を譲渡することは禁止されています。

そのため、このような契約形態の墓地は、基本的には売買することは不可能であると言ってよいでしょう。

地方の村落の墓地も地目は墓地だが、みなし墓地である場合も

地方などでは、霊園でもお寺でもなく、昔からの村落の墓地というものが存在しています。

これは、誰かの土地を売買によって取得し、墓地としたものではないようです。

おそらく自然発生的に、村の山などを切り拓いて墓地としたり、お寺の敷地に接する一角などを墓地と決めて、昔から継承してきたものでしょう。

墓地については、昭和23年に先の墓埋法が施行されました。

それによると、墓地などを経営しようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならないとされています。

しかし、それ以前からすでにあった墓地については、みなし墓地とされ、許可を受けたものとして墓地の経営が認められています。

このような村落の墓地は、誰かの所有地ではなく、村の共有地とされていたりもします。

また、地目が墓地であれば固定資産税も相続税もかからないため、調べても誰の所有地かわからないというものも多数存在します。

ただ、その墓地の継承などについては、地方ごとの慣例に従って、一家の後継ぎなどに代々受け継がれているようです。

また、田舎などでは、古くから個人で先祖代々の墓地を所有しているお宅などもあります。

個人の墓地の新設は認められていませんが、このような古くからの墓地は、現在も所有や相続が認められています。

墓地を廃止するような場合も地目変更が必要となる

ところで、新しく墓地を経営するためには、都道府県知事の許可が必要と述べました。

他にも、法務局で地目の変更や登記などをしなければなりません。

そして逆に墓地を廃止する場合にも、いくつかの手続きが必要となります。

霊園などでは、まず墓地使用者1人1人の承諾を得なければなりません。

その上で都道府県知事に墓地廃止許可申請書の提出が必要です。

ちなみに、一般の個人所有の墓地もこれ以降は同様の手続きとなります。

都道府県知事の許可が下りれば、墓じまいのための閉眼供養などが必要です。

供養が終わって初めて墓石を撤去し、中の遺骨などを取り出すことができます。

また、遺骨などを他の永代供養の墓地などに移す場合は、最寄りの市町村に改装許可書の申請が必要です。

このような段階を踏めば、墓地の廃止ができますが、廃止するとその土地の地目を「墓地」としておくことができなくなります。

そこで、引き続き法務局で地目変更の手続きをしなければなりません。

例えば墓地を相続して更地にし、売買するような場合も、通常はこのような手続きが必要になります。

地目変更で売買も可能になる?墓地に関する手続きと費用

地目変更の手続きには登記申請書や住宅地図を用いた土地の案内図、登記簿に載せられている土地の公図の写しなどが必要です。

多少複雑な手続きになるので、これを土地家屋調査士に依頼するとなると、1筆なら5万円程度、複数なら7~8万円程度の費用がかかります。

また、霊園などに墓を建てる費用は、墓所の所在地や墓石によって変わりますが、少なくとも100万円程度は必要でしょう。

逆に墓じまいの平均費用は、お墓の撤去と遺骨の移設だけでも10~30万円、その他に寺院への離檀料や供養のお布施を考えると、50万円程度が必要です。

そして、その後に遺骨をどうするかによって変わりますが、永代供養する場合でも、さらに数十万円が必要となってきます。

このように、どちらの場合にしても高額な費用がかかってくるため、子供に負担をかけまいと終活が流行るのも頷けますね。

ところで、基本的に墓地の売買は不可能であると述べましたが、個人所有の墓地の場合、墓じまいをして更地にし、地目変更すれば売買も可能になります。

土地が売れれば、墓じまいの費用の足しにすることもできるでしょう。

ただ、墓地であれば固定資産税はかかりませんでしたが、宅地や雑種地などに地目変更をすると税金がかかります。

また、元墓地であった土地は相場よりかなり査定が低くなるなどというデメリットがあることも覚悟しておかなければなりません。

地目が元墓地である土地の賃貸や売買

例えば、親から相続した墓地を更地にし、有効活用したいとアパートなどを建てたとしましょう。

もちろん近所の人はそこが元墓地だと知っていますが、よそからきた人にはわかりませんね。

ただ、不動産仲介業者が仲介する場合、重要事項もしくは締結可否の判断材料となりうることとして告知義務が発生します。

つまり、元墓地であったことを内緒にしたままで契約することは不可能ということになります。

ちなみに法務局で調べると、100年前くらいまでなら土地の利用状況を調べることもできるそうで、過去の地目が墓地であったことは隠せません。

恐らく、そのような土地に相場の買値や家賃を支払う人はいないでしょう。

かなり安く売るか、安く貸すことを覚悟しておかなければなりません。

その上で、墓じまいやアパートの建築費などを含めて、採算がとれるかどうかを考慮しなければ、有効活用どころか不採算事業になってしまいます。

このように、墓地は特殊なもので、廃止するにも地目変更して売買するにも注意が必要です。

また、逆に安い土地を購入するような場合には、そこが元墓地などではないか確認することも必要ではないでしょうか。

墓地だけではない今できる終活の準備を

今回は、墓地について地目変更の手続きや売買などの方法を勉強してきました。

人間いつかは最期の時を迎えるもので、その時になって困らないように備えておくことは必要でしょう。

例えば、登記簿で実家の相続すべき土地の地目を確認したり、家計簿に墓を建てるための貯金を付け加えたり、いくらでもできることはあるはずです。

終活とまではいかなくても、皆さんも早めの準備を心掛けてみてはいかがでしょうか。