ビルの窓に付いている逆三角の赤いマークは何を意味するの?

ビルなどを見ていると、高い位置にある窓に「逆三角形の赤いマーク」が貼られていることがあります。

これは、一体何を示しているのでしょうか。

こうしたことはあまり話題に上らないので、「今までずっと気になっていたけれど、よくわからずにいた」という人も多いことでしょう。

このマークにはどんな意味があるのかなどを、この記事で一緒に見ていきましょう。

窓に貼られている赤い逆三角形は一体何?

マンションやビル、病院などでも見かけることがありますよね。

ふとした時に窓に赤い逆三角形のマークが貼られていることに気づき、それ以来、ずっと気になっていたという人も多いのではないでしょうか。

建物の窓に貼られていることが多いこの赤い逆三角形は、一体何なのでしょうか。

実は、このマークは、「非常時の際に破って入るための窓」を示す重要なものです。

つまり、「人命を助ける必要に迫られた際は、この窓を蹴破って入っても良い」という意味なのです。

専門用語では、これを「非常用進入口」と言います。

また、ここで言う「非常時」とは、主に火災のことです。

火災発生時に、迅速な救助活動をするための目印になるマークなのです。

火災が起こると、炎だけでなく、煙も多く発生します。

ビルや病院などは建物の中に多くの人がいるので、逃げ遅れる人が出てしまいます。

そして、消防隊員は、そうした人を一刻も早く助け出す必要があります。

しかし、次々と発生する炎や煙に覆われてしまえば、どこから入れば良いかわかりません。

そのため、破っても良い窓であるということを知らせるために、赤い色の逆三角形マークを貼って目立たせているのです。

窓に赤い逆三角形を貼るのにも基準がある?

しかし、この赤い逆三角形は、どこでも貼れるというわけではありません。

実は、どこに貼るのかという明確な基準があるのです。

それが、「建築基準法」という法律です。

建築基準法上では、「3階以上の建物で、高さ31m以下の部分に赤い逆三角形マークを設置すること」と定めています。

これは法律で決められているので、3階以上の建物においては、31mより下の部分に赤い逆三角形マークを貼ることは「義務」です。

そして、進入口については、

・道(または道に通じる幅)が4m以上ある通路に設ける(狭いとはしご車が入れない)

・進入口の間隔は40m以下

・バルコニーを設けること(進入の際に必要)

が定められています。

ただ、道幅が4m以上はないという場合には、「その他の空地に面する外壁面」に設ければ良いことになっています。

また、「31m」というのは、はしご車の高さが関係しています。

31mまでならばはしご車が何とか届くので、これが基準になったのです。

また、窓の大きさにも基準があります。

これについては、次の章でお伝えします。

赤い逆三角形を貼るには、窓や位置にも決まりがある!

赤い逆三角形を貼る窓や位置も、何でも良いということではありません。

赤い逆三角形を貼れるのは、

・幅が75cm以上あって、高さが1.2m以上ある窓

と明確に決まっています。

さらに、

・床面から80cm以下の位置であること

とされています。

なぜ床面から80cm以下の位置に貼るのかというと、進入した消防隊員の活動をしやすくする必要があるからです。

そして、窓に貼る赤い逆三角形のマークにもいくつかの決まりがあり、

・一辺の長さが各20cmの正三角形であること

・赤色反射の塗料が塗られていること

が必要です。

ただ、両面赤色である必要はありません。

もちろん、両面が赤いものもありますが、外側だけが赤で室内側には白地に赤字で「消防隊進入口」と書かれているものもあります。

窓に赤い逆三角形のマークがある場合に守るべきこと

ここでは、窓に赤い逆三角形のマークがある場合に守るべきことについて、お伝えしましょう。

窓に赤い逆三角形のマークがある場合は、

・進路を塞がない(窓のそばにモノを置かない)こと

・外から開くようにしておくこと

・進入口のガラスは割れやすいものにしておくこと

などを守らなければなりません。

その理由は、これらに違反していると、もしもの時に救助活動ができなくなるからです。

さらに、救助活動のため、進入口の近くに置いておいたモノを壊されても文句は言えません。

そして、火災が起こらないのが一番良いですが、火災はいつ起こるのか、どこが火元になるか予測がつきません。

ビル火災でも病院の火災でも、思いもよらないところから出火するケースが意外と多いものです。

その時に、窓が割れにくかったりモノがあってなかなか中に入れないということになれば、助けられる人も助けられなくなってしまいます。

また、長い間窓の開閉がないと、いざという時に窓が開かず困ることがあります。

そのため、避難訓練を行なう際には、赤い逆三角形のマークのある窓が開くかどうかも確認しておくと良いでしょう。

3階以上の建物では、窓に必ず赤い逆三角形を貼らなければならない?

先ほど、「3階以上の建物は、31mより下の位置にある窓に赤い逆三角形を貼るのが義務になっている」とお伝えしました。

しかし、必ずしそうしなければいけないわけではありません。

実は、

・「非常用進入口」に代わる窓がある

・非常用エレベーターが設置されている

などの場合には、「非常用進入口」を設置する必要がないので、3階以上の建物であっても赤い逆三角形マークをつける必要はないのです。

また、「非常用進入口」には進入するためのバルコニーがあることが望ましいですが、「非常用進入口」が、

・道(または道に通じている幅4m以上の通路)やその他の空地に面している階の外の壁面に窓がある

・建物の壁面の10m以内ごとに窓がある

といった場合には、バルコニーの設置義務もありません。

これは専門用語で「代替進入口」と言いますが、そもそも、多くのビルや病院などではバルコニーがありませんよね。

しかし、窓は沢山あります。

進入路となるバルコニーがなくても比較的スムーズに進入できるので、これらの設置が免除されているのです。

ただし、バルコニーだけが免除になっている場合には、赤い逆三角形マークは窓に必ず貼らなければならないので、間違えないようにして下さい。

「非常用進入口」に指定できない窓もある!

ここまで、赤い逆三角形のマークが貼ってある窓(非常用進入口)について見てきました。

非常の際に消防隊が侵入できるよう、3階以上の建物には設置が義務付けられていることや、三角のマークの大きさも指定があることなど、色々なことがわかりましたね。

しかし、「非常用進入口」に指定できない窓もあります。

最後に、それをお伝えしましょう。

「非常用進入口」に指定できないのは、「屋外から人が進入するのを防がなければならない重大な理由がある場合」です。

例えば、

・有害ガスや病原菌など有害物質を扱う建物

・爆発物を扱う建物や変電所

・冷蔵庫のある倉庫、金庫室、美術品の保管庫

・留置場、無菌室

などがそれに当たります。

こうした建物では、進入口を設ける方が、

・大きな事故につながり危険

・犯人の逃走や盗難などの被害が出る

ため、非常用進入口の設置対象から外れているのです。

ただし、こうした部屋があったとしても、その真上の階(または真下の階)から非常用進入口のないその階に入れるようになっている必要があります。

このように見てみると、建物の赤い逆三角形マークのルールは、様々なケースを考えて作られていることがわかりますね。

赤い三角形マークには重要な意味がある!

今回は、ビルなどの窓に貼られている「赤い三角形のマーク」の意味についてお伝えしました。

このマークには、「火災時に、その窓が非常用進入口であることを知らせる」という重要な役割があります。

そして、貼る位置やマークの大きさにも様々な基準があり、貼ってある窓の近くではルールを守ることで、いざという時に効果を発揮します。

赤い三角形のマークを見たら、「火災のためのものだ」と思い出してみて下さい。