賃貸不動産を契約する際、不動産会社から出された見積もりを見ると、その中に『日割り家賃』という項目があります。
日割り家賃は初期費用や退去時の費用を含め、予算に大きく関わってくる重要な要素です。
特に入居時にかかる費用では大きなウエイトを占めるので、初期費用を抑え、良い引越しをしたい方はその仕組みを知っておきたいものです。
今回は入居時に覚えておきたい、『日割り家賃』の計算方法や活用する場面を解説したいと思います。
家賃とは先払いで計算され、日割りで払っている!
まず前提として知っていただきたいのは、家賃とは一般的に『先払い』で計算して請求しているということです。
例えば借主が5月30日に銀行口座から支払った家賃は、来月分、6月1日から6月30日の30日分の家賃を払った、ということになります。
そして家賃は、月によって日数が違っても、毎月納める金額に差がありません。
日数が30日ある月と31日ある月、28日しかない2月でも家賃は毎月変わらず一定です。
実は、家賃は月割りで払っていると思っている方が多いのですが、日割りで払っています。
例えば家賃84000円の物件を借りている場合、月30日借りると一日あたり、84000÷30=2800円です
これを2月の日数、28日割りにすると、一日あたり84000÷28=3000円になります。
一日で見たら200円家賃が変わりますね。
しかしこれを月に一括で払うと、
2800×30=84000
3000×28=84000
となり、つまり同じ84000になります。
つまり借主が住んでいる部屋は月ごとに一日分の家賃が変わっているのですが、一括で払うとどの月も同じになるというわけです。
毎月払う家賃とは『日割り家賃を一括払いしたもの』なのです。
これが基本の家賃の考え方になります。
先払いのため、家賃を日割りで計算する必要がある!
その日の家賃を先に払っておかないと、大家さんは住むことを許可してくれないのが賃貸不動産のルールです。
ということは、部屋を借りる時点で大家さんに家賃を払わなければいけません。
それをいつ払うのか、というのが最初の契約の時です。
不動産会社で見積もりを出してもらうと、『前家賃』という項目があると思います。
これが入居する最初の月の家賃となります。
とはいえ、全ての人がキリ良く月のはじめの1日や、月末に引っ越せるわけではありません。
そのために最初の月の入居費用を日割りにして、入居した日から月末までの日数分最初に回収するというわけです。
この『家賃』には『共益費』や『管理費』といった家賃に付随して請求される金額も日割りで計算して乗ります。
月によっては日割りの分母が素数(31日、29日)の月があり、日割りで小数点が出ますが、大抵の場合小数点第1位を切り上げか四捨五入します。
ちなみに賃貸不動産は敷金や仲介手数料を『家賃の1ヶ月分』などと表記をしますが、この場合の家賃には共益費や管理費を含みません。
例えば家賃70000円、管理費10000円、敷金礼金共に1ヶ月分の物件は、月に支払う額は80000円ですが、敷金礼金はそれぞれ70000円です。
『家賃の〇月分』という表記に管理費等を含めて請求することは法律で禁じられていますが、前家賃だけは初期費用で管理費などが計算対象になります。
家賃の日割り計算で初期費用が大きく変わる!
日割り家賃のことがわかりましたが、入居日によっては計算が異なることがありますので、具体的な例で紹介いたします。
契約の際、前家賃は『1ヶ月分と入る月の日割り家賃』となる場合がほとんどです。
例えば6月15日に、入居日を定めたとしましょう。
その場合契約時に請求される前家賃は6月15日から6月30日までの16日分に7月1日から7月31日までの31日分の合計、47日分を請求されます。
この場合、口座から初めて家賃が引き落とされるのは7月31日で、それは8月分の家賃となります。
ではこの入居日が、6月30日だった場合はどうなるでしょうか。
前家賃は6月30日分の1日分と、7月の31日分、合計32日分になります。
この場合、最初に家賃が引き落とされるのは7月31日です。
最後に入居日が7月1日になった場合はどうでしょうか。
前家賃は7月1日~8月31日までの62日分が初期費用の前家賃に乗ってしまいます。
この場合は、8月31日に初めて家賃の引き落としが始まります。
つまり入居日の設定によって、初期費用が丸々家賃1ヶ月分変わってしまうわけです。
これは家賃を払っているだけなので借主は損はしていないのですが、初期費用に予算を設定している方は入居日によって大きく費用が変わるため、入居日には注意した方が良いでしょう。
退去時には家賃が日割り計算で返還される
賃貸不動産の契約時、契約日によって日割り家賃が発生し、その日数によって計算された金額を払う、というお話をしました。
では退去時の場合はどうでしょうか。
大抵の場合、退去日によって払った家賃を日割りで返還してもらえることになります。
例えば5月25日を退去日に定めた場合、家賃は4月中に5月31日分までが払われています。
5月25日に退去してしまうと、5月26日から31日までの6日間の間の家賃が無駄になってしまいます。
この場合は退去時に、立ち合いに来た不動産会社が部屋の汚れや破損等の確認後、敷金などと共に償却し、6日分の日割り家賃が返還されることになります。
退去日によっては次の入居先の家賃と重なってしまい、その日数分は2つの部屋の家賃を払うことになるのでそこは注意が必要です。
日割り家賃の裏技!フリーレント
入退去時における日割り家賃の計算について説明しましたが、やはり入居時の初期費用が大きな問題と言えるでしょう。
月末に入居できれば日割り家賃で大きな前家賃を払うことにはなりませんが、忙しい方はなかなか日時を調整することもできません。
そんな方におすすめしたいのが『フリーレント』の交渉です。
フリーレントとは、入居後に一定期間家賃が発生しない物件を指します。
この場合、初期費用の前家賃を数日カットしてもらえるように交渉しましょう。
例えば5月25日に入居する場合、通常なら5月25日から6月30日までの前家賃が初期費用に乗ります。
それをフリーレントにする交渉によって、5月25日から31日までの7日間の前家賃を無料にし、6月1日から6月30日までの30日分の前家賃だけにするといったものです。
この例で言うと、無料になった7日分をフリーレント期間と言います。
これは大家さんが契約してくれる方にしてくれるおまけのようなものです。
さすがに1ヶ月丸々フリーレントにして、と頼んでも受け入れられないでしょうが、数日レベルであれば交渉に乗ってくれる大家さんもいます。
ただし人気物件の大家さんの場合、そんなサービスをしなくても入居者は他にいると思って話を聞いてくれない場合も多いです。
入居後に大家さんによくない感情を持たれない程度の、常識的な範囲での交渉を心掛けましょう。
日割り家賃を多く払っても、損をしない場合もある
賃貸不動産の場合、基本的に5つの項目で契約時の初期費用の金額が8割方決まります。
前家賃、仲介手数料、敷金、礼金、火災保険料です。
この中で一番削りやすいのが前家賃です。
前家賃だけは大家さんの計算で、任意に減らすことができるからです。
つまり初期費用を減らしたい場合、日割り家賃が少しでも少なくなるように入居日を調整し、できるだけ月末に引っ越すことが一番簡単な方法と言えるわけです。
特に実家など、現時点で家賃のかかっていない家から賃貸不動産に引っ越す場合は家具なども必要ですので、初期費用を抑えたい方が多いと思います。
そのため、このような方は月末の引っ越しがおすすめと言えます。
しかし、日割り家賃を多く払っても、早めに引っ越した方が得になる場合もあります。
今の賃貸物件からもっと値段が安い物件に引っ越す場合です。
単純に引っ越しが早ければ早いほど安い家賃を享受できるので、日割り家賃を多く払っても得になる可能性があるのです。
このような方は月末を待たずとも、引っ越しが可能ならできるだけ早く急いだ方が得なので、初期費用が高くなっても気にすることはないと言えるでしょう。
日割り家賃とは損をするものではない!
誤解が多いですが、日割り家賃を多く払うことは損を多く被っているわけではありません。
払った日数分の家賃をその賃貸物件に住む権利に変えているので、単純に家賃を払っているのと同じということです。
ただ、初期費用というまとまったお金の出るタイミングでの負担なのでそう感じてしまうというだけのことです。
あとは初期費用の予算や引っ越しの日程などを考慮して、自分のニーズに合った入居日を計算してみましょう。