物件を所有し、家賃収入を得ている方は毎年確定申告を提出し、家賃収入にかかる税金も納めなければなりません。
ですが、最近になって物件を所有したり、譲渡、相続などで新しく物件や土地を手にした方は、今まで人に任せきりで家賃収入の税金のルールを知らない人も多いかと思います。
今回は家賃収入にかかる税金と、その時効について解説します。
家賃収入にはどんな税金がかかるのか?
「家賃収入」とは、物件の所有者であるオーナーが、入居や事務所・店舗使用などの目的で賃貸借契約を結んだ借主から受け取る契約料や家賃収益の総称です。
これらは、オーナーが自身の労働で得る収益ではありませんが、収益である以上は課税の対象になるものです。
では、家賃収入にはどのような税金が発生するのでしょうか。
これは、物件のオーナーが個人名義で物件を所有しているのか、法人名義で物件を所有しているのかで異なります。
保有対象が個人の場合は所得税、住民税、消費税がかかります。
それに対し、保有対象が法人の場合、かかる税金は法人税、法人住民税、消費税です。
注意したい点は、不動産にかかる税金には、物件そのものにかかる税金と、家賃収入にかかる税金の2つがあることです。
上記の税金は全て後者(家賃収入)にかかる税金であり、固定資産税など前者(不動産)にかかる税金があることも忘れずに理解しておきたいところです。
そして、これらを計算する確定申告は、2月16日から3月15日の間で行われています。
3月15日を過ぎても申告がなかった場合、無申告として取り扱われます。
確定申告をしていても上記の税金が未納だった場合、支払の時効は3年となります。
この場合、期限内のいつ確定申告をしても、時効成立日は3年後の3月15日です。
確定申告をせずに未納になった場合、時効は5年に延長され、5年後の3月15日が時効成立日となります。
家賃収入の全てが課税の対象になるわけではない?
先の章では家賃収入にかかる税金と、その時効についてご説明しました。
では、不動産を所有し収益を得た時、オーナーさんはどのようにして税金を算出し、確定申告に備えるのでしょうか。
それを知るために「家賃収入」と「不動産所得」という二つの言葉を区別しましょう。
似た言葉ですが、この二つの言葉の違いは分かるでしょうか。
「家賃収入」とは、不動産の借主から受け取る家賃などの収入ですが、言葉の印象のように家賃だけを指すわけではありません。
「家賃収入」とは家賃の他に、
・管理費、共益費などの金銭
・礼金のような返還の必要のない金銭
・滞納家賃など、まだ受け取っていなくても将来的に払われる予定の金銭
などが含まれます。
これに対し「不動産所得」とは家賃収入から物件にとっての必要経費を引いた、純粋な所得になる金額です。
この場合の「必要経費」とは、
・固定資産税
・火災保険料
・修繕費
などのことを指します。
必要経費として認められるかは、家賃収入を得るための努力(またはその状態を維持するための努力)と判断されるかによって決まります。
例えば、オーナー自らが賃貸している物件に住み、自分の住んでいる部屋をリフォームするといったようなものは、家賃収入と関係ないと見なされ、必要経費に含まれません。
また、火災保険や震災保険を物件にかけていたけれど、心配なので個人でもうひとつ震災保険に加入した、という場合も、物件の必要経費とプライベート分で区別されることもあります。
そうして割り出した「不動産所得」は、オーナーさんが不動産で得た収益として計算されます。
家賃収入の条件によっては税金がかからない?
前の章で、不動産による家賃収入とその所得はイコールではないということをご説明しました。
この章では、そうして算出した額を確定申告用に区分する方法をご紹介します。
まず、不動産所得の額が20万円を切った時は、不動産所得を確定申告する必要がなく、税金の課税対象になりません。
また、家賃収入を30万円得るために15万円の必要経費がかかった場合も、不動産所得は15万となるので、非課税になります。
これは物件ではなく、駐車場などを所有するオーナーさんによく見られます。
また、オーナーさんの所有する物件が「事業的規模」であるか否かという点も大きな焦点になります。
「事業的規模」とは、不動産の場合、貸家なら5棟、貸部屋なら10部屋、駐車場なら50台以上という目安を基準に判断がなされます。
この「事業的規模」に認められると、以下のメリットがあります。
・65万円の青色申告特別控除を受けることができる
・家族への給与として、収益の一部を青色事業専従者給与として経費扱いにできる
・回収不能の家賃、取り壊し費用を経費扱いにできる
その反面、事業的規模と認められた時は、青色申告特別控除の適用前の金額から、290万円を控除した額の5%に当たる金額を個人事業税として納めなければなりません。
こうして、他の条件を見直して算出した「不動産所得」と、他の仕事などで得た所得を合わせ、そこから所得控除を引いた額が、税金の課税の対象になる「課税所得」になります。
この課税所得を確定申告で申告し税金を納めますが、確定申告をしたけれど納税しない、または確定申告自体をしなかった場合は、そこから3年または5年の時効期間のカウントダウンが開始されます。
税金に時効があっても中断させられる!
家賃収入や不動産にかかる税金は確定申告によって決定し、確定申告の提出期限が税金の納税時効と密接に関係しています。
これだけ見ると、税金を納めずにいれば時効が成立し、脱税が簡単に出来てしまうように思うかもしれません。
ですが、税務署も未納の税金をそのままにしておくほど甘くはありません。
税金の未納や過少納税には、多くの時効延長ルールとペナルティーが設けられています。
まず「時効の中断」です。
これは、税金を未納にしている期間に税務署から催告状が届き、
・6ヶ月以内に差押えがあった
・督促状が送付された
・一部納税をした
などの条件に当てはまった時、時効が中断されます。
見て分かるとおり、無視し続けても払っても時効が中断するので、最初の催告状が届いた時点で時効が将来的に中断することが確定すると考えてよいでしょう。
時効の中断は、今までの期間のリセットと同義で、また1から時効の期間がスタートします。
例として、2年間未納していた税金に催告状が届いたので一部支払い、また残りを未納にした場合を見てみましょう。
この場合、時効期間のカウントダウンがスタートしていても、時効が中断されていれば、そのカウントが再開した時には、時効期限は3年後ではなく5年後になっているということです。
税金に時効があっても、遅延のペナルティーが付く
家賃収入の主要部分を占める所得税の納税方法は、基本現金による一括払いです。
そのため、全くの未納者はもちろん、申告額を少なくするなどの改ざんを行っていた納税者や、期限までに全納できなかった納税者にも、税金を納められなかったペナルティーとして新たな税金が加算されます。
これを「追徴課税」と言います。
追徴課税される税金を細分化してみると、以下のような種類の税金があります。
・過少申告加算税
・無申告加算税
・不納付加算税
・重加算税
・延滞税(利子税)
これらの税金は「付帯税」とも呼ばれ、所得税などの本来納めるべきだった税金である「本税」と区別されます。
そして、本税には時効はありますが、付帯税には基本時効がありません。
この付帯税を無視し続けていた場合は脱税と見なされて、国税犯則取締法違反として、最悪禁固、懲役の刑罰を受けます。
正確に言えば、「付帯税に時効がない」のではなく「脱税に時効がない」のです。
つまり、本税を未納のまま時効まで納めずにいた人も、それが税務署にばれている限り、本税を未納にしていて発生した付帯税からは逃げられないのです。
本税の時効が成立するのは、そもそも税務署が納めていない税金があることに気が付かず、催告を全くしなかった時だけです。
家賃収入を申告しないと、時効までにこんなに付帯税が!
税金に時効があっても、残念ながら、不動産のような大きなものを持ちながら時効まで逃げることは非常に難しいと言えます。
最後の章では、家賃収入を申告しなかった際の付帯税について解説します。
前提として知っておきたいのは、付帯税はその行為が故意でも過失でも問答無用の請求がかかるということです。
例えば、確定申告をしなかった場合、納税をしたくないという故意でやっても、単純に忘れていたという過失であっても言い逃れが出来ず、平等に課税されてしまうのです。
確定申告をしなかった場合は、それが故意であれ過失であれ無申告ということになります。
その場合、本来納付すべき税額が50万円までは15%、50万円を超えた分は20%を乗じた金額が無申告加算税として課せられます。
ですがこれは、後に修正申告を行えば5%に軽減されます。
ただ、他の所得の確定申告を済ませており、そこに家賃収入を加算していなかったなどの過少申告の場合は、10%の過少申告加算税が課されます。
しかしこれも、修正申告をすれば免除されます。
そして、延滞税については、年間一律で本税の7.3~14.5%の課税がなされます。
これだけで課税所得の20%前後が吹き飛ぶことになりますね。
そして税金の滞納が確認されれば、銀行からの融資も一切受けることができません。
時効があっても絶対に家賃収入は申告し、税金を納めよう
家賃収入にかかる所得税には確かに時効はあるものの、その時効まで税務署にバレずに税金未納のまま逃げ切ることは、メリットがない上に不可能と言えるでしょう。
確定申告も面倒だとは思いますが、忘れると課税の対象になるため、2月16日から3月15日の間にしっかり行いましょう。
追徴課税されると、多少の控除額以上の税金を取られますので、ご注意下さい。