日本の最北端に位置する北海道は、九州の約2倍の面積を誇る、日本一大きな都道府県です。
よく、「北海道は、手つかずの大自然が魅力」と言われますが、そこに住む北海道民の生活とはどのようなものなのでしょうか。
今回は北海道について、他府県と比較しながら、その生活実態について学んでいきましょう。
北海道は九州の約2倍の面積があり、14の区域に分かれている
北海道は、本州、四国、九州、沖縄と並んで、日本の国土を形成する主な地域の1つです。
ただ、特異と言えるのが、本州が34都府県、四国が4県、九州が7県に分かれているのに対して、北海道が1つの地方自治体であるという点です。
その面積は、日本全体の22%に当たる約83,000km?もあり、よく九州と比較されます。
九州は、約42,000km?で北海道の約半分の広さですが、7つの県に分かれており、本来なら北海道も13~14県に分かれていても不思議ではありません。
ただ、その広大な面積を統治するために、北海道庁の出先機関として、1897年にいくつかの郡をまたいだ支庁が設けられました。
その後、市制が施行された1922年に、再編されて14支庁となり、2010年にはその名称を総合振興局や振興局へと変えています。
ただ、支庁という呼び方はいまだに北海道民に深く根付いており、観光などで出かけると、○○支庁という言い方をよく耳にします。
このように、他府県でいうところの県の広さに当たる区分けが、北海道では支庁や振興局であると言えるでしょう。
九州と比較しても北海道の人口密度の低さは飛びぬけている
他に北海道が他府県と違うところは、その人口密度の低さでしょう。
北海道は、北海道本島と508の島で構成されていますが、その中にはいわゆる北方領土と呼ばれる歯舞群島、色丹島、国後島および択捉島も含まれています。
北方領土は、戦後ロシア(当時はソ連)によって不法に占拠されており、日本の国土でありながら、ロシアに実効支配されています。
そのため、日本人が住むことができる北海道の面積は、約78,420km?に限られています。
そして、総人口は、国の統計による2017年の推計人口では約5,320,000人で、全国で第8位の人口を有しています。
ただ、この人口に対する面積の広さは特異で、1km?あたりの人口密度は約68人となっています。
これは、全都道府県中47位で、つまり、北海道は日本一人口密度の低い都道府県であると言えます。
全国1位はもちろん東京都で6263人、2位の大阪で4635人であることから、人口密度の低さがケタ違いであることがわかりますね。
ちなみに、よく比較対象となる九州と比べてみても、北海道が人口密度68人であるのに対して、九州全県ではは308人と、4.5倍の開きがあります。
このことから、北海道は日本一の広大な面積を有してはいますが、人口密度の低さも飛びぬけて日本一であることがわかりますね。
北海道の人口密度の低さは自然が占める面積の割合の多さゆえ
では、この北海道の人口密度の低さはどのような要因によるのでしょうか。
それは、やはり北海道を構成する自然環境に起因していると言えるでしょう。
2016年度に北海道総合政策部が調査した地目割合では、その面積の51%を山林が占めています。
続いて畑が11.9%、原野が5.5%、田んぼが3.2%、牧場が2.2%となっています。
ちなみに宅地はというと、1.6%しかなく、北海道という広大な土地のほんの一部の地域にしか、人が住んでいないことになります。
もちろん、生活する上で宅地以外の土地は必要です。
林業を営んでいれば山林が、農家には田畑が、牧場経営には牧場が必要です。
ただ、それ以上に、ほぼ手つかずで残されている自然があまりにも多いというのが、人口密度の低さの原因と言えるのではないでしょうか。
他にも、日本の北端であり、北緯41度21分~45度33分に位置し、年平均気温は6~10℃程度で氷点下を記録することも多い気象条件もその要因でしょう。
もちろん、北海道全土に渡って、人口密度が同じような状況であるわけではありません。
例えば、九州では7県のうち福岡県、特に福岡市に人口が集中しているように、北海道でも地域差があります。
そのあたりは次の章で、先の支庁や振興局を基準として見ていきましょう。
九州と同様、北海道にも人口分布に偏りがある
北海道は、大別すると、道南、道央、道北、道東と4つに分けられます。
道南には檜山、渡島振興局があり、道央には胆振、日高、後志、石狩、空知の5つの振興局があります。
道北には留萌、上川、宗谷、道東はオホーツク、根室、釧路、十勝の各振興局があります。
道庁所在地である札幌市は、道央の石狩振興局に属し、面積は約1,121km?、人口は1,963,300人で、全道の1.4%の面積に全人口の18%が集中しています。
人口密度を計算すると、1km?あたり1,751人になります。
九州の福岡市は、約4,986km?に人口約5,104,000人、人口密度は1km?あたり1,023人なので、比較すると北海道の都市部の人口密集度の高さがうかがえますね。
ちなみに、札幌市を含む石狩振興局は、14局中人口が約2,835,500人と飛びぬけて多く、2位の道北・上川振興局の494,400人を大きく引き離しています。
また、最下位が檜山振興局で、約36,100人ということから、極端な人口分布差が見て取れます。
そこで、道南、道央、道北、道東の4つの地域の面積と人口を合計し、人口密度を出してみました。
結果は、道南が人口431,200人に対して面積が6,567km?で、人口密度が65人、道央が人口3,353,100人に対して面積22,144km?で人口密度は151人でした。
さらに道北は、人口605,600人に対して面積が18,689km?で人口密度は32人、道東が人口930,600人に対して面積が31,015km?、人口密度が30人という結果でした。
やはり、道央地方の一人勝ちといった様相ですね。
北海道の産業構造から人口の一極集中の原因を探る
このような、道央への人口集中の原因を述べるのに、北海道の産業構造に触れないわけにはいきません。
北海道の工業は、経済産業省の平成24年度の統計で見ると、総出荷額6兆6,728億円ですが、そのうち食品工業が2兆2,098億円で、33%以上を占めています。
一方、金属加工工業は全国平均が48.2%であるのに対し、北海道では15.1%と極めて低い値にとどまっています。
これは、金属加工工業中心の他府県の構造と比較して特徴的であり、農業や漁業の発展とも密接に関係していると言えます。
そして、工業の地域的な特徴としては、札幌や苫小牧、室蘭、千歳などの道央圏に集中しており、全道の出荷高の68.3%を占めているのです。
つまり、工業地帯の道央への集中が、人口集中を招いているということが言えます。
一方、農業では、耕地面積が約11,460km?と全国の1/4を占めており、専業の大規模農家の存在が特徴的と言えます。
2015年の農業出荷額は全国3位の1兆1,852億円で、全国の出荷額の13.5%にもなります。
これを、出荷額全国第2位の九州と比べると、総出荷額はほぼ同じですが、畜産の占める割合が九州の36%に対し、北海道は55%と多くなっています。
この酪農の中心と言えるのが主に道東、道北で、特に十勝、オホーツク、宗谷、釧路振興局地域で、広大な土地を生かした大規模な酪農が行われています。
そして漁業は言うまでもなく、全国の2割の生産量を誇る北海道の一大産業と言えるでしょう。
広大な面積を有する北海道はなぜか持ち家率が低い?
主に九州と比較することで、北海道の面積や人口、産業の特徴について見てきました。
最後に、北海道の住宅事情について見てみることにしましょう。
実は北海道は持ち家率が低いのがその特徴と言えます。
平成25年の統計調査ですが、持ち家率は57.7%で全国で43位でした。
なぜ広大な土地を有する北海道で、地価も安いのに持ち家率が低いのか気になるところですね。
そこで道央の札幌、道南の函館、道北の旭川、道東の釧路で賃貸の価格を調べてみました。
札幌市では3LDKで8.9万円が相場でした。
同様に見てみると、函館市では7.7万円、旭川市では6.6万円、釧路市では7万円といった相場でした。
札幌市などの人口集中地帯は比較的高いと言えますが、道北、道東ではそれより1万円~2万円程度家賃相場が安いことがわかります。
ちなみに、九州のマンション都市である福岡市では、3LDK10.6万円、熊本市で8.8万円でした。
これを見ると、九州よりも北海道の方が、賃貸の相場が一段安いことがわかります。
定かではありませんが、この賃貸相場が安いことが、北海道の持ち家率が低い、言い換えると賃貸志向が強い理由かもしれません。
あくせく働いて住宅ローンを払うよりも、安い家賃の賃貸でよいという考えが、大らかな北海道民にはあるのかもしれませんね。
北海道民は自然と共存する道民性を有している
北海道は、四方を太平洋、日本海、オホーツク海に囲まれた雄大な土地で、山や河川、湖沼など変化に富む地形を有しています。
そして、そのほとんどが大自然のまま残されている、稀有な場所と言えるでしょう。
北海道民は、ガツガツと開拓するよりも、これらの自然と共存する生き方を大切にしていると言えるのではないでしょうか。