変化するパフォーマンスの意味、ビジネスではどう使われる?

皆さんはパフォーマンスという言葉から、どのようなことを連想するでしょうか。

アーティストのダンスや演奏でしょうか。

それともコンピューターの性能などでしょうか。

他にも、コストパフォーマンスやマイクパフォーマンスなどと、他の言葉にくっつけて使うこともありますね。

今回は、さまざまな場面で使われるこのパフォーマンスという言葉が、ビジネスの場面ではどのような意味で使われているのかを勉強していきましょう。

パフォーマンスは一般的には音楽やダンス、演技を意味する

広辞苑でパフォーマンスという言葉の意味を調べると、次のように書かれています。

①実行、実績、成果。

②上演、演奏、演技。

③既成芸術の枠から外れた身体的動作、音響などによって行う芸術表現。

④機械などの動作、性能、機能。

これをもとに考えると、演技や芸術などの表現を指す場合と、実績や性能などの価値を指す場合に大別されるようです。

前者の身近な例では、音楽とダンスのコラボで見せる表現を、よくパフォーマンスなどと言いますね。

中には、ダンサーのことをパフォーマンスをする人という意味で、「パフォーマー」と称するアーティストグループなどもあります。

また、音楽の他にも、演劇やアートなどの表現を指して言う場合もありますね。

一方、後者の例では、最近「コスパ」という表現がいろいろな場面で使われています。

いわゆる「コストパフォーマンス」の略語ですね。

何か商品を買った場合、値段に対して価値があると感じた場合に「コスパがよい」などと言います。

このように、パフォーマンスという言葉は、私たちの生活のさまざまな場面でよく使われており、かなり馴染みのある言葉と言ってよいでしょう。

ところで、ビジネスの場面においては、このパフォーマンスという言葉はどのような使われ方をしているのでしょうか。

コストパフォーマンスという言葉はもともとビジネス用語だった

実を言うと、そもそも前述の「コストパフォーマンス」とは、ビジネス用語、特にIT用語であったものが、一般に普及し、広い意味に転用されたものです。

本来は、「コンピューターを活用して得た純利益と、そのシステムに掛かった費用や労力を比較して算出される成果」のことを意味します。

一言で言うと、費用対効果ということですね。

つまり、ビジネスの場では、パフォーマンスを成果や性能という意味合いで用い、企業での費用対効果を「コストパフォーマンス」と言うのです。

しかし、「コスパ」という略語の語感がよいためか、ビジネス以外のいろいろな場面でも使われるようになりました。

雑誌などで多機能家電を引き合いに出して、コスパ対決で価格と機能を比較したり、洋服などでも着回しできる服をコスパアイテムなどと銘打っています。

OLや主婦の間でも「この化粧品はコスパがいいからお勧め」などと、日常会話などにも使われていますよね。

このような、ビジネス用語が日常用語に転用される例は他にもあるにはありますが、これほど一般に浸透しているものはないのではないでしょうか。

ビジネスシーンにおけるパフォーマンスの意味は能力や性能

例えば、「ペイ」とはビジネスシーンでは「賃金などの支払い」のことを言いますが、今や電子マネーでの支払いを「○○ペイ」などと言いますね。

また、容量を指すキャパシティーの略の「キャパ」という言葉も、ビジネスシーンではない日常の場面でもよく使われています。

しかし、コスパと比較すると、一般の認知度にはまだまだ差があると言えるでしょう。

また、パフォーマンスと比較すると、使われ始めたのも比較的最近です。

ところで、ビジネスシーンでは、コストパフォーマンス以外にもパフォーマンスという言葉をいろいろな場面で用います。

社員の仕事ぶりや能力をパフォーマンスと言うこともありますし、今期のパフォーマンスというように、業績を指すこともあります。

中でも、私たちが企業の顧客として一番よく目や耳にするのが、機械類の性能を表す宣伝文句ではないでしょうか。

音楽プレーヤーなどの宣伝文句には、「ハイレベルのパフォーマンスを実現」や「ハイパフォーマンスの○○を搭載」などとよく書かれていますね。

また、パソコンなどでも、CPUの処理速度や画像処理の性能について、パンフレットでパフォーマンス比較などがよくされています。

このように、ビジネスの場では、人や業績、機械に対してもパフォーマンスという言葉を用います。

そして、この場合のパフォーマンスの意味は、「能力」や「性能」を指すと言えるでしょう。

ビジネスでも一般的な意味と同じ使い方をすることも

ところで、一般的な演技や表現という意味でのパフォーマンスと言う言葉が、一部ビジネスの場でも用いられることがあります。

それは、主に宣伝の場でのことです。

クライアントに自社の製品やプランを売り込むような場合や、プレゼンを行うような場合、その行為をパフォーマンスと言うことがあります。

目的はビジネス目的ですが、一連の行為が相手に対するアピールであるため、演技などという意味合いでパフォーマンスと称されるのです。

また、日本ではあまりないことですが、例えば上司に自分を売り込むような場合も、パフォーマンスと言われます。

映画などで、上司の昇進祝いのパーティーで、部下がお祝いのスピーチをする場面などがありますね。

その時、自分もちゃっかり売り込んで、「次のCEOにはぜひ私を」などと言うのをマイクパフォーマンスと言うのです。

このように、パフォーマンスと言う言葉は、それ自体いくつかの意味を持っていますが、他の言葉との組み合わせや、使う場面によって意味が変わります。

また、元来の意味から派生した広い意味で使われることもあり、なかなか多様性を持った言葉と言えるでしょう。

投資の世界で使うパフォーマンスの意味とは

そして、実は、投資の世界でもパフォーマンスという言葉が用いられています。

投資の世界では、投資における運用成果や運用実績、または投資対象の過去の値動きのことをパフォーマンスと言うのです。

この場合は、広辞苑の①に著されている「実行、実績、成果」というのが最も近いニュアンスでしょうか。

例えば、株取引などで、投資している銘柄が日経平均株価などより収益率が上回っていることを「アウトパフォーマンス」と言います。

そして、逆に下回っている場合は「アンダーパフォーマンス」と言います。

アウトパフォーマンスであれば、当然、得られる利益も高くなるため、投資家にとってパフォーマンスは非常に重要なポイントです。

また、投資信託などでファンド会社やファンドマネージャーを選択する際においても、過去のパフォーマンスが重要視されます。

日本にも、投資家がファンド会社を選択する際の参考情報を提供するパフォーマンス評価機関が数多く存在し、分析データを提供しています。

このように、パフォーマンスという言葉は、投資ビジネスの世界においては、一般的なビジネス用語とはまた違った意味を持つものと言えるでしょう。

ビジネスか投資かなどTPOによって意味の解釈を変えることが必要

今回は、パフォーマンスという言葉に焦点を絞って、その使い方を解説してきました。

元々は英語のPerformanceのことですが、実はその和訳にも、演技や実績などという言葉と並んでカタカナでパフォーマンスと書かれています。

つまりは、すでに日本語化して、定着している言葉と言ってよいでしょう。

中でも、アーティストの歌やダンス、演技などをパフォーマンスと呼ぶのが、私たちには一番馴染みのある使い方です。

しかし、ビジネスの世界で使われる場合は、主に能力や性能を表す表現に変わります。

また、投資の世界で使われる場合は、成果や実績という意味合いになり、ニュアンスが変化します。

そして私たちは、よく聞く言葉だけに、「詳しくは知らなくてもなんとなく意味が通じる言葉」だと思っています。

例えば、「このスマホは通信のパフォーマンスがよい」と言うと、電話がつながりやすいとか、ネットの速度が速いのだなとわかるでしょう。

しかし、「あの人はパフォーマンスのよい人だ」と言うと、仕事ができる人なのだと思う人もいれば、何か得意芸があるのかと思う人もいるかもしれません。

笑い話のようですが、パフォーマンスは使う場面や意図によっても意味合いが変わってくるので、TPOによって解釈すべき言葉であると覚えておきましょう。

パフォーマンスは便利な言葉だが受け取り方や使い方に注意を

多義的で便利な言葉は、裏を返せば、相手によっては難解な言葉になることがあります。

パフォーマンスも、そういう言葉の1つかもしれません。

もし、会話などでパフォーマンスと言う言葉が出てきたら、受け取る方は、場面や発言の意図するところを考慮し、解釈する必要があるでしょう。

そして、使う方も、相手によって言葉を使い分ける必要があると言えるでしょう。