家賃と管理費・共益費の違いとは?仕訳はどうなるか?

家賃については理解していても、管理費と共益費の違いについては知らない人もいるのではないでしょうか。

そのため今回は、家賃と併せて管理費・共益費がどのようなものかについてご説明します。

また、個人事業主向けにこれらの仕訳をどのようにするのかもお伝えします。

家賃はどうやって決まるのか

家賃とは、簡単に言うと、家や部屋の借り賃のことです。

では、家賃はどうやって決まるのでしょうか?

家賃の額が決まる要因は、主に建物に関する要因と市場や環境に関する要因の2つに分かれています。

建物に関する要因は主に以下です。

・部屋の面積の広さ

・どのような構造か(鉄筋コンクリート、鉄骨、木造など)

・間取りの使いやすさ

・収納スペースの多さ

・ベランダの広さ

・階数

・築年数

・耐震基準

・24時間換気に対応しているか

・デザインの良さ

・リフォームの有無

・セキュリティの有無

・日々の管理が行き届いているか(これは主に管理費などに当たる)

・駐車場設備の有無

・日当たりの良さ

・家具、家電の有無

・インターネット環境

・ペット飼育、楽器演奏ができるのか

また、市場や環境の要因は以下です。

・景気動向の良さ

・需要と供給

・土地価格の高さ

・最寄り駅

・募集時期

・治安の良さ

・周辺施設

・学区

・騒音の有無

などとなります。

では、家賃の仕訳はどうなるのでしょうか?

個人事業主が支払う家賃の仕訳と按分

次に個人事業主向けに、家賃の仕訳と按分についてご説明していきます。

貸借対照表や損益計算書などを作成するために、勘定科目を使って仕訳を行います。

勘定科目とは、取引の内容を記録するために必要な分類項目の名称のことです。

家賃の勘定科目は地代家賃になります。

地代家賃とは、事業を経営するための事務所や店舗、社宅などの家賃や管理費、共益費、月極駐車場の使用料、その他の土地の使用料のことです。

家賃100,000円が普通預金から引き落とされた場合の仕訳は、

(借方) 地代家賃 100,000円 / (貸方) 普通預金 100,000円 / (摘要)2ヶ月分

となります。

個人事業主が自宅で仕事をしている場合、事業用の支出のみを経費として計上することができます。

これを家事按分といい、経費として計上する割合のことを、按分比率といいます。

按分比率を求める方法は二つあり、一つ目は、面積から計算する方法です。

例えば、自宅が50平方メートルで、仕事する部屋が25平方メートルであった場合は、按分比率は25÷50×100で50%となります。

二つ目は、時間から按分比率を計算する方法です。

例えば、1週間に自宅で働く時間が50時間だとすると、1週間は168時間なので、50÷168×100で30%となります。

家賃10万円で按分比率が50%、5万円を家事按分して経費に計上する仕訳は、

(借方) 地代家賃 100,000円 / (貸方) 普通預金 100,000円 / (摘要) 家賃2ヶ月分(按分比率50%)

となります。

管理費とは

アパートやマンションを借りる際、家賃以外に「管理費」が設定されていることがあります。

こちらでは、その管理費についてご説明します。

管理費とは、敷地や建物の共用部分、共同で使用する施設や設備などの維持管理に必要な費用のことです。

ちなみに、共用部分とは、分譲マンションなど区分所有建物における、専有部分に属さない建物の付属物のことです。

例えば、エントランスホール、アプローチ、通路、階段、庭、花壇、駐車場、駐輪場、ごみ置き場などのことです。

管理費の額が決まる要因は、主に二つあります。

一つ目は、部屋の床面積の広さです。

管理費については、多くの場合、その部屋の床面積の割合に応じて、金額が決められています。

例えば、床面積が20平方メートルのワンルームの管理費が2,000円だとすると、40平方メートルの2DKは4,000円などと、部屋の床面積が大きいほど、管理費の負担する割合が大きくなります。

一律に管理費が決められている場合もありますが、部屋の広さが大きく異なると、管理費の負担する割合も変わってきます。

二つ目が、入居時期です。

賃貸物件は入居する時期によって、賃料相場が大きく異なります。

1~3月のいわゆる不動産繁忙期は、引っ越しをする人が非常に多くなるため、空室もどんどん埋まっていきます。

しかし、8~10月頃には、あまり引っ越しをする人がいないため、空室が目立ちます。

そのときに、大家さんや管理会社などが空室をすぐに改善するために、募集賃料を安く見せようと、家賃と管理費をバランスを変えるため、家賃を安くして、管理費を高くしたりします。

その管理費ですが、仕訳はどのように行うのでしょうか。

個人事業主が支払う管理費の仕訳

こちらでは、管理費の仕訳についてご説明します。

まず、勘定科目は家賃と同様、地代家賃となります。

今月分の家賃が100,000円、管理費が20,000円で、それらを現金で支払った場合、その仕訳は

(借方) 地代家賃 120,000円 / (貸方) 現金 120,000円

となります。

また、今月分の家賃が100,000円で、管理費が20,000円(うち水道光熱費が2,000円含まれている)であった場合、その仕訳は、

(借方) 地代家賃 118,000円 水道光熱費 2,000円 / (貸方) 金額 120,000円

となります。

ちなみに、消費税がかかるかかからないかは、管理費の内容によって変わります。

例えば、賃貸募集で「家賃50,000円と管理費3,000円」というようになっていたら、管理費は、家賃の一部ということになるので、管理費に消費税はかかりません。

しかし、管理費が役務の提供の対価となる場合には、消費税がかかります。

共益費とは?またその仕訳はどのように行う?

管理費と似ている言葉に、共益費というものがあります。

共益費とは、管理費と同様、建物の賃料とは別に支払う費用のことです。

例えば、エレベーターやオートロックの運用など、建物の共用部分を維持・使用する時にかかる費用などです。

管理費と同じように、部屋の面積によって、額を決められるのが、一般的で、ほとんどの人達は、共益費と管理費を同じものとして考えています。

共益費は、家賃と別に設定されていることもあります。

その共益費の仕訳は、管理費の仕訳と同じものとなります。

なお、法律上の用語として共益費という言葉を使うこともあります。

これは、「同一の債務者に対するそれぞれの債権者に共通の利益のために要した費用のこと」という意味です。

例えば、ある債権者が債務者の財産を保存すれば、他の債権者の利益にもなります。

そのための費用は共益費として、他の債務者に優先して債務を弁償することができるとされます。

ただしこれは、建物の賃借人が支払わなければならない共益費とはもちろん違うので、注意が必要です。

なぜ家賃とは別に管理費・共益費が分かれているのか

家賃と管理費・共益費はそれぞれ分かれています。

おそらく、すべて一緒の方が仕訳なども分かりやすいのでは、と思った人もいるでしょう。

では一体なぜ、家賃と管理費・共益費をわざわざ分けてあるのでしょうか。

これらを分けることに実質的な意味はありません。

しかし、家賃と管理費、共益費というように分けると賃借人にとっては、ちょっとしたメリットがあります。

例えば、「家賃40,000円・管理費0円」の物件と「家賃35,000円・管理費5,000」円の物件では、払う金額は同じです。

しかし、入居時に払う敷金・礼金・仲介手数料などは、「家賃◯ヶ月」というように計算されるので、金額が前者と後者では変わります。

例えば、入居時の費用として、「家賃1ヶ月+敷金1ヶ月+礼金1ヶ月+仲介手数料1ヶ月」が請求されると、前者は160,000円、後者は140,000円と20,000円も差がでます。

一方で、単純に家賃を安く見せることができるというように考えている大家さんもいます。

仕訳の仕方を身につけ事業の発展に生かそう

家賃がどのように決まるか、また管理費・共益費の違いについてご説明しました。

併せて個人事業主向けの例を挙げながら「家賃」「管理費」「共益費」の仕訳の仕方についてもお伝えしました。

個人事業主も事業を続けるためには利益を出す必要があります。

仕訳をすることで財政状態を把握し、事業の発展に生かしましょう。