アパートの防音は壁の何が大事?

アパートの隣人の音は、気に障るものです。

アパートの壁の防音対策が大事だということはわかっていても、実際どのような対策をしたら良いのか、理解している人は少ないかもしれません。

そのためこちらでは、アパートの防音対策について、壁の構造と音の性質にもふれながらご説明します。

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アパートの壁には法律がある

アパートは建築基準法上、共同住宅に分類されます。

共同住宅の住戸間の壁は界壁と呼ばれます。

共同住宅の界壁には、建築基準法による遮音性能と防火構造の規定があり、その両方をクリアしていなければなりません。

遮音性能は、隣接する住戸からの日常の音を低減する構造が求められています。

一方、防火構造は、火災が発生したとき延焼を防ぐことによって、住人が安全に避難するための時間が確保できる構造が求められています。

この防火構造は、共同住宅の規模と構造主体によって、求められる構造が違います。

共同住宅は、その規模により、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造の構造体に、大きく分けることができます。

鉄筋コンクリート造の場合は、住戸間の壁は、鉄筋コンクリートまたはコンクリートブロックなどで、仕切られているため、ほとんどの場合、遮音性能と防火構造の基準は、これだけでクリアされているといえます。

以上のことから、鉄筋コンクリート造のアパートの界壁、つまり住戸間の壁はほとんどが特別な防音対策はなされていないといえます。

小規模のアパートに多い鉄骨造、木造は、その界壁の構築方法が多岐にわたり、一般の賃借人には理解しづらい構造規定になっています。

しかもその界壁の防音対策は、鉄筋コンクリー造に比べると極めて脆弱といえます

鉄骨造、特に木造アパートに隣人間のトラブルが多いと言われる理由が、この界壁の構造にあるといえます。

次項では、鉄骨造、木造アパートによく使われている汎用性の高い界壁の構築方法とその効果について説明します。

法律をクリアするだけでは防音対策とは言えない

一般的な鉄骨造、木造アパートの界壁には、鉄骨柱または木柱の巾約90~100ミリほどの空間があります。

その柱厚のわずかな空間に、グラスウール(ロックウールでもよいが、ほとんどの場合は、コストの安いグラスウールを使う事が多い)を充填し、その壁を挟むように、石膏ボードを張ります。

そうすることによって、法律で求められる遮音性能と防火構造の基準をクリアした界壁を構築します。

要するに、鉄骨造、木造アパートの界壁は、石膏ボード+グラスウール(ロックウール)+石膏ボードとなっていると考えてよいと思います。

石膏ボードの厚さや性能によって、一重張りと二重張りにすることがあります。

以上が、一般的に建築基準法をクリアしたアパートの界壁です。

しかし、アパートを少しでも快適に暮らす、さらには隣人とのトラブルを極力避けるためには、建築基準法をクリアしただけではまったく不十分といえます。

少なくとも、普通にアパート生活を過ごすためには、防音対策についてしっかり考えられた建築物を造っていくことが求められます。

防音対策には遮音、吸音、防振、制振の4要素が重要になります。

アパートの界壁には、特に遮音と吸音の組み合わせによる防音対策が重要です。

次項では、壁の防音対策を遮音、吸音の両面から見ていきます。

アパートの壁の遮音による防音対策

アパートの界壁で、遮音の働きをするのが石膏ボードです。

遮音性能とは、空気中を伝搬する音エネルギーを壁材で跳ね返し、壁の反対側(隣の部屋)へ音エネルギーを透過させない性能をいいます。

石膏ボードは最初に音エネルギーを受けるため、その施工は石膏ボードの合わせ目に隙間が生じないように丁寧な作業が求められます。

しかし、建築物全般に言えることですが、経年により建物に歪みが生じてきます。

特に、木造アパートはこの歪みが多く見られます。

建物が歪むと、アパートの界壁に張った石膏ボードの合わせ目に隙間が生じることがあります。

そのため、石膏ボードは二重張りで張った方がよいといえます。

石膏ボードの二重張りは、最初に張った石膏ボードの上に、間柱の間を約450ミリ程度ずらして張ります。

間柱(まばしら)とは、下地の役割を持ち、柱の間に取り付けられる補助的な小柱のことです。

そうすることによって最初に張った石膏ボードの合わせ目を塞ぎ、音エネルギーを透過させない効果が期待できます。

また、二重張りは建築物の経年による歪みにも、一枚目と二枚目の石膏ボードがそれぞれが追随することで遮音効果の維持が期待できます。

よって、一重張りより二重張りの方が隙間ができづらい分、防音対策を維持する上で有効といえます。

また、天井の梁などによる石膏ボードの切り込み部はそのままにせず、シールなどの充填で隙間を埋める工夫も求めたいものです。

とにかく遮音性能は隙間があってはその効果を期待できません。

以上のことは、さほど建設コストには響きません。

従来通りの施工の延長上にある作業です。

ただ、知識と丁寧な作業が求められるものです。

アパートの壁の吸音による防音対策

アパートの壁で、吸音の働きをするのがグラスウール(ロックウールが使用されることもある)です。

吸音とは、音がものに当たることによって音が吸収されることです。

グラスウールの吸音性能とは、音エネルギーが繊維間の隙間に入り込み、空気との摩擦が生じることによって熱エネルギーに変わり、音エネルギーが小さくなる現象をいいます。

グラスウールを充填する際もいくつかの注意点が必要です。

壁の厚さより少し厚めのグラスウールを選択するとよいでしょう。

例えば、壁厚が90ミリであれば100ミリのグラスウール、壁厚が100ミリであれば105ミリのグラスウールを選択するということです。

これで、グラスウールを挟むように張る石膏ボードとの間に隙間ができなくなります。

一方、柱間、間柱の間でも同じことがいえます。

例えば、柱と間柱の間の空間が430ミリとすると、450ミリ程度にカットしたグラスウールを挟めるように、押し込むということです。

グラスウールなどの繊維系の建材は、経年により痩せていく特性があります。

その特性を考慮して、繊維系の建材は少し大きめのものを押し込むように施工しておくと安心です。

また、グラスウール自身の自重で、グラスウール自体が、下がっていくこともあります。

横胴縁(壁に合板やボードなどを張るときにそれらを留めつけるための下地材)などの工夫で、下がりを防止する処置をしておくとさらに安心です。

グラスウールなどの吸音材も、隙間があるとその効果が期待できません。

アパートの壁の防音対策を有効に維持するためには、以上の注意点は守らなければなりません。

「遮音シート」「遮音パネル」は防音対策として有効か

アパートの壁に使用可能な遮音タイプのシートは、厚さ1ミリほどから2ミリくらいのものが多く、その材質は樹脂系、ゴム系などからできているものが多いです。

その面密度は2kg/㎡から4kg/㎡ほどで、遮音性能を上げる性質上、比較的質量の重い材料となっています。

遮音シートは、グラスウールと石膏ボードの間に下地として施工されるタイプのものが多いです。

遮音シートの遮音効果は各商品の性能および施工の状況によりますが、おおむね低周波数域で10dB程度、高周波数域で20dB程度の遮音効果が期待できるといわれています。

一方、遮音パネルは石膏ボードに遮音シートを貼ったもの、または遮音シートより少し厚めのシートを貼ったものが多いです。

どちらの方が遮音効果が大きいということは一概に言えません。

使用する石膏ボードの性能、グラスウールの性能と遮音シートなどの組み合わせ、さらに施工の丁寧さなどによって遮音性能に大きく影響を与えます。

各建材の組み合わせ、施工方法は設計段階から十分な検討をしておくことが重要になりす。

最近では、多様な遮音材が出てきており、その防音対策を費用対効果からいろいろと検討ができるようになりました。

吸音シートはアパートの壁の防音対策になるか

アパートの壁に使用可能な吸音タイプのシートは厚さは約10ミリくらいですが、その材質は樹脂系であればフェルト状に、スポンジ系べあれば凹凸状に仕上げが施されたものが多いといえます。

そのままで仕上材になるので、音響マニアなどの部屋に施工されるタイプのものが多いのですが、賃借人が自らの音が気になる場合など、防音対策としてアパートの壁に後から施工することが可能です。

テレビ、ステレオのスピーカーの近くの壁側、または音が反射する反対側の壁側に吸音シートを貼ると、防音効果が期待できます。

最近では、床用に敷くタイプの吸音、防振シート、防振マットもありますので、テレビ、ステレオなどの下に置くだけで壁への音エネルギー伝搬を軽減でき、防音効果が期待できます。

むしろ、吸音タイプのシートは床の下地などに使い、防振効果から防音対策を期待する方が効果があるといえます。

吸音タイプの防音材も多種多様な商品がありますので、アパートの経営者、設計者は適材適所に防音対策を考えられる時代となりました。

生活音くらい気兼ねなく暮らしたい

新築の場合は設計時から、前述した音の4要素(遮音、吸音、防振、制振)を十分に考慮した対策ができます。

古くなったアパートも建材が豊富になったことで、簡単に防音対策が取れる時代になりました。

賃借人は生活する上で、必ず何らかの生活音を発生させていますので、貸主は通常の生活音くらいは気兼ねしないで暮らるアパートを提供したいものです。

そのために、アパートの壁の防音対策は、十分に配慮されるべき事項です。