家を建てるためには多額の費用を必要としますが、土地代が抑えられるとしたら当然費用を抑えることができます。
家を建てるにあたって家族所有の土地を安く譲って貰えるのであれば、その土地に家を建てたいと考える人も多いでしょう。
しかし土地には地目といって土地の種類が分けられており、原則的に「宅地」となっている土地にしか家は建てられません。
田や畑のような土地に家を建てることはできるのか、ご紹介していきます。
地目が田や畑の場合、家を建てるためには農地転用が必要!
自己所有の土地であっても、自由に家を建てることができるわけではありません。
土地には「何のための土地なのか」明確に分かるように、地目という土地の種類がつけられています。
家を建てられるのは「宅地」という地目の土地で、原則的にその他の地目の土地には家を建てることができません。
「宅地」以外の土地に家を建てるためには「地目変更」という手続きが必要となります。
しかし、地目が田や畑の場合には「農地法」の適用を受けるため、地目変更が必ずしもできるというわけではありません。
農地法は国内の農業生産力を維持するために定められた法律で、農地を農地として守ることを目的としています。
基本的には田や畑といった農地は用途が耕作と決まっていて、農家や農業参入者以外は買えないことになっています。
そのため地目が田や畑といった農地に家を建てるためには、「農地転用」という手続きをとる必要があります。
この農地転用という手続きには農業委員会の許可が必要となりますが、田や畑に家を建てることは不可能ではないのです。
自己所有の土地を宅地に転用する場合は「4条許可」、宅地に転用し権利移動を行う場合は「5条許可」が必要となります。
場所によっては田や畑には家を建てることができない!?
地目が田や畑といった農地は転用すれば家を建てることができますが、農地転用は必ずしも許可されるわけではありません。
そもそも「市街化区域」にある農地は、4条許可や5条許可は必要ありません。
これは市街化区域が市街化を図るべき区域だからです。
そのため市街化区域内の農地に限っては、許可不要となり届け出のみで家を建てることができます。
一方で市街化調整区域は市街化を抑制する地域のため、原則的に家を建てることができません。
さらに農地は「農振法」による区域分けがされていて、農用地区域と農用地区域外に分けられます。
いわゆる「青地」「白地」と呼ばれる区域わけですが、青地である農用地区域では農地転用や開発行為が制限され家を建てることはほぼ不可能です。
農振除外の申請を行えば家を建てることができますが、手続きも複雑で時間もかなりかかることに注意しましょう。
このように田や畑などの農地が、「市街化区域内なのか否か」「農用地区域内の農地なのか否か」によって農地転用ができるかどうかが決まるため、必ずしも農地転用ができるとは限らないのです。
田や畑に家を建てるためには時間も手間もかかる!
宅地を購入し家を建てるのに比べて、地目が田や畑などの農地に家を建てるためには時間がかかるということを認識しておかなければなりません。
そもそも田や畑は「農地転用」という手続きが必要となりますが、許可が出るのは受付締切日から約40日後のことです。
受付締め切り日については毎月5日や20日と決めている自治体もあれば、毎月10~15日など受付期間を定めている自治体もあります。
いずれにせよこの期日を過ぎてしまえば、翌月の受付締切日を待たなければならず、許可はさらにこれより40日後となってしまいます。
しかも農用地区域内の農地に家を建てる場合には農振除外の申請が必要となりますが、こちらの受付は1年に1回だけという自治体がほとんどです。
そのため期間を逃せば1年以上待たなければいけないこととなります。
また、宅地であれば建築基準法や都市計画法などの確認のみで家を建てることができますが、田や畑に家を建てる場合には「そもそも家を建てることが可能か」調べる必要がでてきます。
農業委員会に相談へ行ったり、書類を提出したり、宅地ではする必要のない手間がかかるのは間違いありません。
田や畑に家を建てるための手順は?
地目が田や畑となっている土地に家を建てるためには「農地転用」という申請が必要となりますが、どのような手順で行えば良いのでしょうか?
当然、まずその土地に家を建てることができるのか調べる必要があります。
地目が田や畑となっている場合には農地法が関係してきますから、農業委員会へ相談に行くと良いでしょう。
農地転用が可能となれば、土地の境界確定をする必要があります。
農地転用のために求められる最低敷地面積や最高敷地面積が決まっている場合があり、求められる要件を満たしていない場合には分筆の登記などが必要となる場合もあります。
境界の確定が済んだら、農地法4条もしくは5条の許可申請提出です。
土地が市街化区域外で、農業従事者でない人が家を建てる場合の多くが開発許可も必要となりますので開発行為許可申請も同時に提出しておくと良いでしょう。
許可がおりれば開発の敷地工事にとりかかり、完了検査を受けます。
続いて建築確認申請を提出し、確認済証を取得して建物の建築工事へと進みます。
完了検査が済んだ時点で、建物表題登記と地目の変更登記を行うという手順になります。
地目が田や畑だった土地の強度?
地目が田や畑の土地に家を建てることができると分かったとしても、多くの人は強度を心配するでしょう。
農地は農作物を育てるための有機物を含んでいるため、土地自体が柔らかくなっています。
しかし農地に家を建てる場合に限らず、家を建てても問題がないのか、必ず地盤調査を行います。
強度が低ければ地盤改良工事により、強度を上げて家を建てるため田や畑であったかどうかはあまり関係ありません。
農地の場合には、土を入れ替えて強度を上げる方法が勧められています。
表面の土地を数m掘り起こし、違う土を入れるのです。
さらに田の場合には地面より下がっているため、埋め立てる必要もでてきます。
こうした地盤改良も、まずは地盤調査をしてみないと詳細は分かりません。
地盤調査は約1週間ほどかかり、かかる費用は一般的に15~30万程度だと言われています。
地目が田や畑の場合、家を建てる以外の活用方法は?
地目が田や畑となっている場合で、家を建てることができないと判明したらどうすれば良いのでしょうか?
自分達で農作物を耕作していければ特に問題はありませんが、耕作する人がいないとなればどうにか活用したいと考えることでしょう。
はっきり言って、田や畑を放置しておくことにメリットはありません。
農地は固定資産税が安く設定されていますが、免除されているわけではないため少額でも支払う必要がでてきます。
近年では耕作放棄地の固定資産税を2倍程度まで引き上げる方針も打ち出されているため、固定資産税が上がってしまうかもしれません。
さらに放置しておくことで、農地としての質も悪くなってしまうため将来的に使用することができなくなる可能性もあります。
しかし、家を建てることができないとなると田や畑は田や畑のまま、使用するしかなくなります。
農地バンクや農地中間管理機構などを利用し、借りたい人や買いたい人を見つけると良いでしょう。
また市民農園として活用するのも一つの方法です。
市民に農地を貸し出したり、体験イベントを開催したりする市民農園ですが、農林水産省が管轄する各農政局へ問い合わせてみてください。
田や畑に家を建てることは不可能ではない!
地目が田や畑となっている土地に家を建てることは、不可能ではありません。
しかし時間と手間がかかることに注意して、早めにとりかかるようにしましょう。
また田や畑の場合、必ずしも農地転用が許可されるとは限りません。
転用許可がおりなければ家を建てることはできませんので、違う活用方法を考えることになります。
田や畑を放置しておくことにメリットはありませんので、農地バンクや農政局に相談にいってみてください。