二段ベットやダブルベット、ピアノや水槽、本棚など、家に置きたい家財はたくさんあると思います。
しかし、鉄骨やRCと違い、木造住宅では床の耐荷重が気になる人もいるでしょう。
そこで今回は、どのぐらいまで置いても大丈夫か、実例を交えながらご紹介します。
木造住宅の床はどれだけの耐荷重があるか
木造住宅に限らず、床の耐荷重は建築基準法には定義されていません。
ただ、「何キロを乗せたと想定して設計しなさい」という「積載荷重」として定義されています。
これは、安全に乗せるための荷重ですので、積載荷重=耐荷重と見ても差し支えありません。
木造住宅の床は、1800N/㎡と設定されています(建築基準法施行令第85条)。
計算すると、おおよそ㎡あたり180kgです。
最初から重量物を乗せることが分かっている場合は、実状に応じて補強をすることになっています。
例えば、8畳間ですと、面積は13.3㎡前後です。
計算すると、中央部に2.3tの重さを乗せても耐えられるように設計することになっています。
普通自動車1台分の重さに耐えられるように設計されているわけです。
つまり、成人男性(75kg)が30人ぐらい乗っても平気なように作られています。
8畳間に30人ですと、電車混雑率180%ぐらいに相当します。
それなりに詰め込んでいますね。
もちろん、2.3t以上乗せたら床が抜けるというわけではなく、あくまで安全に乗るように設計されています。
8畳間で2.3t、6畳間で1.7t、4畳半で1.3t程度の耐荷重となります。
床の耐荷重を超えた時に生じる不具合とは
木造住宅で、床の耐荷重を超えた場合はどうなるのでしょうか?
耐荷重を超えても、いきなり壊れることはありません。
ただ、家自体に支障が出ます。
よくあるパターンとして、建具の不具合や壁の亀裂が挙げられます。
一つの部屋に大きな重さがかかりますので、それを支える梁(はり)がまずゆがみます。
梁がゆがむと、それを支えている柱に傾きが出ます。
また、支える梁にとりついている桁(けた)が引っ張られる形で傾いたりゆがんだりします。
それらのゆがみが影響し、建具の開閉に支障が出ます。
ひどい場合は、壁の亀裂として現れます。
また、木の性質として「クリープ現象」があります。
これは、梁などに荷重を加えると時間とともに変形するという現象です。
屋根や2階の重さ、梁の自重でも変形します。
古い家の建て付けが悪くなり開閉しづらくなるのは、この現象が大きく影響しています。
木造住宅の2階にピアノを設置しても床は耐えられるか
2018年の調査で、「女の子に習わせたい習い事」の1位にピアノがラインクインしています。
女の子を持つ親御さんにとって、ピアノという習い事は憧れなのかもしれません。
実際、ピアノ教室に通うとなると自宅にもピアノが必要になります。
しかし、そうなると、「ピアノを置いても床は抜けないか」という疑問が生じます。
ですが、結論から言うと、ピアノは軽いので新築木造住宅の床は抜けません。
床には十分な耐荷重があるからです。
ただし、キャスターなど足が小さいタイプは当て板をして床がへこまないようにする必要があります。
具体的な重さはどれくらいでしょうか。
国内主要メーカーの場合、アップライトピアノで200~300kg、グランドピアノで250~450kg前後となっています。
重いグランドピアノとイスと演奏者(成人男性)の体重を考慮しても600kg程度でしょう。
設置するのに4畳半では狭すぎるので、少なくとも6畳間は必要ですね。
6畳間の耐荷重は1.7tなので、1/3程度で収まってしまう計算です。
ピアノを設置しても、問題ない重さです。
ただし、音は床を伝って下階や他の部屋に響くので、その点は注意が必要です。
木造住宅の2階に水槽を設置しても床は耐えられるか
次は、男性に多い趣味の一つ、熱帯魚の水槽を例に考えてみます。
水は単純に重いですから、木造住宅の2階に設置した場合、床の耐荷重の心配があります。
しかし、これも大丈夫です。
実際に計算してみましょう。
まず、水槽の大きさを決めます。
ここは男性のロマンである、180cmの水槽にしましょう。
国内メーカーの水槽ですと、おおよそ180cm×60cm×60cmが一般的です。
これだけで容積640Lです。
これに専用架台やら過装置などの重さを加えると、おおよそ700kgになります。
家具と自分の重さ(+120kgくらい)を加えて計820kgくらいです。
鑑賞するのは狭い方が心行くまで楽しめるので、4畳半とします。
4畳半の耐荷重は1.3tなので、十分耐えられる重さです。
ただし、水槽の設置面積は小さいためそのままでは床に影響が出ます。
そのため、厚めの板を敷き込み、重さを均等にかけられるようにする配慮が必要です。
ですがそれよりも、万が一水槽から水が漏れた場合を考えると2階設置には注意が必要です。
木造住宅の2階に本棚を設置しても床は耐えられるか
その手の蒐集家(しゅうしゅうか)にとって、「書籍は命にも代えがたいもの」と聞きます。
しかし、本は数が増えるとかなり重いですよね。
引っ越しを経験された方なら、書籍の入ったダンボールの重さに腰を痛めないか心配になったこともあるでしょう。
それだけ、本は重さがあります。
法令は最低限の基準を定めているだけなので蒐集家の方、本を大量に所有されている方は床補強の検討をオススメします。
木造住宅の床が、具体的にどのぐらいの耐荷重になるか検討します。
図書館の開架書庫を想像してください。
天井までいっぱいの棚を作り、収納したと考えます。
A5ソフトカバー本(300g/冊)をメインに収納すると考え、幅90cm、奥行26cmの棚に6段積むことができます。
これでおおよそ1書架6段180冊収納できます。
こうすると、並べ方によりますが6畳間に約2800冊収納できます。
しかし、その重さは、本だけで約840kgになります。
本棚自身の重量も計算すると1t近くあると考えられますが、6畳間にこれだけ乗せても耐えられます。
しかし、蔵書を増やしたり椅子や机を置くことを考慮するとやはり補強が必要になるでしょう。
木造住宅以外の床の耐荷重
木造住宅以外の床の耐荷重についてご説明します。
まずは、学校です。
実は学校の教室の積載荷重は2通りあり、2300N/㎡(建築基準法)と2900N/㎡(文部科学省構造設計指針)です。
大体は、文部科学省の数値を採用しています。
普通教室で生徒40人入る広さに設計してありますので、十分余裕をみた積載荷重となっています。
学校等は避難所にも指定されていることが多く、そのあたりも考慮して余裕を持った基準となっています。
次に、図書館はどうでしょうか。
こちらも学校の教室と同じく2通りありますが、大体は文部科学省構造設計指針を基準としており、木造住宅の4倍くらいの強度に設定されています。
あまりなじみのない倉庫は、フォークリフトを走行させたい場合は割り増しする場合など、実情に応じて割り増しすることが多いです。
木造住宅の床の耐荷重は意外と大きい
木造住宅の2階に置く比較的重いものには、ピアノ、水槽、本棚などがありますが、木造住宅であっても床の耐荷重は大きく設計されています。
しかし、建築基準法で決まっている荷重は最低限の数値なので、重いものを乗せる場合は補強をすることが重要です。
そのため、重いものを木造住宅の2階に置く場合には、一度設計士などに相談したほうがよいでしょう。