木造住宅を建てるときは、設計図を見ながら施工会社と密な打ち合せをします。
その段階になり、日頃はまったく気にならない部分でもいろいろと疑問が湧いてくるものです。
たとえば外壁の厚さもそのうちの1つです。
外壁は厚いほど断熱の効果が高くなるというイメージがありますが、どのくらいの厚さが理想なのでしょうか?
今回は、木造住宅の外壁の厚さに焦点を当てて、ご紹介いたします。
木造住宅の外壁の厚さは建築工法である程度の推測が可能
木造住宅の外壁には必ず断熱材が使われています。
その断熱材は、壁の中のどの部分で使われているのかご存じでしょうか?
木造住宅の壁の中には、一定の感覚で間柱と呼ばれる柱が入っており、断熱材はその柱と柱の間に入ります。
つまり、使用される柱の太さにより外壁の厚さが変わり、それに伴い断熱材の量も増え、結果的に断熱性能が高い木造住宅になるのです。
では木造住宅の柱のサイズはどのような基準で決まるのでしょう?
1つは建築工法です。
建築工法にはいくつかの種類が存在し、在来工法と呼ばれる木造軸組工法と、2×4工法と呼ばれる枠組壁工法が代表的な木造工法です。
その他、最近では木造ラーメン工法と呼ばれる工法もよく見かけるようになりました。
さらに、2×4工法がアレンジされた、2×6工法というのも存在します。
これらの種類により、基本的な柱のサイズというものが決まり、ある程度の外壁のサイズを計算することが可能です。
では、木造住宅で工法ごとの壁の厚さと、その特徴などを詳しく見ていきましょう。
木造住宅における在来工法の外壁の厚さは使う柱によって違う
在来工法とは、木造住宅の建築工法の1つである木造軸組工法の別称となります。
なぜ、在来工法と呼ばれるかというと、その名の通り、日本で古くから伝承されている、在来の建築工法のためです。
柱と梁に筋交いで補強を施して建築することが特徴です。
2×4工法に比べて間取りの自由度が高いため、大掛かりなリフォームにも対応が可能な工法といえます。
その反面、2×4工法よりも耐震強度に弱いと言われる場合があります。
しかし、これに関しては現代の建築では重要な箇所にはさまざまな補強がなされているので、心配は無用と考えて良いでしょう。
使用される柱も複数のサイズが存在するため、壁の厚さは一概に「○mm」ということはできません。
具体的なサイズを見ていく前に、まず、外壁の構造を簡単に説明します。
なお、これらは在来工法に限ったことではなく、他の木造住宅でも基本的には同じと考えてかまいません。
・外壁材
モルタルやサイディングなど、いくつか種類があり、厚さも若干の違いが出てきます。
モルタルは防火構造で15mm、準耐火構造で20mmとなります。
一方、サイディング自体は、コーティングや柄などにより12mm~16mmとなります。
最近の新築ではサイディング外壁が一般的ですが、中古住宅では未だにモルタル外壁の家も多いのが現状です。
・通気層
柱に打ち付けた合板(ベニヤ板)と外壁材の間に、胴縁と呼ばれる建材を取り付けます。
これにより外壁の内部に通気層となる空間ができあがり、湿気を溜めない構造となります。
胴縁もいくつかのサイズがありますが、一般的には厚さ15mmの胴縁が使われています。
・石膏ボード
室内に使用される壁板です。
現代のほとんどの木造住宅では壁板には石膏ボードが使用されています。
この石膏ボードに壁紙を貼ったり、壁材を塗ったりして室内の壁が完成します。
石膏ボードにもいくつか種類がありますが、多く採用されている厚さは12.5mmです。
また、在来工法の外壁の場合、柱は四方が3.5寸である105mmと4寸である120mmが一般的サイズとなります。
そのうち、105mmの方が使用頻度は高い傾向があります。
上記を元に外壁の厚さを計算します。
尚、外壁の厚さ20mm、通気層15mm、石膏ボード12.5mm、柱105mmで計算します。
外壁20mm+通気層15mm+石膏ボード12.5mm+柱105mm=152.5mm
これに、防水シート、防湿シート、壁紙などが追加されるため、さらに数ミリが追加されます。
よって、105mmの柱を持つ在来工法の外壁は、160mm程度です。
2×4工法はどの木造住宅でも外壁の厚さはほぼ同じサイズ
枠組壁工法である2×4工法は、最もポピュラーな木造住宅の建築工法です。
在来工法に比べて施工が簡単ということもあり、建築期間も短く済ませられます。
そのため、国内のハウスメーカーで2×4工法を採用していないところはほぼありません。
2×4工法は在来工法のように「柱」という概念がなく、壁が柱の役割を果たすので、壁は大変に重要な存在ということをよく理解する必要があるのです。
ところで、なぜ「2×4」と命名されているのでよう?
それは、2inch×4inchの寸法の角材という意味から来ています。
2inch=50.8mm、4inch=101.6mmです。
しかし実際のツーバイフォーの寸法は、38mm×89mmの寸法となります。
なぜこのようになっているのかというと、伐採したばかりの木材は水分を含んでいるため、いずれは乾燥して縮んでしまいます。
よって、乾燥し切る前に家を建てると、建築後に部材が縮んでしまい大変危険です。
そのため、乾燥を考慮したサイズである38mm×89mmで規格化し、乾燥し切った木材をカットして使用しています。
2×4工法の場合、2×4材の幅89mmが、そのまま柱の幅となり、外壁の厚さに影響します。
なお、外壁材、通気層、石膏ボードの各サイズに関しては、前項のとおりです。
外壁20mm+通気層15mm+石膏ボード12.5mm+柱89mm=136.5mm
同じく、防水シート、防湿シート、壁紙などが追加されますので、2×4工法の外壁は140mm前後の寸法となります。
高断熱な木造住宅となる2×6工法の外壁の厚さはさらに厚くできる
木造住宅の中には2×6工法という建築工法も存在します。
その名の通り、2×4材の代わりに2×6材を使用している建築工法です。
2×4材とのサイズの違いは以下の通りとなります。
・2×4材→38mm×89mm
・2×6材→38mm×140mm
ご覧の通り、幅が2×4材の約1.5倍大きいサイズになります。
この幅に準ずる形で外壁や床の厚さも変わります。
そして断熱材もより多く入れられるため、結果的に建物全体の断熱性能をあげられます。
ここが、2×6工法の最大のメリットです。
では、2×6工法の具体的な外壁のサイズを、同じように計算します。
外壁材、通気層、石膏ボードの各サイズに関しては、前項のとおりです。
外壁材20mm+通気層15mm+石膏ボード12.5mm+柱140mm=187.5mm
同じく、防水シート、防湿シート、壁紙などが追加されますので、2×6工法の外壁は190mmくらいの寸法となります。
近年注目の木造ラーメン工法の外壁の厚さは比較的自由度が高い
木造ラーメン工法は、大手ハウスメーカーでも採用していることもあり、よく耳にする木造住宅の建築工法の1つとなりました。
「ラーメン」とは、素人が聞くと真っ先に「拉麺」のことを思い浮かべますが、ドイツ語で「枠」(Rahmen)を意味する言葉です。
建築・設計の分野での「ラーメン工法(構造)」とは、柱と梁で組んだ骨組みの結合部分を剛接合するものです。
もともと鉄筋コンクリート構造などで用いられており、木造でも実現した工法です。
建築コストに関しては、柱と梁が太くなるということも影響し、比較的高額です。
しかし、木造で柱のない広い空間の室内というのは魅力が高く、近年、人気のある建築工法の1つとなっています。
外壁に関しては、柱と梁で作られた広いスペースに取り付けるため、かなり自由度の高い施工が可能となります。
たとえば、一面をすべて窓にすることなども可能です。
よって、木造ラーメン工法の外壁の厚さには、基準や制限などはありません。
外壁はもちろん、全体的にいろいろとアレンジできるところが魅力の建築工法といえます。
木造住宅とほぼ同じ?鉄骨軸組工法の外壁の厚さも知っておこう
最後に、軽量鉄骨造の工法である鉄骨軸組工法の外壁の厚さを見てみましょう。
なぜ鉄骨軸組工法のお話をするかというと、在来工法をアレンジした建築工法だからです。
極端な言い方になりますが、鉄骨軸組工法は木造軸組工法の「軸」となる柱、梁、そして筋交いをすべて金属製に置き換えた建築工法といえます。
そのため、個人宅を建築する際、木造住宅と並んで検討される方も実際に多いです。
鉄骨というとかなり頑丈なイメージがありますが、軽量鉄骨は、厚さ3mm程度の鋼材を加工して作られます。
さまざまなサイズがあり、室内の間仕切り壁などは65mm程度で済ませる場合も珍しくありません。
鉄骨軸組工法で使われる柱でもっとも多く採用されているサイズは80mm程度です。
また、前述の通り、鉄骨軸組工法は在来工法とほぼ同じ工法となるため、外壁の内部構造も同じと考えて良いでしょう。
外壁の厚さを計算するためには、在来工法や2×4工法で使った計算式が利用できます。
外壁材を始めとする各部のサイズも、前述したものと同じです。
外壁材20mm+通気層15mm+石膏ボード12.5mm+柱80mm=127.5mm
柱となる軽量鉄骨のサイズにより変わりますが、概ね130mm程度です。
木造住宅の外壁の厚さを理解して快適なマイホームを建てよう!
今回は木造住宅の外壁の厚さに関して、工法ごとにご紹介しました。
最後に、ここで紹介した全工法の外壁のサイズをあらためてまとめます。
○在来工法→160mm程度(柱のサイズにより変わる)
○2×4工法→140mm程度
○2×6工法→190mm程度
○木造ラーメン工法→特に基準や制限無し
○鉄骨軸組工法→130mm程度
これらを参考にし、ぜひ、快適で一生後悔することのないマイホームを建設してください!