不安定な雇用や景気の低迷によって、家賃未払い問題は深刻な社会問題となっています。
家賃の未払いは経済的に困窮している場合が挙げられますが、中には意図的に支払いに応じない借主も存在します。
家賃の未払いトラブルは、解決に時間がかかるほど経営にも大きく影響するため、できる限り早急な解決が望まれます。
この記事では、家賃の未払いトラブルの解決方法について、裁判まで含めてお話していきます。
社会的背景が絡む家賃の未払いトラブル
賃貸における月々の支払いは、借主が賃貸を借りている以上必ず支払わなければならない家賃で、不動産の経営に直結します。
世界金融危機となったリーマンショック以降、好景気とは言えない状態が続いています。
経済的に困窮している借主は、失業者、シングルマザー、高齢者、身体障害者などケースは様々で、それに加えて単身世帯やひとり親世帯などの社会的背景も大きく関わっています。
特に、高齢化が進む現在では、賃貸物件に住む単身高齢者の割合も増加しており、年金受給だけでは生活できない高齢者が家賃の未払いトラブルになるケースも少なくありません。
また、冒頭で述べたように、中には意図的に家賃を支払わない借主も存在し、貸主にとってはそれも含めて頭を悩ませるところです。
日本賃貸住宅管理協会によれば、約56軒に1軒は2か月以上も家賃を滞納していることが分かっています。
滞納者の未払い理由はいかにしろ、このような社会的背景が伴う滞納は、貸主にとっては極めて深刻な問題と言え、早急な解決が見込めない場合は、最終的に裁判で解決をする必要にも迫られます。
家賃の未払いトラブルには「家賃保証会社」の増加も関係
家賃の未払いトラブルやそれに関わる裁判が増加している理由には、「家賃保証会社」も大きく関わっています。
「家賃保証会社」とは、賃貸契約に必要な連帯保証人を代行するサービス会社で、仮に借主に家賃の未払いが生じた際には、貸主へ立て替え払いを行います。
この家賃保証会社の増加によって、不動産業界では競り合いが激しくなり、その結果入居審査が甘くなる傾向にあります。
そのため、本人の支払い能力を問わない不動産会社も出てきており、例えば手取りが15万円であっても、家賃10万円のマンションを借りることができるという不可解な事態も起きています。
しかし、これはあくまでも「代位弁済」のビジネスであるため、立て替え額が一定を超えると、借主に対して厳しい取り立てが行われます。
このような家賃保証会社は、多くの人にとって賃貸を借りられる機会を広げてくれるため、ニーズが高まっていますが、家賃の未払いが増加する一因にもなっています。
滞納額が経営に響く前に!家賃の未払いトラブルは早急な解決を
家賃の未払いが長期的に続く場合、最終的には裁判を経て解決を望むことができます。
しかしながら、裁判は手間や時間がかかるため、躊躇してしまいがちです。
とはいえ、裁判を行うことを躊躇し、そのまま家賃の未払いを見過ごしてしまえば、いずれは滞納額が経営に大きく響くことになるでしょう。
家賃の未払いトラブルを、勝手に誰かが解決してくれることもありません。
そのため、数か月に及んで電話や督促状などで催促をしているのであれば、裁判による法的措置をとりましょう。
家賃の未払いにおける問題は、どちらに非があるのかが明白なため、裁判においても争点は明確です。
したがって、比較的時間を要することなく解決が望めます。
裁判での判決後は、賃貸の明け渡しや家賃の支払いに対して強制執行の手続きをすることができます。
裁判は最終的な手段!まずは催促による交渉
裁判では家賃の未払いを解決することができますが、それはあくまでも最終手段として考えることが重要です。
法的措置に進む前には、以下のような段階を踏んでいく必要があります。
・電話による催促
・督促状、催告書の通知
長期に渡る家賃の未払いは、契約違反による債務不履行で賃貸借契約の解除をすることができるので、催告書の通知によって契約解除を請求してください。
賃貸借契約を解除したにも関わらず、物件の明け渡しに応じない場合には、裁判による法的措置にステップを踏むことができます。
ただし、契約の解除は、以下の要件が満たされている場合に認められやすくなります。
・未払いが3か月以上続いている
・滞納者に対して電話や督促状による催促を何度も行っている
つまり、1回もしくは1か月の未払いでは、賃貸借契約の解除は認められないということになります。
これは賃貸借契約における「信頼関係破壊の理論」によって適用されています。
「信頼関係破壊の理論」とは、賃貸借契約のような信頼関係を基礎とする継続的契約においては、その信頼関係が破壊されたことが認められる場合に限り、契約を解除することができる法理論です。
この法理論は、裁判においても焦点となる部分なので、あらかじめ踏まえておくことが大切です。
裁判にはどのぐらいの費用がかかる?強制執行には大きなお金が
家賃の未払いを裁判で解決するとなれば、気になってくるのがそれにかかる費用です。
まず、裁判を行うためには以下の費用がかかります。
・手数料(印紙代):数千円~数万円(訴額により変動)
・内容証明郵便:1通あたり1500~3000円
・切手代:およそ6000円の郵券
・裁判での必要資料:登記事項証明書、固定資産評価証明書はいずれも一通400~500円
以上のように、裁判自体には大きな費用を必要としません。
ただし、弁護士や司法書士に依頼する場合はそれなりに費用が発生するので、費用についてはよく相談しておくようにしましょう。
また、物件の明け渡しについて強制執行の申立をする場合は、裁判所への予納金として65,000円程度を支払う必要があります。
さらに、滞納者の家財や私物を部屋から全て撤去する際は、それに関わる人件費や廃棄費用なども発生するため、強制執行にはワンルームタイプで30万程度はかかると考えておきましょう。
「少額訴訟」による裁判制度も!未払い家賃が少額な場合
家賃の未払いを裁判で解決するには、「少額訴訟」という民事訴訟制度を利用することもできます。
滞納者に悩んでいる貸主の中には、少額訴訟で解決をしようとしている方も多いのではないでしょうか。
「少額訴訟」とは、被告(滞納者)に対して60万円以下の請求を訴える場合に限り、利用することができる裁判制度です。
通常の裁判とは異なり、基本的には1回の期日で判決が下されるため、短期間での問題解決が望めます。
また、訴訟手続きも簡単なため、弁護士に依頼する必要がありません。
トラブル解決に時間をかけられず、コストを抑えたい貸主にとっては非常に魅力的な裁判と言えます。
判決後、仮に滞納者が支払いに応じない場合は、少額訴訟債権執行の申立をすることで、滞納者の貯金や給料を強制的に差し押さえることができます。
少額訴訟債権執行にかかる費用は、10,000円以内と安く抑えることができますが、差し押さえ対象にお金がない場合は、債権の回収が望めない場合があるので注意が必要です。
家賃の未払いは速やかな解決を
家賃の未払いが数か月に及び、催促にも応じない場合は、裁判によって問題解決を行ってください。
費用がかかるからと躊躇していれば、滞納額があっという間に経営に響いてしまいます。
家賃滞納における裁判の場合、非はどちらにあるのか明らかなので、尻込みをする必要はありません。
今回の記事を参考に、未払いトラブルを解決しましょう。