地目が田となっている土地を売却したい!売買での注意点は?

現在の日本では、農家の高齢化により休耕地や耕作放棄地が増えてきています。

「後継がいない」「相続したが出来ない」など様々な理由により田や畑を売却したいと考えている人もいるのではないでしょうか。

ですが、地目が田や畑の土地には農地法の適用があり、いくつもの厳しい制限があります。

田や畑を売買する時の注意点についてまとめましたので、売却する時の参考にしてみてください。

地目が田となっている土地は売買できない?

土地には必ず地目という土地の用途区分があり、23種類に分類されています。

基本的に土地の売買は自由に行うことができます。

ですが、この中の田や畑は農地と呼ばれ農地法の適用があるために自由に売買ができないようになっています。

農地法が制定されたのは昭和27年のことで、「農業従事者が自ら農地を取得することを促進し、権利の保護や生産量の増進、優良な農地の確保」を目的としています。

そのため食料自給率が低く、国土面積が狭い日本では優良な農地を確保するため、田や畑の売買を制限しているのです。

地目が田や畑となっている場合、地目が宅地などに変更できる土地と田や畑のままでしか利用できない土地の2種類に分かれます。

田や畑のままでしか利用できない土地は農家や農業参入者以外は購入できません。

また地目が変更できる農地であっても、農業委員会の許可が必要になるため様々な手続きが必要となってきます。

売却ができないわけではありませんが、他の地目に比べて田や畑の売買は難しいと言えるでしょう。

田を売却する時の相場は?

土地を売却する際には相場を知っておくことが大事です。

価格が高すぎれば買主が見つからないですし、低くすぎると早くは売れても損をしてしまうからです。

地目が田や畑となっている土地は、安く交渉されることも多いので注意しましょう。

平成30年3月30日に全国農業会議所から発表された平成29年の田畑売買価格の調査結果によると、10アール(約1反)あたりの平均価格は

【純農業地域】
田…120.7万円
畑…89.1万円

【都市的農業地域】
田…336.4万円
畑…332.2万円

となっています。

ですがこれは全国平均によるもので、地域的格差が大きいため一概には言えません。

北海道や東北、九州は安く取引され、東海や近畿、四国は高く取引される傾向にあるため、場所によっては数倍から数十倍の差がでてくるようです。

地目が田となっている土地の売買方法は?

地目が田や畑となっている土地を売買するためには、どのようにして売却するのかを考えなくてはなりません。

「農地をそのまま農地として売買する」のか「農地を宅地や雑種地などに転用して売買する」のかによって、手続きや売買価格が変わってくるからです。

地目が田や畑の土地をそのままの状態で売買する場合には、買主は農家や農業参入者のみに限られます。

ですが、宅地や雑種地に転用して売買すれば買主を制限されることはありません。

もちろん、後者の方が売却しやすくなりますが、前者に比べると費用も時間もかかります。

それに全ての田や畑が転用できるわけではありません。

田や畑の転用には「立地基準」と「一般基準」があります。

特に農地の区分で許可が決まる立地基準をクリアしなければ田や畑から宅地や雑種地に地目を変更することはできないのです。

立地基準の内容をご紹介します。

農用地区域内農地:不許可(原則)
甲種農地:不許可(原則)
第1種農地:不許可(原則)
第2種農地:条件次第では許可
第3種農地:許可(原則)

立地基準の内容をみて分かる通り、転用が許可されるのは一部の土地であるということです。

この立地基準に加えて、転用の申請目的を判断する一般基準もクリアして、初めてて田や畑の地目変更が許可されるのです。

田や畑を売買する前に、地目変更ができる土地なのかどうか確認する必要があります。

どんな流れで田を売買するの?

地目が宅地や雑種地などの土地とは違い、田や畑の売買には農業委員会の許可が必要となります。

そのため売買の流れも大きく違いがでてくるので、一連の流れをご紹介します。

①農業委員会の許可を条件とした売買契約を締結します

田や畑のまま売買する場合も地目を変更して売買する場合も、農業委員会の許可がおりなければ成立しません。

許可なしに所有権移転した時は無効となり、3年以下の懲役、300万円以下(法人の場合1億以下)の罰金となります。

そのため許可がおりなければ、白紙解除となるような特約を付け加えておきます。

②農業委員会に許可申請を提出します

田や畑のまま売買する時は3条許可、地目変更する転用の場合は5条許可を農業委員会に提出します。

③所有権移転請求権の仮登記をします

農業委員会の許可がおりるまで、買主の所有権移転の保全のために仮登記をします。

これは絶対条件ではありません。

④許可後に売買代金の支払いと所有権移転登記をします

許可がおりると農業委員会より許可指令書が交付されるので、本登記をします。

この許可指令書かなければ登記は受け付けてもらえません。

このような一連の流れは1ヶ月ほどの期間を要するので、注意しておきましょう。

田を売買する時の必要書類は?

地目が田や畑となっている土地を売買する場合、様々な書類が必要となってきます。

そしてこの必要書類は「田や畑のまま売買する」か「地目を変更し売買する」かどうかによっても変わってきます。

田や畑のまま売買する場合の必要書類は

・土地の登記簿謄本
・譲受人の証明書類(法人の定款や組合名簿、株主名簿、単独申請の要件を満たす証明書類など)
・位置図、案内図、公図
・住民票
・作付計画書
・農家証明書
・契約書の写し

などです。

田や畑の地目を変更する転用の場合は

・土地の登記簿謄本
・位置図、案内図、公図
・建設や施設などの図書
・資力及び信用があることの証明書類
・関係者の同意書
・土地改良区意見書
・住民票
・契約書の写し
・平面図や立面図
・縦断図面
・資金計画書
・理由書
・除外証明書
・見積もり書

などの書類が必要になってきます。

どちらの場合も農業委員会に申し出れば一覧表を貰うことができますが、必要な書類が多い上に専門的なものも多いので知識が豊富でないと大変です。

そのため手続きについては行政書士や不動産業者に委任する人が多くなっています。

売買する時にかかる税金は地目によって変わる!?

土地を売買する時には税金がかかります。

売主には譲渡所得税、買主には不動産取得税というものです。

実はこの税金、地目によって金額が大きく変わってきます。

売却する側が払う譲渡所得ですが、田や畑を農地のまま売却する場合は売買価格から購入金額と経費を差し引いた金額にかかります。

この場合、農業委員会の斡旋などがある時や所有期間による控除が受けられるようになっています。

ですが、地目を変更し売買すると売買価格は関係がなくなってしまい

不動産評価額×1.4%

という計算式になります。

田や畑などの農地は税金額の優遇が大きいので、転用後の不動産評価額は「田や畑の評価額」よりも「宅地、雑種地の評価額」の方が高くなります。

地域によってはかなりの価格差が出てきます。

買主側が支払う不動産取得税も不動産評価額が関係してくるため、地目によって金額が大きく変わってくると言えるでしょう。

農地を売買する前に確認を!

田や畑などの農地を売買する場合には、農地のまま売買をする方法と地目変更をする転用をして売買する方法の2通りがあります。

どちらも農業委員会の許可が必要なため、注意が必要です。

田や畑だけに限らず、地目が山林や原野でも現況が農地の時には農業委員会の許可が必要になる場合もあります。

田や畑を売買する前にまずは農業委員会に確認してみましょう。

一連の手続きは不動産業者でも請け負ってもらえることもありますので、こちらも合わせて確認してみてください。