アパートの退去費用はどのくらい?10年以上住んだ場合は?

住んでいたアパートから引っ越しをするとき、部屋の修繕費としてかかってくるのが退去費用です。

居住期間が長くなるほど、部屋のあちこちが傷つくことも多くなり、その分退去費用が高くなります。

そのため、10年以上住んでいた場合、退去費用がどのくらいかかるのか気がかりですよね。

この記事では、10年以上住んでいたアパートについて、その修繕に関わる退去費用についてピックアップしていきます。

10年以上住んだアパートから引っ越し!忘れがちな退去費用とは?

アパートから引っ越しをする際、新しい住居探しやそれに関わる手続きに忙しくなるため、なかなか退去費用について考えることができないという方も多いのではないでしょうか。

いざアパートを退去する際に言われて初めて気付くなど、つい忘れてしまいがちな費用です。

しかし、10年以上に渡って長年住んでいた場合、部屋全体が傷ついていることも多いため、経年劣化が考慮されたとしても、退去費用が想像以上に高くなるケースも少なくありません。

そのため、アパートを退去する前には、あらかじめ退去費用についてよく知っておくことが大切です。

退去費用は、借主によって故意、または過失によって生じた傷・汚れなどを修繕する際にかかる費用を指し、「原状回復費用」とも呼ばれています。

この原状回復にかかる退去費用は、退去の際の立会いをもとに見積もりが行われ、一般的に賃貸契約時に預けた敷金から差し引かれるようになっています。

残った敷金は借主に返還されますが、原状回復に大きな費用がかかった場合は、敷金にプラスした費用が請求されることもあります。

退去費用の範囲は故意・過失による損傷が原則!10年以上は経年の考慮も

では、アパートの退去費用に関わる原状回復には、基本的にどのような傷や汚れが対象となるのでしょうか。

国土交通省が設けるガイドラインによれば、借主の故意・過失による通常の使用範囲を超えた傷、汚れに対し、借主が負担するものとして規定しています。

つまり、普通に居住する上では回避できない経年劣化・自然消耗においては、借主の負担とはならず、原則的には貸主の負担対象となっているのです。

それに加え、退去費用は経過年数による減価償却も考慮されるため、入居年数が長ければ長いほど借主の負担割合は減少していきます。

これらのことを踏まえると、例えば10年以上住んでいる場合、故意・過失による損傷が少なければ、退去費用はある程度抑えることができると考えられます。

ただし、原状回復に関して、貸主と借主の間で合意する契約がある場合は、その限りではありません。

契約時のハウスクリーニング特約には注意!退去費用が高額になることも

10年以上住んだアパートの退去費用には、原則的には借主の故意・過失による損傷、汚れ部分が含まれ、入居年数よる考慮もあることが分かりました。

しかし、結局のところ、原状回復の判断はそれぞれの貸主によって委ねられます。

特に注意したいのは、前述したような賃貸と貸主の間で合意する特別な契約がある場合です。

これは、いわゆる「特約」というもので、主契約に付随するオプションを意味します。

この特約は、賃貸契約時に交わす賃貸借契約書に記載されており、例えば「部屋のハウスクリーニング費用は借主負担とする」という特約は、多くの賃貸契約で見られるものです。

ハウスクリーニングは次の入居者のために行う部屋の清掃でもあり、たとえどんなにきれいに部屋を使っていても、ほとんどの賃貸ではハウスクリーニングが行われます。

つまり本来、ハウスクリーニング費用は貸主の負担になるものと言えます。

これについては、過去に裁判で争われた判例を見てみても「貸主の負担」と下されており、ハウスクリーニング費用は借主が負担するものではないことが明らかとなっています。

しかしながら、特約は契約している以上、借主はそれを履行しなければなりません。

場合によっては、退去費用には想像以上に大きな金額が必要となるケースもあります。

あまりに暴利的な特約の場合、正当な特約として認められないケースもありますが、いずれにしても賃貸の契約する際は、あらかじめ特約の記載に注意をする必要があります。

アパートの退去費用に関わる修繕費!貸主と借主の負担範囲は?

では、アパートの退去費用に関わる修繕は、貸主と借主で具体的にどのような負担範囲になっているのでしょうか。

国土交通省のガイドラインをもとに、修繕の負担範囲をそれぞれ見ていきましょう。

まずは、経年劣化・自然消耗の対象となる貸主の負担範囲です。

・家具の設置跡や床のへこみ
・畳、フローリングの変色、色焼け
・網戸、畳の張り替え
・冷蔵庫などによる色焼け
・画鋲やピンの穴
・地震などの自然災害による破損、損傷
・付属設備の故障

以上のような経年劣化は、一般的にハウスクリーニングによって修繕・修復されます。

ただし、家具の移動や引っ越しによって生じた傷などは、借主の過失として判断されるので注意してください。
続いて、故意・過失の対象となる借主の負担範囲を見ていきましょう。

・飲みこぼしによるカーペットや畳のシミ
・カビ、サビ、油汚れ
・落書き
・家具移動時や引っ越しで生じた傷、へこみ
・ペットによる床や壁などの傷、臭い

全ての壁紙を張り替える必要がある場合、原状回復の費用はそれなりに高額になると考えたほうが良いでしょう。

10年以上住んだ場合の退去費用は?ハウスクリーニングの相場について

これまでに、アパートの退去費用に関わる基本的な知識や、具体的な負担範囲についてご説明してきました。

では、それらを踏まえると、10年以上住んだ場合の退去費用はどのようになってくるのでしょうか。

退去費用の見積もりは、一般的にハウスクリーニング費用を想定したもので考え、「ハウスクリーニング費用+故意・過失分の修繕費用」で求めることができます。

ただし、「故意・過失分の修繕費用」はケースバイケースなためそれぞれで異なり、相場を求めることは非常に難しいと言えます。

したがって、ここではハウスクリーニング費用の相場のみをまとめていきます。

・1DK:20,000~40,000円
・1~2LDK:30,000~70.000円
・3~4LDK:50,000~110,000円

上記はあくまでも大まかな相場として参考にしてください。

ただし、10年以上住んでいた場合、経年が大きく考慮されることが多いため、ある程度は退去費用を抑えることが期待できます。

ハウスクリーニング費用を含めた退去費用があまりにも高額な場合は、内容を確認した上で、貸主とよく話し合うことが大切です。

民法改正によってアパートの原状回復・敷金のあり方が明確に

これまでご説明したアパートに関する退去費用や原状回復については、法的な規則が設けられていないために、そのあり方が複雑化している印象が強く感じられます。

そのため、原則的には貸主の負担対象となる部分も、特約によって借主負担となるケースが一般的になっています。

しかし、2017年に可決された民法改正により、2020年4月の施行において賃貸に関する原状回復や敷金のルールが明文化させることになりました。

この民法改正で、国土交通省のガイドラインの内容が法的に規定される形となり、貸主は借主に対して不当な退去費用を請求できなくなることが期待できます。

つまり、将来的に部屋を借りる側からすれば、10年以上住んでいようがいまいが、担保として預けている敷金の満額返還が望めるかもしれないというわけです。

賃貸における民法の見直しは、およそ120年ぶりになるということですから、2020年の施行でどのように変わっていくのか注目したいところですね。

特約の記載はしっかりチェック

アパートの退去費用は、原則的には借主の故意・過失による傷、汚れの原状回復にのみ生じ、部屋のハウスクリーニングや経年劣化は貸主負担になります。

10年以上住んでいた場合、入居年数の経年も大きく考慮されることから、退去費用は比較的安く済むことが期待できます。

しかし、特約にハウスクリーニング費用が記載されている賃貸物件も多く、想像以上に退去費用が高くなるケースもあるので、あらかじめよく理解しておくことが大切です。