個人事業主ですと、自宅兼事業所であることも多いでしょう。
その場合、自宅の固定資産税が確定申告時に必要経費として落とせるかどうかも気になるところですよね。
さらに、自宅兼事務所の名義が自分ではなく配偶者になっていることもあります。
自分以外の名義でも固定資産税が必要経費として認められるかどうかを、ここで解説していきます。
必要経費って何?
まずはじめに、必要経費についてお話ししていきましょう。
必要経費とは、税務上「経費」として処理されるものを指します。
つまり、事業(利益を出すための)に関して支払った費用のことを、必要経費といいます。
思い浮かべやすいものを挙げるとすれば、まずは消耗品費です。
文房具などの事務用品や、10万円以下のオフィス機器などが該当する費用を指します。
最近は少なくなったかもしれませんが、会議を行うときには資料が用意されていることがありますね。
この資料も経費に該当するため、印刷するプリンターやコピー機をはじめ、コピー用紙、インクなども全て経費となるのです。
また、旅費交通費や交際費などの経費を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
旅費交通費であれば、出張先までの交通費等が該当しますね。
そして交際費は、取引先の方などと仕事の話をしながら食事をする際に計上できる経費です。
このように、会社の利益を出すために行われた費用は、必要経費として会社で落とすことができるのです。
これは個人事業主でも同様です。
さらに固定資産税などの税金も、必要経費として認められることがあります。
その場合、名義が自分ではなくても可能なのかが気になりますが、まずはどのような税金が経費として認められるのかをみていきます。
固定資産税も!必要経費として認められる租税①
ここでは、個人事業主の税金で必要経費として認められるものについてご説明していきます。
●個人事業税
課税対象の事業主が、事務所などが所在する各都道府県に収める税金をいいます。
これは、事業を行うにあたって公共サービスを受けることへの対価として支払われるので、必要経費と認められます。
●固定資産税
土地や家屋といった固定資産を持つ人が、所在する市町村または東京都に支払う税金を指します。
事業所として使用している自分名義の土地や建物などの固定資産税は、もちろん必要経費として認められます。
●都市計画税
固定資産税同様、土地や家屋の所有者が支払わなくてはいけない税金です。
都市計画法に定められた市街化区域に該当しなければ、支払う必要のない場合もあります。
●自動車税
自動車を所有する人が納める税金です。
事業で使用する場合にのみ、経費として計上可能です。
固定資産税も!必要経費として認められる租税②
●印紙税
印紙は事業では必要と認められているので、必要経費にすることが可能です。
ちなみに印字税を経費として計上できるのは、印紙を使用した時点となります。
未使用のものがあれば、資産科目で計上しなくてはなりません。
●不動産取得税
土地や家屋等を取得時に、一度だけかかる税金です。
●登録免許税
これは、商号の登記などの商業登記、事業用の不動産を取得した時の登記などでかかる税金です。
●利子税
所得税などを延納してしまった時にかかる税金を、利子税といいます。
事業所得や不動産所得、山林所得に関わる利子税は、必要経費として認められます。
注意して頂きたいのが、延納ではなく延滞の際にかかる延滞税は必要経費とはならないことです。
言葉が似ていて間違えやすいので、注意しましょう。
以上ご説明してきたように、必要経費として認められる租税は多くあります。
これらを経費として計上できれば、節税にもつながりますね。
この記事では固定資産税に焦点をおいているわけですが、もし自分名義であっても自宅兼事業所としている場合、固定資産税は必要経費として計上できるのでしょうか。
次の項で解説していきます。
自分名義でも自宅兼事業所にしている場合は経費になる?
必要経費として認められている固定資産税ですが、もし自分名義の建物であっても自宅兼事行所としていたら、必要経費として計上可能なのでしょうか。
事業所だけの場合は全額必要経費となりますが、自宅と事業所の両方で使用している場合は、事業所として使用している割合分を経費として計上が可能です。
例えば、建物を半分半分で自宅と事業所を使っているとします。
その場合は、支払う固定資産税も折半となるため、半額が必要経費として認められます。
もし、自宅と事業所の使用する割合が7:3であれば、固定資産税は3割分が必要経費となるのです。
通常、固定資産税を納付は、4、7、12、翌2月の4回に分割して支払います。
翌2月分が多いのですが、確定申告の時点で納期が来ていなくて未払いとなっている分の固定資産税があることもあります。
そのような場合でも、納税の通知があった日以降でしたら経費として計上することができますので、安心して計上してください。
名義は配偶者!固定資産税は必要経費になる?
それではもし名義が配偶者の自宅兼事業所の場合は、固定資産税が必要経費となるのかをみていきましょう。
ここでの使用する自宅と事業所の割合は8:2とします。
名義が配偶者の場合であっても、自分名義同様、事業所として使っている分が必要経費となります。
そのため、ここでは2割分の固定資産税が必要経費として計上が可能です。
また、住宅ローンを組んでいるのであれば、住宅ローンの利息分も必要経費として認められます。
こちらも2割分が経費として計上できます。
注意して頂きたいのが、配偶者に事業所として使用するための家賃や使用料などを支払っている場合、これらの費用は必要経費として認められないことです。
また、住宅ローンの利息分は必要経費と認められますが、ローン自体は経費にならないということも頭に入れておかねばなりません。
必要経費となる部分やならない部分を把握して、確定申告で申請するようにしましょう。
自宅を会社名義にした場合の固定資産税はどうなる?
自分名義、もしくは配偶者が名義になっている場合の、自宅兼事業所の固定資産税が必要経費として認められるのかをお話ししてきました。
最後に、自宅兼事業所の名義を会社にした場合についてもお話しします。
会社名義にした場合、自宅の購入費用や建築費用が会社負担となります。
建物にかかる減価償却費等の経費も、会社負担となりますから自分の財布から1円も出さなくて済みます。
それでは、固定資産税についてはどうなのでしょう。
固定資産税においても、全額会社の経費とすることが可能です。
ただし、そのためには、事業主は会社に対して一定の家賃を支払わなくてはなりません。
このときの家賃は自分で勝手に決めるのではなく、所得税基本通達に定められたとおりに算出します。
建物の構造の種類でも違いが出ますが、大体は実際の家賃相場の1割~5割程度になりますから、比較的低めの家賃で済みますよ。
きちんと家賃を支払わないと、この家賃相当額が役員報酬となり、事業主の所得税の対象となってしまいますので、会社と事業主の間で社宅使用契約を結んでおくと安心です。
しかし会社名義にすると、住宅ローンが組めなかったり、確定申告時の住宅ローン控除を受けれないというデメリットの部分もあります。
仮にローンを組んだ場合、借入期間は15年程度、借入利率は約2%となるので、毎月の返済などの支払額が高額になってしまいます。
自宅兼事務所を会社名義で購入したのに、毎月の支払額が高すぎて破産などになってしまったら元も子もありませんから、熟慮したうえで会社名義にするかどうか検討してください。
事業所として使っていれば自分名義でなくても固定資産税は経費になる!
固定資産税は、自宅兼事業所であっても、事業所として使っている分は必要経費として認められます。
さらに、事業主名義でなく、配偶者や会社が名義になっていても計上が可能です。
また、固定資産税だけでなく、都市計画税や自動車税などの租税も必要経費になります。
少しでも節税につなげられるように、確定申告時にはこれらの租税をしっかり確認をしたうえで申請するようにしましょう。