世界の指標だったLIBORの金利推移!21年に新指標になるか?

LIBORは、金利を決定する際の基準であり、その金利推移に世界が注目しています。

しかし、2012年にその不正操作が発覚し、LIBORの信用が失われていることも事実です。

2021年にはLIBORが廃止され、新指標が確立される見込みとなっています。

そんなLIBORについて詳しくみていきましょう。

金利推移はLIBORが基準となっていた!そもそも「金利」とは?

お金を貸すときも借りるときも、その金利は双方にとって重要な取り決めの一つですよね。

特に返済する側としては、金利によって返済額が大きく変わってきますので、ローンを組む際には重視するポイントと言ってもよいでしょう。

「金利」は大体どんなものかイメージ出来ると思いますが、具体的な定義の確認をしましょう。

「金利」とは、借りたお金を返す際に支払う利息を決める「割合」のことです。

金利は割合を指しているので「%」で表され、「利率」とほぼ同じ意味で使われています。

一方、「利息」と「利子」はほぼ同じ意味で使われ、金利によって計算された金額自体のことを指します。

これらの用語はややこしいですが、明確な違いがあることを覚えておきましょう。

そんな金利ですが、お金を貸し出す銀行や会社が好き勝手に設定しているわけではありません。

法律などに則り、適正の範囲内で金利が設定されています。

また、一般の人がお金を借りたり、ローンを組む際に金利が設定されているように、銀行間の貸し借りの際にも金利があります。

その基準となるのが「LIBOR(ライボー)」です。

このLIBORの金利推移によって、さまざまな利息が決定されているので重要な指標です。

LIBORとはどんなものか、詳しくみていきます。

LIBORとはどんな指標か?金利推移は市民生活にも影響

「LIBOR」は「London Interbank Offered Rate」の略で、ロンドン金融市場における銀行間取引金利のことを指します。

これは、ロンドン金融市場で資金の貸し手(offered)が示す金利です。

イギリス銀行協会がいくつかの有力銀行からの報告を集計して、毎日11時に発表しています。

ロンドンはアジアと北米の中間地点でもあり、ドル・円・ユーロなどさまざまな通貨の取引が行われ、世界中の金融機関がロンドン金融市場に参加しています。

ここで決められている金利がいわば世界の基準となり、LIBORの金利推移によって世界の金利も変動していきます。

例えば、銀行が貸出金利を見直していく「変動利率」で融資を受ける場合、「LIBOR+3パーセント」というような設定をすることが少なくありません。

このように、LIBORの金利推移を基準に、各銀行の変動利率が決定されていきます。

LIBOR自体は銀行間の金利を表しているものですが、LIBORの推移によって一般の方が組んでいるローンの金利も変動します。

そのため、LIBORが上昇すればローンの金利も上昇しますので、LIBORの金利推移は市民生活にも関係しているのです。

LIBORの金利推移は銀行間の信用度を表している

LIBORは銀行間同士の金利であるので、その金利推移は銀行間同士の信用度を表す指標でもあります。

LIBORが上昇すれば、銀行間の融資の利率が高くなったということになります。

LIBORの上昇から、銀行間がお互いを信用をしておらず、何か不安材料があるのではないかということが読み取れるのです。

また、世界的な大企業や政府の巨大プロジェクトなどへの融資の利率も、LIBORを基準に決定されていることもあります。

このことから、LIBORは銀行の信用度だけでなく、企業やプロジェクトの信用度を表す基準としても使われます。

先ほどの例で出したように、「LIBOR+3パーセント」というような形で利率が決定されます。

この、LIBORにどれくらいプラスされるのか、マイナスされるのかというところで借り手の信用度を図ります。

信用度が低い借り手だと、金利は高くなり、「LIBOR+5パーセント」などという高い金利が設定されます。

反対に、銀行と同じくらいの信用度があれば「LIBORフラット」、超優良と判断されれば「LIBOR-1パーセント」という場合もあるのです。

このように、LIBORは銀行間の信用度を表す指標、借り手の信用度を表す指標として使われているのです。

LIBORの金利推移は上昇傾向

LIBORの金利推移の動向として、過去に急騰したのは2008年のリーマンショックのときです。

リーマンショックと言えば、2008年9月にアメリカの投資銀行である「リーマンブラザーズ」が経営破綻し、世界中に連鎖した金融危機のことですね。

世界中にインパクトを与え、一般の方でもリーマンショックの影響を受けた方は少なくないはずです。

リーマンショックによりLIBORは急騰しました。

各銀行が保身のために、他行への融資をストップしたことが原因となっています。

これにより、「不安の尺度」を連想させるネガティブなイメージが出来たほか、銀行同士が示し合わせてLIBORを不正操作するという事態まで起きてしまったのです。

リーマンショック以降はしばらく落ち着いていたLIBORですが、ここのところ上昇傾向にあります。

LIBORの3ヶ月物チャートは、2018年3月の時点で2.28パーセントとなっています。

これは2008年の年末以来の高水準です。

しかし、LIBORの金利推移が上昇しているからといって、単に銀行の経営が不振なのではありません。

リーマンショック以降、銀行は融資に対して慎重になりましたので、銀行の経営が傾くような無謀な動きはしていません。

ここのところの高水準の原因は、2017年に成立したアメリカの税制改革法案が関係しているようです。

LIBORが上昇しているとはいえ、株式市場などの相場を悲観し過ぎなくても大丈夫な様相です。

LIBORは不正操作されていた

その金利推移が世界中に影響を与えるLIBORですが、2012年に不正操作されていたことが発覚しました。

イギリスの大手銀行であるバークレイズが、LIBORを長年に渡り不正操作を繰り返し、360億円もの罰金支払い命令をうけたことがきっかけです。

トレーダーたちが自分の利益を上げるために、LIBORの操作をしてほしいとバークレイズに頼み、バークレイズのLIBOR担当者はそれに応じていたということです。

では、LIBORはどのようなシステムで決定されているのでしょうか。

LIBORは、実際に貸出す際の金利ではなく、アンケートによる申告制でその金利を聞き取り調査しています。

いくつかのメガバンクからアンケート方式で聞き出した金利にうち、一番高いものと一番低いものを除いたものの平均値を出しているのです。

不正操作のポイントは、実際の金利ではなく、架空の金利を報告しているという点です。

これによりバークレイズは投資家からの要望に応え、LIBORの金利を実際に金利とはかけ離れた数字を出し、不正操作していました。

また、バークレイズのみならず、銀行同士が示し合わせてLIBORを操作しているということも明るみに出ました。

これにより、LIBORの信用が失われることとなりました。

LIBORに代わる新指標へ

LIBORの信用が懸念されていることから、LIBORに代わる新指標が発表されることとなりました。

2021年までは現行の制度が使われる予定ですが、その後は徐々にLIBORは廃止される見通しです。

ドル建てに関しては、アメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関であるFRB(The Federal Reserve Board)が、SOFR(Secured Overnight Financing Rate)を策定します。

また、ポンド建てについては、イギリスのBOE(Bank of England)がSONIA(Sterling Overnight Index Average)を新指標とする予定です。

これらの新指標への移行は、金融業界におけるとても大きな改革の一つと言われています。

その規模が大きいだけに、LIBORからSOFRやSONIAに一気に転換していくとは考えにくく、しばらくの間はLIBORへの注視も必要でしょう。

しかし、LIBORが廃止され新指標が世界の基準となり、その金利推移が注目される日もそう遠くはありませんね。

LIBORは金利の世界基準だった

LIBORは銀行間の金利の平均値であり、金利の基準となる指標でした。

しかし、リーマンショックの影響や不正操作によりその信用がなくなっています。

今後は新指標が始まり、LIBORは廃止されていく予定です。

金利推移が私たちの生活にも影響されることもありますので、今後も注目していきたいですね。