個人事業主が、毎年避けて通れないのが確定申告です。
確定申告は、毎年2月16日から3月15日の間が提出期間となっており、前年の所得と所得税額を計算して申請しなければなりません。
個人事業主には、確定申告の方法が2種類あります。
青色申告と白色申告です。
特典の多い青色申告をぜひおすすめしますが、今回はなぜ青色申告をおすすめするのかをご説明します。
毎年やってくる確定申告!個人事業主は2種類ある
毎年2月になると、「確定申告をしましょう」というテレビコマーシャルが流れます。
2月16日から3月15日まで確定申告の申請が始まると、いよいよ今年度が終わるという気持ちになりますね。
ところで、個人事業主が行う確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。
何が違うのか、このふたつの違いについてご説明します。
「青色申告」
青色申告は、複式簿記による帳簿で正確な記帳を行えば、所得計算などでさまざまな特典が受けられる制度です。
不動産所得、事業所得、山林所得のいずれかが対象となります。
1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得金額を正しく計算し申請するためには、収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を帳簿に記録して、関連する書類を保存しておかなければなりません。
帳簿への記帳は、税金の計算を行うだけでなく、経営の合理化や効率化の考察にも役立つため、推奨されています。
青色申告には節税効果があり、そのほかにもいくつかの特典があります。
申請のための書類は多くなりますが、多くの特典があるため、結果的に節税効果の方が大きいといえます。
「白色申告」
個人事業主となり何も申請しない場合は、白色申告となります。
以前ですと、白色申告は節税効果がない代わりに申請が楽というイメージがありましたが、平成26年から記帳義務および記録保存義務が課せられています。
白色申告でも、帳簿を付けて書類を保存しなければならなくなりました。
しかし、簡易な記帳で良いため、青色申告よりも簡単であるようです。
青色申告の特典による節税効果はバツグン!
青色申告の特典はいくつかありますが、代表的なものをご紹介します。
・青色申告特別控除
個人事業や不動産事業を営んでいる場合、青色申告をして複式簿記により記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告に添付して申請すれば、最高65万円を差し引くことができます。
・青色事業専従者給与
青色申告をしている場合、事業主と生計を同一にしている配偶者や15歳以上の親族がその事業に専従しているのであれば、その給与を必要経費に算入することができます。
この特典を受けるためには、「青色事業専従者給与に関する届出書」と所轄税務署に提出する必要があります。
・純損失の繰越控除と繰戻し還付
青色申告では、事業によって生じた純損失の金額を、翌年以降3年間繰り越すことができます。
毎年黒字になれば良いのですが、赤字が出る年もありますよね。
もし、300万円の赤字が出た年があったとします。
その赤字300万円を、翌年以降3年間繰越ができることになります。
翌年、黒字100万円だったとしても、前年の赤字300万円を繰越して相殺し、所得税は0円になります。
翌々年、再び黒字100万円が出ても繰越、相殺し所得税は0円になります。
さらに次の年も、黒字100万円であれば繰越、相殺して所得税は0円です。
このように、所得税を減額することができます。
また、反対に繰戻しもできます。
前年は黒字でしたが、今年が赤字だったとします。
もし、前年も青色申告をしているのであれば、今年の損失額を前年分の所得金額に繰り戻すことができます。
つまり、手続きによって前年の納税額を上限にして、所得税の還付が受けられるのです。
繰戻しができるのは、1年間です。
このように青色申告の節税効果はいろいろありますので、面倒かもしれませんが金銭的なメリットは大きいといえます。
青色申告は面倒?毎年の記帳は会計ソフトがおすすめ
青色申告の特典についてお話ししましたが、青色申告の面倒な部分もお話ししておきます。
まず、青色申告を適用してもらうためには、事前の承認申請が必要であることです。
例えば、次の確定申告で青色申告にしたいと思っても、すぐに適用することができない可能性があります。
青色申告の申請は、その年の3月15日までに行わなければなりません。
つまり、平成30年分の確定申告を青色申告にしたいと思うのであれば、平成30年の3月15日までに申請しなければなりません。
この期間を既に過ぎているのであれば、平成30年分は青色申告できないことになります。
また、もう一つの面倒な点として、帳簿などの書類を保存しておかなければならないという点も挙げられます。
書類の管理が苦手な人は、大変かもしれません。
また、最も面倒に感じるポイントは、複式簿記での記帳でしょう。
ある程度簿記の知識が必要になりますし、毎年記帳しなければならないため、簿記の知識がない人は難しいと感じるでしょう。
そこで、税理士に依頼するという人もいるようですが、手間やコストがかかり、それが面倒と感じます。
しかし近年では、会計ソフトや会計アプリが発達し、上記の点で面倒なポイントは少なくなっています。
会計ソフトがあれば、貸借対照表や複式簿記の帳簿はほとんど自動作成されます。
また、平成26年の法改正で、白色申告であったとしても帳簿の提出が必要になったため、どちらにしろ帳簿を付けなければなりません。
それであれば、いろいろな特典のある青色申告がおすすめであることはいうまでもありません。
青色申告の手続き!一度申請すれば毎年提出しなくてもOK
それでは、青色申告を始めるための手続きについてご説明します。
青色申告には、事前の承認申請が必要です。
何も申請しなければ、いくら帳簿などを完璧に用意していても自動的に白色申告とされてしまいます。
前項でもお話ししましたが、確定申告をする年の3月15日までに申請しなければなりません。
つまり、実際に確定申告する1年前が提出期限ということです。
確定申告をする直前に青色申告にしようと思ってもできませんのでご注意ください。
手続きの方法は、所轄の税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出します。
青色申告は、きちんと期限までに手続きした人のみが特典を受けられる、と考えておいてください。
手続きの期限には十分に注意する必要があります。
そして、青色申告の申請書類は一度提出すれば、毎年提出しなくても大丈夫です。
その次からは継続して青色申告をすることができます。
新規開業の際の青色申告の申請期限
個人事業を開業するのであれば、同時に青色申告も申請しておくと良いでしょう。
開業の際、税務署に「個人事業の開業届出書」を提出する必要があります。
これは、青色申告でも白色申告でも同じです。
その際に一緒に「所得税の青色申告承認申請書」を提出すると良いですよ。
提出の期限ですが、新規事業の場合、いつ事業を開始したのかによって少し違いがあります。
ちょうど良い区切りで事業を始められれば良いのですが、そうもいかないことがありますよね。
1月15日以前に開業したのであれば、3月15日までに申請書を提出します。
1月16日以降に開業した場合、業務を開始した日から2ヶ月以内に申請書を提出します。
白色申告から青色申告に切り替える場合は、3月15日までに申請書を提出しなければならないことはお話ししましたね。
また、相続で事業を継承した場合の提出期限は特例があります。
・相続を開始した日が1月1日から8月31日まで⇒相続を開始した日から4ヶ月以内
・相続を開始した日が9月1日から10月31日まで⇒その年の12月31日まで
・相続を開始した日が11月1日から12月31日まで⇒翌年の2月15日まで
確定申告は毎年のことですが、手続きは自己責任です。
青色申告の特典を受けるためには、自分で確定申告について勉強しておくことが大切です。
申請期限が守れなかったらペナルティ
青色申告にすると、多くの特典を受けることができ、それによって節税効果も得られることをご説明してきました。
しかし、青色申告を申請しておきながら3月15日の提出期限までに確定申告書を提出できなかった場合、ペナルティが課せられます。
そのペナルティは以下のようなものです。
・無申告加算税
納付するべき所得税につき50万円までは15%、それを超える部分については20%を追加で払うことになります。
しかも、この加算税は事業の経費にすることができません。
・延滞税
納付するべき所得税に対して、最大で年利14.6%の延滞税が課されます。
この延滞税も事業の経費にすることはできません。
・青色申告特別控除額の減額
青色申告特別控除の65万円は、期限内にきちんと申告をすることによる特典です。
この期限を過ぎてしまうと、控除額が10万円に減額されます。
65万円が10万円になるのですから、影響は小さくありません。
特に注意する必要があります。
毎年必ずやってくる確定申告で賢く節税するためには、きちんと期限を守ることが最も大切です。
きちんと期限までに申請した人だけが特典を受けられるのが青色申告です。
忘れずに、毎年の手続きを行いましょう。
面倒な青色申告も年々簡単に!挑戦して節税してみよう
青色申告は面倒というイメージが強く、敬遠していた人もいるかと思います。
しかし、節税効果を計算してみると思ったよりも大きな金額になりますから、今まで青色申告を申請しなかったことを後悔することなるかもしれませんよ。
現在では、さまざまな会計アプリが開発されており、青色申告のハードルは下がっています。
ぜひ、次の年の節税のために、青色申告に挑戦してみませんか。