2011年以降、ハンガリーが通貨発行権を奪回しました。
ですが、この「通貨発行権」とは、一体何なのでしょうか?
何だか難しい話のような気がしますが、これを知ると世界経済が少し見えてきます。
今回は、通貨発行権やハンガリーがそれを取り返した理由などについて学んでいきましょう。
通貨発行権とは?
「通貨発行権」といきなり言われても、多くの人にはその言葉自体、あまり馴染みがないですよね。
今回はまず、この「通貨発行権」についてお話ししていきます。
「通貨発行権」というのは、「自分の国(領土内)で、自国の通貨を無限に発行できる権利」のことです。
自国の通貨を自国で発行できる権利を持つのは当たり前のような気がしますが、実は、当たり前のことではありません。
2018年現在、世界の国の中で政府が通貨発行権を持っている国は少なく、アイスランドやシンガポール、そして2011年以降にその権利を取り戻したハンガリー以外は、通貨発行権を持っていないのです。
驚くような事実ですが、実は日本でも、通貨発行権は国ではなく独立した中央銀行(日銀)が持っています。
確かに、日本で通貨を発行できるのは、日銀だけというイメージがありますよね。
そして、日銀は、政府に頼まれて通貨を発行することで、利息を払ってもらい多くの利益を得ています。
国が通貨発行権を持っていないのはなぜ?
では、多くの国が通貨発行権を持てないのはなぜなのでしょうか。
どんな国でも、自国を運営して維持していくためには、どうしても資金(通貨)が必要です。
そのため、本来ならば、国が通貨発行権を持つのが理想です。
しかし、国が通貨発行権を持つには、様々なことをしっかり管理する能力が求められます。
なぜなら、いくらでも自国の通貨を発行することができる一方で、その調整が難しいからです。
もし、自国に流通させる通貨の調整が上手くできなければ、インフレになったりデフレになったりして、自国の経済は大きく混乱してしまいます。
そしてそれは、世界の経済状況にも影響するでしょう。
しかし、これは国が通貨発行権を持たない理由の1つでしかありません。
世界の通貨をコントロールしたい組織の思惑も関係しています。
そのキーワードとなるのが、「中央銀行制度」です。
ハンガリー政府が通貨発行権を取り返す以前は、ハンガリーでもこの制度が使われていました。
通貨発行権を持っていない国はどうやって国を運営している?
通貨発行権を持っていない多くの国は、「中央銀行制度」を利用しています。
この制度は、通貨発行権を国(政府)ではなく、中央銀行(日本の場合は日銀)に持たせるものです。
これは、先ほどお伝えしたように「自国の通貨を、政府以外の組織にお願いして発行してもらう」ことです。
しかし、それでは日本で通貨を発行するたびに「日銀からお金を借りている」ということになります。
よく、「日本は借金大国」と言われますが、借金が発生する原因及び借金が減らない背景には、この制度を使って国を運営・維持しているからなのですね。
もちろん、そういった状況なのは日本だけではありません。
国(政府)が通貨発行権を持っていない場合、その国では「中央銀行制度」を利用するしかないので、通貨を発行するたびに借金が増え続けるというシステムにから抜け出せません。
そしてこれが、ハンガリー政府が通貨発行権を中央銀行から取り返した理由でもあるのです。
具体的には、次の章で見ていきましょう。
ハンガリーが通貨発行権を奪回した理由
では、いよいよ、ハンガリーが通貨発行権を中央銀行から取り返した理由を見ていきます。
中央銀行制度を使って通貨を発行していると、その発行先である自国の銀行に利息を支払わなくてはなりません。
そうなると、自国の運営・維持に必要な通貨を発行する(してもらう)度に、少しずつ借金が増えていきます。
その借金が増えすぎて返せなくなれば、国はどうなるでしょうか。
間違いなく、経済破綻してしまいます。
しかし、日本も含めると、「その可能性のある国は160ヶ国にものぼる」と言う専門家もいます。
しかし、ハンガリーが通貨発行権を奪回したのは、それに危機感を抱いたことだけが理由ではありません。
ハンガリーは、「中央銀行制度」そのものに疑問を抱き、そこから抜け出すことを選んだのです。
通貨を発行するだけで利益を得ることができますが、それが国の経済を圧迫します。
国の運営・維持も危うく、せっかく発行した通貨を国民に回すこともできません。
それで国と言えるでしょうか。
ハンガリーは、それに「ノー」と言ったのです。
通貨発行権を取り戻したハンガリーの経済状況は?
では、通貨発行権を取り戻したハンガリーの経済状況は今、どうなっているのでしょうか。
世界で書かれているハンガリーに関する記事では、あまり良い評価はされていません。
しかし、それは実際の状況とは違います。
投資家などの間でも、「ハンガリー国内の経済状況は良くなる」と予想する人が多いようです。
借金のループから逃れられたということになるので、政府が発行した通貨は、借金や利息の返済ではなく、国民のために使うことができるようになります。
例えば、国が新しい事業を起こして国民を雇うことができ、雇用があれば国民の生活も治安も安定します。
また、重い病気などで生活に困っている国民の支援にも、これまでよりもお金が回りますよね。
こうしたことを踏まえると、「ハンガリーは豊かになっている」と考えて良いのではないでしょうか。
しかし、そういった良い情報は、あまり出てきません。
「ハンガリーは通貨発行権を取り戻したことで経済が改善した」というイメージが世界の国に広まると、「通貨発行権を取り戻したい」と考える国が増えるからです。
そうると、通貨発行権があることで通貨を発行するたびに利息を得ている中央銀行が困ります。
そのため、ネガティブな内容が多く書かれるのです。
ハンガリーのようになれる国は少ない?
ハンガリーのように通貨発行権を中央銀行から取り返し、日銀ではなく政府が発行できるようになれば、日本の問題も解決するかもしれません。
現代の日本が抱える問題と言えば、以下のことがあるでしょう。
・年金の受給格差
・健康保険料などの社会保障費の負担額の増加
・消費税増税
これらは通貨発行にかかる手数料や利息の支払いに、せっかく発行した通貨を充てているため、後回しにされ、結果足りなくなっているのです。
そのため、増税しなければなりません。
しかし、この通貨発行にかかる手数料や利息の支払いがなくなれば、年金や社会保障費にお金を回せるようになるのではないでしょうか。
そして、消費税の増税は、足りない社会保障費を賄うためのものなので、これも徴収される必要がなくなるような気がしますね。
しかし、このようなメリットがあっても、ハンガリーのようになれる国は少ないでしょう。
国内からも海外からも「通貨発行権はそのまま中央銀行に持たせるように」との圧力がかかるので、ハンガリーのように通貨発行権を政府が取り戻して、経済状況を良くすることはなかなか難しいのが現状です。
通貨発行権を学んでみると、世界情勢も見えてくる!
今回は、通貨発行権についてお伝えしましたが、なかなか難しかったでしょうか。
多くの国で、通貨発行権を持っているのは国(政府)ではなく、その国の中央銀行だという事実に驚いた方もいるのではないでしょうか。
この「中央銀行制度」から抜け出すことは簡単ではありませんが、ハンガリーは通貨発行権を政府が取り戻し、国も豊かになっているようです。
他の国でも、借金問題を解決できる日が来ると良いですね。