通貨は、様々な文字で表されます。
例えば、「¥」(円)や「$」(ドル)などがそうですね。
ですが、あまり見かけない通貨記号の場合、その読み方すら分からず戸惑ってしまいがちです。
皆さんは、「l」という通貨記号が何を意味するのかご存知ですか?
通貨記号について掘り下げると、読み方を知ることができますし、意外な背景や成り立ちが見えて面白いかもしれません。
今回は、通貨記号の「l」について、その意味や由来などを一緒に学んでいきましょう。
「¥」「$」「l」などで表記される「通貨記号」とは?
まず、「¥」「$」「l」などで表記される「通貨記号とは何か」というところから、話していきましょう。
「通貨記号」というのは、読んで字のごとく、「通貨を表す短い記号」のことです。
通貨は、世界各国で使われているものであるため、様々な種類があります。
しかし、日常的によく使われる通貨には、それを短く表せるものがあった方が色々と便利ですよね。
そこで、通貨記号が使われるようになりました。
この通貨記号は、使用されている通貨の頭文字をデザインしたものが多いですが、国によって異なります。
そして、この通貨記号が金額の前に付くか後に付くかも、国によって異なります。
例えば、英語圏の国や日本では、金額の前に「$」「¥」などの通貨記号が付きます。
一方、フランスやドイツなどでは、通貨記号は金額の後に付けます。
しかし、すべての通貨に通貨記号があるわけではないので、固有の通貨記号がない通貨もあります。
また、ヨーロッパでは、共通の通貨であるユーロが導入(イギリスは除く)されたことから、それまでヨーロッパの国々で使われていた通貨は必要なくなりました。
それに伴って、それらの通貨記号は使われなくなっています。
世界の様々な通貨と通貨記号
ここでは、世界の国で使われている通貨の名称とその通貨記号について、成り立ちなどを整理しておきましょう。
一般的に広く認知されているものから書いていきます。
・日本円 ¥
「yen」の頭文字「Y」に、二重線を入れたものです。
・米ドル $
北アメリカで大きな勢力だったメキシコの通貨「ペソ」が起源とされています。
ペソ(Peso)の「P」と「S」を重ねて書くのが習慣化され、「$」が生まれたようです。
・オーストラリアドル A$
$マークの前にオーストラリア(Australia)の頭文字である「A」が付いたものです。
・カナダドル Can$
$マークの前にカナダ(Canada)の前半分が付いたものです。
・韓国ウオン (「W」に二重線を引いたもの)
かつての日本や中国で使用されていた通貨名「圓」を韓国語で読むと、「ウオン」と発音するのが由来です。
そして、「l」(£)と表記されるのは、イギリスポンドです。
「l」についての詳しいことは、次の章から見ていきますが、このように通貨は様々な記号で表記されます。
ただし、EU加盟国のユーロだけは例外で、自国の通貨としてユーロを使っていない国だけが、Cに二重線を引いた「ユーロマーク」で表記するという扱いになっています。
通貨記号「l」の意味と由来
ここで、今回の記事のメインである、通貨記号「l」の意味や由来などを見ていきましょう。
通貨記号「l」は、イギリスの通貨(ポンド)を表す通貨記号です。
古代ローマで使われていた通貨、「リーブラ」(libra) の頭文字から来ています。
正しくは「£」のように表記しますが、意味が分かれば良いので、「l」や「L」と表記されることも多いです。
そして、「L」についている横の棒ですが、これは「天秤」を表すとされています。
なぜなら、この通貨記号「l」は、「質量の単位」としても使われ、実際に、「1リーブラの銀の価値」を表していたからです。
また、イギリスならではの独特な通貨事情があります。
通貨記号が、その国で現在使われている通貨の名称から取られるのであれば、使用する通貨と共に記号も変わるのが普通でしょう。
そして、イギリスの現在の通貨は、「リーブラ」ではなく「ポンド」です。
しかし、リーブラを由来とする「l」が、お金を表す記号としてイギリス国民に強く定着しているため、今でもこの通貨記号が使われています。
イギリスはヨーロッパに位置する国ではありますが、EUに加盟していないので、この「l」という通貨記号が、現在でも使われているのです。
通貨記号「l」は、どんな場面で使われる?
イギリスの通貨記号「l」は、イギリス国内においてどんな場面で使われているのでしょうか。
通貨記号は多くの場合、その通貨が使われている国で金額を表記する際に使われます。
これは日本でもそうですね。
例えば、八百屋さんなどでは、値札に日本円の通貨記号「¥」が書かれています。
こうすることで、いくらなのかをはっきりと買い物客に示しているのです。
また、お店で買い物をして、その領収書をもらう際などには、金額の前に日本円の通貨記号である「¥」を付けて、改ざんできないようにしてもらうのが普通です。
これらは、通貨記号「l」(「£」)を使うイギリスでも同じです。
注意点としては、イギリスでは、£5・32(5ポンド32ペンス)のように価格を表記する点でしょう。
そして、この時の中黒(・)は、小数点を意味しています。
日本では、小数点以下の端数は表記しませんが、イギリスのように小数点以下まできちんと表記する国もあるようです。
「l」はトルコの通貨「リラ」の通貨記号でもある?
ところで、この「l」という通貨記号ですが、イギリスポンドだけを表すものではありません。
実は、トルコの通貨であるリラの通貨記号としても、イギリスと同じ「l」が使われているのです。
トルコの通貨「リラ」も、やはりイギリスのポンドと同じく、古代ローマの通貨「リーブラ」から来ています。
イギリスと同じように、古代ローマの領土内に位置していたトルコも、当時のローマの影響を受けていたと想像できます。
そのため、お金を意味する記号として、同じ通貨記号「l」が使われることになったのです。
これは、とても自然な流れだと言えるでしょう。
そして、価格表記ですが、トルコでもイギリスと同じく、金額の前に通貨記号「l」を書きます。
今使っている通貨はそれぞれ違っても、同じ時期に同じ国(ローマ)から影響を受けたために違う国(イギリスとトルコ)で同じ通貨記号が使われているというのは、とても面白く、興味深いですね。
読み書きが難しい通貨記号とは別の基準もある!
ここまで、様々な国の通貨記号や「l」という通貨記号についてご紹介しましたが、中には読み書きが難しい通貨記号もあります。
また、通貨記号として使われている文字が特殊なため、一部のパソコンやスマホでは表示することができないものもあります。
お金をやり取りするときに通貨記号が正しく表示できないと、齟齬や不手際が起こりかねません。
そこで、もっと簡単な通貨を表すコードがあります。
それが、国際的な基準である、「ISO 4217コード」です。
これは、各国の通貨をアルファベット3文字で表すもので、ISOによって制定されました。
例えば、日本円なら日本を表す「JP」と円を表す「Y」を組み合わせて「JPY」と表記します。
こうすることで、各国の通貨にそれぞれ異なるコードを割り当てられます。
そのため、同じ通貨記号「l」を使うイギリスポンド(GBP)とトルコリラ(TRY)で別々の表記をすることも、ユーロの表記(EUR)も可能です。
また、複雑な通貨記号より
・読み書きが簡単
・意味が分かりやすい
というメリットもあります。
通貨記号では判断ができなくても、イギリスポンド(GBP)のように簡潔に表されていれば、どこの国の通貨なのか分かりやすいですよね。
そのため、国際的な場においては、通貨記号よりも「ISO 4217コード」使うことが多くなっています。
通貨記号を知るのも面白い!
今回は、通貨記号について一緒に学んでいきました。
まさか、イギリスとトルコのように、数ある記号のうちの一つが二つの国の通貨記号になっているとは思いもよりませんでした。
「l」に焦点を当てて通貨記号の意味や成り立ちに触れましたが、そこには歴史・地理的背景が隠れていて、通貨記号そのものに興味を持った方もいるのではないでしょうか。
海外旅行先で手にした通貨や気になった通貨を調べてみると、その国の歴史や地理の新たな一面が見えてくるのではないでしょうか。