世界の政治や経済が不安定であるなか、金への投資に注目が集まっていますよね。
今回は、そんな金の歴史を紐解き、改めて金の魅力に迫ってみましょう。
これまで発掘された装飾品の意味や、生産量の多い国に共通していることなども、併せてご覧ください。
発掘した金が教えてくれる金の歴史
現代まで人を魅了し続ける金の歴史は古く、古代文明にさかのぼると社会運営に深く関わっています。
その証拠に、金は古代から20世紀まで貨幣として使われてきました。
紙幣の発達はあったものの、金本位性である以上は、古代も現在も経済システムは変わらないと言えるでしょう。
また、古代では金は王の権力を表すものとして崇められ、数えきれない宝飾品が作られてきました。
当時作られた金の宝飾品が発掘されると、メディアでも大きく取り上げられますよね。
こうした金の歴史を、少しさかのぼってみましょう。
紀元前6000年、世界最古の金属品ともいわれているシュメールの金の装飾品が存在していたといわれています。
そして、ときは過ぎ、黄金文化を迎えます。
この黄金文化は、トラキア人と呼ばれる人々によって文明が形作られていました。
この時代の黄金文化によってたくさんの黄金製品が残されている証拠に、1972年にヴァルナ集団墓地遺跡(ブルガリアの東部)から数キログラムにおよぶ金製品が、2004年には重量672グラムの黄金のマスクが出土しています。
金は社会的な身分の差や、王の権力を表すものであったことが、歴史から分かりますね。
微量たりとも金を持つことが禁じられていた時代
金とは切っても切れない深い関係にあるのが、古代エジプト文明です。
この時代に作られた多くの装飾品のなかに、みなさんご存知であろうツタンカーメン王の黄金のマスクがあります。
このツタンカーメン王のマスクは、1922年に発掘されました。
ファラオ時代では、金は神が王に遣わした高価で尊いものだとして、国民が発掘して採掘したとしても、微量たりとも金を所持することが禁じられていた時代です。
国民が集めた金は加工され、ツタンカーメン王のマスクや棺になりました。
当時、金は砂金採りで集められたというにも関わらず、その量は莫大です。
それを象徴するように、ツタンカーメン王の眠っている棺に使われた金の量は、驚くことに110kgもあります。
この量を砂金採りで集めたというのですから驚きですよね。
そして、地金価格を仮に1グラム3000円だとすると、なんと棺の価値は3億3000万円にも及びます。
日本も大量に金が発掘されていた
日本と金の関係性については、鎌倉時代にさかのぼります。
鎌倉時代には砂金のまま使われていて、袋や竹筒に入れて取引きしていました。
室町時代になると輸入貨幣をして流通し、戦国時代に入ると南蛮貿易も盛んになったことから、鉱山開発が活発になり、金が産出されるようになったのです。
そして、豊臣秀吉が天下を統一した安土桃山時代には、世界最大の金貨ともいわれている大判を作って、大名や公家の間で取引が行われるようになったといわれています。
安土桃山時代から江戸時代にかけて、金山で金の発掘が盛んに行われたことでゴールド・ラッシュが起き、大量の金が流通したことから、今もなおその時代が黄金伝説として語られているのです。
歴代の戦国武将たちはみな、金山銀山から発掘した金銀を戦にかかる費用にあてていました。
また、古代文明で王の権力を表すものであったことから、権威の象徴として戦国武将の装飾品にも使われていたのです。
金の生産量が多かった南アフリカは発掘にコストがかかる?
人々を魅了する金は、どこで発掘されているのでしょうか。
そこで、金の生産量の多い国を見てみましょう。
1900年代に入ってからは、トップはずっと南アフリカでした。
しかし、現代のトップは中国です。
金の生産のトップであった南アフリカが生産が伸び悩んでいるひとつの原因は、長年に渡って金の発掘、採掘をしてきたことにあります。
何が起きたのかというと、掘りやすい金鉱床を全て掘りつくしてしまったことから、どんどん深くまで掘らなければいけない状況になってしまったのです。
深さ3902メートルにも及ぶ世界最深のタウトナ鉱山ができたのも、金を発掘するためでした。
深い場所での採掘は、地底に採掘者のための冷房管理や食料の供給などを行う必要があります。
すると、金を発掘することに対しての労働コストがかかってしまい、収支が合わなくなってしまったのです。
中国が金の生産量トップになった要因
現在、金の生産量が多い国は中国です。
2007年から金生産量を増やしていますが、なぜ急激な成長を遂げたのでしょうか。
さまざまな理由はありますが、その中でも特に、広い土地を持っている国ということが大きな要因になっているのではないでしょうか。
中国の山脈を見てみると、たくさんの金鉱山があります。
金を採ろうと思えば、採れてしまうような環境にあるわけです。
現に、金の生産量の多い国を見てみると、どれも広大な土地を所有していることがわかります。
【金の生産量が多い国】
・中国
・オーストラリア
・アメリカ
・ロシア
・南アフリカ
・ペルー
また、土地の広さは上記の国ほどではなくても、大きな金鉱山のあるインドネシアやガーナ、カナダやカザフタンも、金の発掘・採掘にて多くの金を産出しています。
もちろん、さまざまな背景によって変動しますが、広大な土地や大きな金鉱山がある国で金は生産されています。
日本でも金は採れる
世界の生産量の多い国には及びませんが、日本でも金は発掘できます。
金を採掘する場合、まずは、金が眠っている金鉱脈を探すことからはじまります。
しかし、狭い国土で探すのは至難の業ですよね。
金鉱脈を探すうえでのポイントとしては、場所を川と温泉に絞ってみましょう。
川に存在する砂金は、東京の多摩川や金沢の犀川などで金の採取が行われています。
そして、金鉱脈がある温泉に共通しているのが、塩素をたくさん含んだ温泉地です。
こういった温泉地にはマグマから溶け出した金銀で鉱脈ができる浅熱水性金銀鉱床がある可能性があることから、金が採れる可能性も高くなります。
こうして温泉から採取された金は、山金と呼ばれます。
砂金や山金は大きい粒状ではなく、肉眼で見るには厳しいほど少量しか採れません。
では、どのように採取しているのでしょうか。
南アフリカの採取方法を見てみると、金と反応する水銀を使って一旦合金にし、それを加熱して水銀を分離させて金を採る方法で行っています。
ただし、水銀の毒性が懸念されます。
そこで、採算面も考慮した方法として、銅を精錬する過程で金を取り出す手法が行われています。
その方法はまず、金を含んでいる銅鉱石から粗銅を作り、これを溶鉱炉に入れて純度の高い貴金属の塊をつくります。
次に、純度を高めた貴金属の塊から銅だけを分離し、残されたものから金を分離して採り出します。
日本には火山帯も温泉地も多いですから、ゴールド・ラッシュが訪れるのも夢ではないのかもしれませんね。
金の魅力は永遠?!
古代から貴重なものとして崇められてきた金は、現代でもその価値が下がりません。
金への投資は、現物で保有できるのも魅力のひとつですよね。
権力者しか金を持てなかった時代には、考えられなかったことです。
そんな金に、夢やロマンを重ねる方も少なくないのかもしれません。