家賃の延滞金(遅延損害金)は消費税扱い?賃貸と税金のお話

賃貸経営をしていて、借主から延滞金(遅延損害金)を受け取るようなことは、できれば避けたい事態ですよね。

長年、オーナーをしていても経験が無い場合もあるでしょう。

「家賃の延滞金には消費税を課税するのか」ということや、延滞金への考え方、上限設定、家賃収入が課税になる場合など、税金に関係するさまざまなことをまとめました。

延滞金とは?契約書に書いていないと請求できない?

経営者として、税金に対しての正確な知識と認識は重要です。

予期せぬ出来事もあるかと思いますが、間違えないように対処していきましょう。

まず、延滞金が消費税で計算されるのかということを知る前に、延滞金についての基本知識をご説明します。

難しく言うと「遅延損害金」と書かれることも多い延滞金ですが、その名の通り、家賃の未払い分に対して、一定の期間が経過しても支払わない場合に、請求する金額です。

未払い分の回収も難しいのに延滞金まで、と借主から拒否されることもあるようです。

ですが、家賃の延滞金の取り決めは、契約書に記載されていても、されていなくても、借主に請求することができます。

もしこうした罰が無ければ、家賃の支払いが遅れたり滞ったりする人が多くなってしまうかもしれません。

契約違反、債務不履行、と考えて、厳しく延滞金を回収することに躊躇してはいけません。

しかし、延滞金はいくらでも回収できるというわけではなく、上限もあります。

契約書に記載が無かった場合は法律に書かれている最低ラインの延滞金を請求することができます。

つまり、年5%の割合になります。

ただ、貸主が事業として不動産賃貸業を営んでいる場合は年6%の割合で計算されます。

また、病気や事故、災害などのやむを得ない事情がある場合には猶予されることもあります。

家賃の延滞金の上限

契約書に家賃の延滞金の記載が無かった場合は年5%で計算しますが、ある場合はその金額を請求することができます。

記載さえしてあれば、5%なら5%、10%なら10%の請求が可能になります。

契約書は、最初に借主が目を通して了承したうえで契約するものです。

「知らなかった」「気が付かなかった」「言われていない」と抗議されても、借主の支払い義務は揺るぎません。

しかし、延滞金の上限ですが、消費者契約法で年14.6%と定められています。

これより上の割合が契約書に記載されていても、法律の方が優先になります。

14.6%以上にしたくても不可能です。

しかし、「事業用として」個人に貸す場合や、法人に対して貸す場合は、これ以上の割合で計算することも可能です。

あまりにも高すぎる金額にはできませんが、裁判で認められたのなら、請求できる可能性はあるようです。

それでは次項で、延滞金に消費税がかかるかどうかの答えを出しましょう。

家賃の延滞金に消費税はかかるのか

延滞金の基礎知識を知ることができたでしょうか。

今回のテーマである、「家賃の延滞金が消費税扱いになるかどうか」ということについては、家賃同様に「非課税になる」という答えになります。

個人に貸しているから非課税、というわけではなく、遅れた分の利息として扱われるためです。

そう考えれば、法律で定められた割合が低いのも理解できますね。

割合5%で考えると、20万円滞納しても、1万円しか設定できないわけです。

しかし、微々たる金額だからといっても、滞納するような借主にとっては厳しいものです。

社会的制裁、という意味でも請求するのは意味のあることです。

また、家賃未払いの期間にそのせいで増えた業務や心労のことを考えると、少しでも多く回収してその分を管理費用などに充てたいと思っても、不自然なことではありません。

家賃の延滞金は消費税がかからない!課税扱いになるのは?

延滞金については、上限はあるが自由に設定できること、また、非課税であるということがお分かりいただけたと思います。

では、家賃収入には、すべて消費税がかからないのでしょうか。

初心者の方向けのお話になりますが、少しおさらいしておきましょう。

まず、個人向けに居住用として貸してある場合は、敷金礼金も含めて家賃は非課税になります。

もちろん管理費や共益費なども同様です。

しかし、貸している駐車場のタイプによっては、例外もあります。

建物賃貸契約書とは別に駐車場使用契約を結んでもらう場合、「住宅の貸付」とは別扱いになり、課税扱いになることもあるのです。

また、まかないつきの下宿のようなタイプの賃貸なら、賃貸部分は非課税ですが、まかない部分は課税の対象になります。

その他、不動産会社が一括で借り上げしているような時には、事業物件として消費税がかかることになります。(契約書に「居住用」とある場合は別です)

課税売上高しだいで消費税が課税されることもある

家賃や延滞金などが非課税になるといっても、金額にもよります。

前々年度の課税売上高が一定の金額(1,000万円以上)なら、消費税を課税する対象になります。

ただしこれは、「一つの事業に対して」ではありません。

すべての事業の、合算金額になります。

賃貸住宅の収入だけでは1,000万円に満たなくとも、その他駐車場経営などを合わせて1,000万円以上になれば、税金を支払わなければいけません。

税金の計算は、素人にはかなり難易度が高く、収入のうち課税対象とならない経費を差し引いたりして計算します。

賃貸経営の場合は差し引く部分が少ないため、「簡易課税制度」を利用することもできます。

簡易課税制度とは、前々年度売上高が5,000万円以内の場合に選択できる制度です。

届け出は必要ですが、みなし仕入れ率で計算できて有利になることもあります。(もちろん不利になることも)

ちなみにこれは、一度選択すると2年間は変更できません。

自分にとってメリットとデメリット、どちらのほうが多いのか、じっくり検討することが大切ですね。

賃貸経営のお得な対策

家賃や延滞金にまつわる消費税のことについて、理解を深めて頂けたでしょうか。

最後に、賃貸経営で有効な節税対策、「青色申告」についてご紹介します。

青色申告というのは、「簿記のルールをしっかり守り、正確な金額を計上し、きちんと納税する」という約束をすることです。

これによって、簡易的な記帳方法でも10万円もの金額を控除される可能性もあります。

また、青色申告にして家族を従業員扱いにし、それぞれにお給料を出すと、全額が経費として扱えます。

こちらは、青色申告でなくても必要経費にはできますが、配偶者と子供それぞれに制限がありますので、やはりお得です。

さらに、所得が赤字になると損失額をその翌年から3年間もの間、それぞれの年の所得から差し引くことも可能です。

その他にも、30万円未満のものを経費にすることができる、などのメリットもあります。

税務署に届け出を提出して、正確に帳簿をつけ続けることで、このようにたくさんの利点がありますので、検討してみるのもいいでしょう。

賃貸経営は消費税に縁がないわけではない

家賃などと同じで延滞金も非課税になりますが、家賃と同じ扱いだからというわけではありません。

遅れた分の利息として扱われるのです。

また、法律によると、延滞金の上限は年14.6%になります。

これ以上を設定しようとしてもできません。

ただ、賃貸経営をしていて、借主が法人だったり課税売上高が一定の金額以上の場合は、消費税計算も必要になってきます。

税金に対する理解を深めて、上手に経営していきたいものですね。