生活するスタイルが違えば、音の感じ方も違います。
アパートは、そんな「違う」が集まって生活をする場所です。
生活する中で、音に関する問題が起きてしまったら…。
苦情を言いたい、苦情が来てしまった。
どちらの立場になっても、非常に困るものです。
予防できること・改善できること・対処できることなど、騒音トラブルに悩み、心が疲れてしまう前に、できることがあるかもしれません。
その苦情は本当に騒音?そもそも騒音とは
アパートは、複数の世帯がひとつの建物で生活する場所です。
契約書に記載されていなくても、基本的には配慮する義務を負っています。
アパートの騒音と言えば、生活音。
足音、ドアの開閉、掃除機やお風呂など、さまざまです。
生活音は、いったい、どのくらいの大きさなのでしょうか。
・ステレオ(昼間) 71~88
・犬の鳴き声(正面5m) 88~100
・子供の足音(上階の足音) 50~67
・洗濯機(正面1m) 53~66
・掃除機(横1m) 59~72
・バス(給水音) 58~76
*単位:dBデシベル ()内計測点
おおよそ日常生活上、45dBまでが一般的に静かなレベルだと言われています。
生活音や騒音が、どのくらいのレベルか測れるアイテムがあります。
・Decibel X – dBA デシベルテスター(iOSのみ)
こちらのアプリでは騒音計測ができます。
・騒音計/振動計
多くの市役所や区役所では、騒音計・振動計の貸し出しを実施しています。
期間は1週間ほどの予約制というところが多いようです。
苦情の予防策として、一度試してみるのも良いかもしれません。
アパートの騒音「受忍限度」とは
客観的にレベルがわかったとしても、不快の感じ方は人それぞれです。
音の大きさ・音の高さ・音色、これらの組み合わせ次第で、聞こえ方に違いが出てきます。
騒音トラブルで、よく目にする「受忍限度」という言葉があります。
「受忍限度」を超えたと裁判で認められた場合、相手には騒音停止や賠償が命じられます。
具体的に、どのようなレベルから「受忍限度」を超えるのでしょうか。
飲食業など深夜営業に対して、条例で規制がなされています。
住居系の規制地域内の深夜営業は、午後10時~午前6時までの間、40~55デシベルで規制されています。
アパートではなく、マンションですが、カラオケスナック騒音トラブルの例です。
音が隣に漏れていることを承知で、深夜営業していたこの店。
再三の苦情を無視していたため、損害賠償を命じられたという事例があります。
雑音の中で集中できる人もいれば、水滴の音にイライラする人もいます。
基準が『個人の我慢の限界値』だけでは、判断がつきかねると思われます。
人の体に被害があるかどうか、音の大きさ・時間帯・頻度・継続期間・対応の有無。
実害があるか、「受忍限度」を超えたかどうか。
これらを第三者からみて、総合的に判断されるのです。
アパート内、近所の騒音には苦情だけでなく改善申し入れを!
眠れないし、他のことが手につかない。
ずっと我慢してきたけど、もう限界。
それほどまで我慢せずに、貸主もしくは管理会社に相談しましょう。
第三者を介し、申し入れたほうがトラブルになりづらいと言われています。
まずは、貸主や管理会社に申し入れましょう。
基本的に苦情対応は、アパートの貸主の義務だと考えられています。
また、管理会社はこの道のプロですから、何かしらの対応をとられると思われます。
その際、できるならば騒音の証拠となるものを提示できれば、単なる苦情ではないことが伝わるはずです。
録音、ビデオなどに撮るなどし、具体的に改善策を求めましょう。
そうすることで、貸主、管理会社も対処がしやすいのではないでしょうか。
通常の処置は確認後、状況によっては直接、掲示物などで注意を促します。
それでも騒音が収まらない場合、再度、貸主・管理会社へ伝えましょう。
再三の注意も聞き入られない場合、相手はかなり手強そうです。
貸主・管理会社へ調停などの措置をとるよう、働きかけてみてはいかがでしょうか。
アパートの騒音。苦情を自分で申し入れに行く場合
アパートの貸主、管理会社が非協力的なこともあるかと思われます。
自身で騒音宅へ申し入れる場合、十分に確証を得てから実行に移しましょう。
騒音元がその部屋なのか、慎重に確定をしましょう。
実際にあった話です。
階下の住人から騒音の苦情がきたが、本人はまったく身に覚えがない。
調べてみると、もう1階上の住人が音源だった、ということがありました。
苦情を言われた真ん中の住人は、普段から不在がちで騒音を知らなかったそうです。
また、独居の老人宅から漏れ聞こえる、テレビの大音量。
これは、老人性の難聴のせいかもしれません。
ケアする人に伝えるなどで、対策ができるかもしれません。
通常の生活音に関しては、騒音だと認識している人は、ほぼいないと思われます。
自分が人に不快感を与えているとは、夢にも思っていないのです。
よく、壁をノックして「静かにして」のサインを送る、という話を聞きます。
下の階から傘などでドン、なんていうのも聞きます。
これらの行為は、たとえ、そのように意図していなくとも、「怒っている」というサインとして相手に受け取られます。
大きな音を立てていた、という自覚のない人は、そのサインに不快感を感じます。
そこから、さらに壁や床を叩き合って、こじれていく…悪循環となってしまいます。
直接相手に伝えに行く場合「あなたが気付いていないことをお知らせします」。
このくらいの冷静さが、相手には伝わりやすいのかもしれません。
苦情を言っても改善の見込みがない場合
アパートの貸主や管理会社に苦情を言っても、対処してもらえない。
騒音元への直談判も通じない、騒音は嫌がらせのようで悪質。
こうなってしまっては、手に負えません。
最終手段で専門家、公的機関を利用しましょう。
・法テラス
どのような法的措置を取ればよいか、アドバイスを受けられる窓口の紹介なども、してもらえます。
・ADR(裁判外紛争解決手続機関)調停/仲裁
司法機関(裁判所)や日本弁護士会(民間)、国民生活センター(行政)などがあります。
・警察の相談窓口
相手が暴力的であったり、身に危険が及ぶ恐れがあれば、相談しましょう。
・市区町村公害苦情相談窓口
アパート外の騒音には、こちらの窓口が良いかもしれません。
悩んでいても解決しません。
まずは、相談してみましょう。
アパートの住人から騒音苦情を受けた場合
騒音苦情を受けた場合、冷静に対処をしましょう。
可能ならば、騒音の時間帯や音の種類などを聞いてみましょう。
身に覚えが全くない、その時間帯は室内にいないことが明らかな場合、疑われることは気分の悪いことですが、相手はこちらが騒音元だと思い込んでいます。
すぐに貸主、管理会社へ相談し、その旨を説明しましょう。
心当たりはないけれど、気付かなかっただけだったかもしれない。
そんなときは気付かなかったことを認めて、謝罪し、早速改善しましょう。
苦情の内容によって、自分で改善できること、できないことがあると思われます。
ドアの防音テープ、椅子の足カバー、防音ラグなどは、比較的簡単ではないでしょうか。
壁に遮音シートや吸音ボードを取り付ける場合は、壁を傷つけないものであっても、貸主または管理会社へ施工確認をおすすめします。
アパートの構造上やむを得ない場合、貸主からその旨説明してもらいましょう。
アパートは、近隣の音を通しやすい建物です。
常に自分が苦情を言う側、言われる側、どちらにもなる可能性があります。
トラブルに直面したとき、お互いの感情がもつれる前に、できることがあるはずです。
これらの改善策は、騒音予防にも効果が期待できるのではないでしょうか。
アパートの騒音、苦情を言うとき、言われたときの対処
<苦情を申し入れる前に>
・騒音を判定し、録画、録音の記録を残す
・騒音元の確定を慎重にする
<苦情を申し入れるとき>
・貸主・管理会社へ対処を依頼する
・直接騒音元へ行く場合、時間帯や音の種類、改善してもらいたいことなど具体的に伝える
→改善不可能な騒音の場合は、法・公的機関に相談し、法的措置を考慮する
<苦情を言われたら>
・貸主・管理会社へ相談する
・改善策を講じ、相手もしくは貸主・管理会社へ報告する