S造はRC造と違い、耐火被覆をすることで耐火構造となる構造

地震や自然災害の猛威で、建物の安全性が強く問われている昨今です。

耐震性能はもちろん、耐火性能は特に重要な安全性能です。

S造やRC造といった構造が、耐火性能に優れているとされています。

耐火構造にも建築基準法に定められたいくつかの種類があります。

賃貸物件、分譲物件など、物件探しをする際によく見る「構造種別」と耐火構造の種類をしっかり理解しておきましょう。

S造、RC造とは?建物の構造の種類

建物の構造はいくつか種類があります。

構造種別は、建物の構造部(骨組み)がどのような材質で作られているかを表すものです。

建物の構造には、以下のものが挙げられます。

・W造(木造)
・S造(鉄骨造)
・RC造(鉄筋コンクリート造)
・SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)

アルファベットの表示は、構造の材質の頭文字をとったものです。

W造(木造)は構造部に木材を使用した建物です。

日本が昔から使用してきた材質です。

日本の気候に最適で、その技術も世界に誇るものとなっています。

S造(鉄骨造)は構造部に鉄を使用した建物です。

人工的に強度を高めた鉄を使用しています。

木造の柱、梁、階段などの部分が鉄になったというイメージだとわかりやすいかと思います。

RC造(鉄筋コンクリート造)は、構造部が鉄筋とコンクリートで構成されている建物です。

鉄筋とコンクリートのそれぞれの弱点を補いつつ、それぞれのメリットを生かして構成された構造になっています。

SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)は、鉄骨の柱の周囲に鉄筋を組んで、コンクリートを打設する構造です。

RC造に比べて耐久性に優れているので、高層の建物や、大規模な施設などに適しています。

これらの代表的な構造をもとに耐火構造や防火構造、耐震構造などという性能を付随していき、建物は出来上がっていきます。

耐火構造の種類は?耐火性能はどんな風に決められている?

それでは、耐火構造の種類とはどのようなものがあるのでしょうか。

耐火構造は、防火性能の基準によって定められています。

それらは、耐火構造、準耐火構造、防火構造、準防火構造との4種類になります。

耐火構造は、柱や梁、床や壁などが、基準法に定められた耐火性能をクリアした建築物の構造をいいます。

火災が起きた場合、各部分や階数などに定められた一定時間の間に、変形や破壊、溶融などといった損傷を生じないものであることなどの要件が定められています。

この一定時間というのは、耐火構造だとおおよそ1~3時間(各部分や階数に応じて)です。

準耐火構造はおおよそ45分間と定められています。

防火構造、準防火構造は建物の外壁や軒裏に対して、防火性能を持つ建築物のことをいいます。

防火構造ですと30分、準防火構造ですと20分となります。

耐火構造、準耐火構造は建物内部の防火性能に対し、防火構造は建物周辺の火災による延焼を防ぐような目的で定められています。

RC造、S造に求められるのは耐火構造、W造に求められるものは防火構造といえば、わかりやすいかもしれません。

建物の構造だけでは決まらない奥深い耐火構造

よく地震などで、倒壊している映像を見かけることがあります。

それらを見るとW造が多くみられると思います。

中にはRC造の倒壊で、鉄筋がむき出しになっているものも見られます。

ではS造はどうでしょう。

S造は鉄だから頑丈で、火災や地震にも強い、とは限りません。

地震などの災害が起きて、建物が倒壊しても、一番被害が怖いのはその後に起こる火災です。

S造に使用される鉄骨自体は、熱に弱い材料です。

RC造は、鉄筋とコンクリートの部材を一緒に使用することで、圧縮力、引張力、どちらにも強い構造となり、地震に対する安全性も高くなります。

そして、RC造は原則として構造そのものが耐火構造です。

S造はそのものだけでは、耐火構造とはいいません。

鉄は熱に弱いため、そのものだけでは耐火性能はクリアできないのです。

そこで、鉄骨に「耐火被覆」というものを施します。

こちらも基準法で耐火被覆の厚さなどが定められています。

鉄骨に耐火被覆を施すことで、S造は耐火構造の基準をクリアすることになります。

S造の長所、短所とは?

耐火被覆を施して耐火構造として、安全性の高いS造ですが、やはり長所と短所があります。

<長所>

・木材より強度が強い

・柱のスパンが広いため、大空間をつくることができる

・間取りの自由がきくので、リフォームに最適

・材質が均一で精度が高い

・工期が短くできる

<短所>

・柱が木造より大きくなるため、内装の仕上がりに柱型が出てくる

・さびやすいので、外部や水回りには防錆処理が必要

・熱伝導率が高いため、断熱をしっかりとしなけばならない

・燃焼温度が540度以上になると急激に強度が衰えてしまい、倒壊の恐れがある

鉄骨ならではの長所を生かし、大空間が実現できるS造です。

さらに防錆、断熱、耐火被覆などをしっかりとすることで、頑丈な建物となります。

住宅に使われるS造~耐火構造を重視した住宅

S造には「軽量鉄骨造」と「重量鉄骨造」の二種類があります。

違いは鋼材の厚さです。鋼材の厚さが6mm未満のものは軽量鉄骨造、6mm以上だと重量鉄骨造になります。

どちらも耐震性や耐火性などの性能に大差はありません。

軽量鉄骨造は、比較的コストを安くして建物を建てることができます。

ですが、木造のように筋交いを必要とするため、間取りの自由度が重量鉄骨造より若干劣ります。

一方、重量鉄骨造は、コストが高くなりますが、強度が柱や梁で充分まかなえるため、間取りの自由がききます。

さらに耐震性も高まります。

住宅に使われるS造は軽量鉄骨造がほとんどです。

間取りの自由という部分では木造と同等くらいですが、優れているのは、耐火性です。

前述したように、木造では防火構造までの要求に対し、S造は耐火被覆をすることで、耐火構造となり、耐火性能がアップします。

耐火性を重視した耐火構造の住宅も年々増加の傾向にあります。

アパート経営をするなら木造?S造?RC造?

アパート経営をお考えのオーナーの方は、どのような構造のアパートを建てようか迷うことと思います。

利益の最も出やすいアパート経営を望むことは当然のことです。

アパートの構造と利益に関わる部分のご説明をします。

まず一番多いのは木造のアパートです。

何より建築費用が安いこと、断熱性に優れていることや間取りの自由がきくことなどがメリットとして挙げられます。

一方、遮音性や耐震性、耐火性などの性能は高い方ではありません。

大規模な建物は作ることができないので、2階建くらいの少数住戸のみの規模になります。

次にS造ですが、耐震性や遮音性のほか、耐火構造という面からも、木造より優れています。

利益を出しやすいのは木造でしょう。

建物に対する管理料が少額で抑えられる部分や固定資産税などの税金が抑えられる部分などがあげられます。

しかし、耐久年数や建物の強度などを考えると、S造の方が優れています。

ちなみに、利益という面で難しい構造は、RC造になります。

高い建物も建築できるRC造は、保守費用や管理料などが多くかかり、共用部分が他の構造に比べて多いために、その分実質収入が減るのです。

ご自身の経営や運営などの計画に沿って、どのような構造でのアパート経営がいいのかを見極めることが重要になります。

構造と耐火性能の種類で建物は守られる

建物の構造により求められる耐火性能も異なりますし、防火構造も耐火構造も、建物を守るという上では重要な部分となります。

それぞれの構造に、長所や短所があり、一概にどの構造が優れているということは言い切れないほど、建物の構造は奥深いものです。

いずれにしても、建物の構造と、耐火性能や耐震性能などさまざまな工夫で、建物は守られています。

そして、同時に私たち暮らしも守られているということになります。