日本の住まいは木造住宅が主流です。
豊かな森林に恵まれている国土のためか、木造は古来より日本の風土や気候に合っています。
しかし、近年の相次ぐ地震の影響で注目されているのが軽量鉄骨造の住宅です。
木造と違い鉄なので、倒壊の危険性が少ないというのがその理由です。
今回はこの軽量鉄骨の家と木造の家との違いについてご紹介します。
家を作る際は参考になさってくださいね。
日本人に馴染み深い木造住宅のメリット・デメリット
国土の7割が森林で覆われている日本では、木造は古くからある住まいで、現在でも新築住宅の約7割が木造といわれています。
木造住宅の良さは通気性に優れているというだけではなく、鉄に比べ熱伝導率が低いことから室外の気温が内部に伝わりにくく、ジメジメと蒸し暑い夏はもちろん、寒い冬でも過ごしやすいという点でしょう。
また狭い場所や変則的な土地であっても比較的自由にレイアウトが組めるうえに、建築コストも安く、日本の風土や気候に合った建築といえます。
しかし、残念なことに木造は耐震性が低く、昨今の相次ぐ大きな地震の影響により、強度の高い素材で作られる住宅に人気が移ってきました。
また耐火性、遮音性も低く、特に木造アパートでは防音効果が低いことにより起こるトラブルが問題となっています。
そのうえシロアリに弱いこともあり、近年は木造よりも軽量鉄骨造や鉄筋コンクリート造へと需要がシフトしてきています。
特に近年、主流となりつつあるのが軽量鉄骨造の住宅です。
木造との違いを中心に、その特徴を見てまいりましょう。
軽量鉄骨造って何?木造との違いはどこにあるの?
木造住宅は木材で作られた家だとすぐに理解できますが、軽量鉄骨造とはいったいどういった家なのでしょうか。
まず鉄骨造とは、家の骨組みである柱や梁に鋼材が使用されているものをいいます。
「軽量」鉄骨造と「重量」鉄骨造の2種類があり、厚さ6mm以上の鋼材が使われているものを重量鉄骨造、6mm以下の鋼材が使われているものを軽量鉄骨造と呼んでいます。
6mm以下といってもほとんどが厚さ3~4mmの薄い鉄骨を使って建てられています。
確かに木造より強度はありますが、重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造に比べれば強度は劣ります。
それでも比較的安価で、短期間で簡単に建てられるために、現在大手住宅メーカーの作る新築物件のほとんどがこの軽量鉄骨造の家といわれています。
その建築方法は、昔のように現場で大工さんが一から作り上げていくものではありません。
大量生産された部材を使ってあらかじめ工場でユニットを組み立て、現場ではそのユニットを基礎工事がなされた土台の上に積み木のようにクレーンで積み重ねていきます。
そのため職人の高度な技術を要することもなく、工期は従来に比べ大幅に短縮され、かつ部材も安定供給されるためにコストが抑えられるのです。
しかも鉄骨なので地震に強いといえることが、木造の家との大きな違いといえます。
そのため近年の相次ぐ大地震の影響で、軽量鉄骨造の家の需要は増してきているのです。
確かに木材と鉄骨を比べたら、明らかに鉄のほうが強度がありますよね。
「地震が来ても鉄の家なので倒れない」と誰もが思います。
しかし実際は、木造と軽量鉄骨造の家と、耐震性においてそれほど大きな違いはないのです。
どうしてでしょうか。
軽量鉄骨造の家と木造の家の耐震性にそれほど違いがない理由
地震のような強い揺れに対し、木材は折れても鉄骨は折れず、せいぜい曲がる程度なので、軽量鉄骨造の家は木造の家に比べて倒壊の危険が少ないと誰もが思います。
しかし、家が倒壊するのは素材が折れてしまうことが原因ではなく、柱と梁の接合部分が崩れてしまうことによって倒れるからです。
軽量鉄骨造であっても、柱と梁の接合が甘ければ、木造と同様倒壊の危険性があるのです。
大切なのはどんな建築素材を使おうと、柱と梁の接合部分を強固にすることです。
現在、大手住宅メーカーは、地震に対して強い住宅を用意しています。
2×4(ツーバイフォー)と呼ばれる2×4インチの合板をつなぎ合わせて作る木造住宅は、耐震性が高いことで知られています。
木造だから地震に弱く、鉄骨だから強いという考えは、もはや通用しません。
したがって軽量鉄骨造も木造も、耐震性においては違いがないといっていいでしょう。
軽量鉄骨造と木造の大きな違いは通気性と断熱性
木造住宅の大きな特徴は通気性の良さです。
木材は湿気があると膨張し、乾燥すると縮みます。
まるで呼吸をするように自ら調節しているのです。
鉄にこういった性質はありません。
また鉄は木と違い熱伝導率が高いため、外の気温をそのまま内部に伝えてしまいます。
そのため軽量鉄骨造では、暑い夏は家の中も温められ、寒い冬は家の中も冷えてしまうのです。
特に冬は外気で冷やされた鉄が室内の温かい空気に触れて結露となり、カビの原因にもなってしまいます。
そのため住宅メーカーによって違いはありますが、軽量鉄骨造の家では断熱材が欠かせません。
また、エアコンのように空気調節のシステムも必須です。
湿度に関してもメーカーによって特殊な壁材を使い調節するなど、木造に劣らない品質を保つよう工夫されています。
そのため軽量鉄骨造と木造において構造的な違いはあっても、メーカーの工夫で通気性と断熱性に関しては差が出ないようになっているといっていいでしょう。
軽量鉄骨造と木造の耐火性に違いはあるのか?
一般的に木造住宅は火に弱く、鉄のほうが強いと考えられますよね。
しかし意外なことに、軽量鉄骨造の家は木造の家に比べ、火事に弱いといえるのです。
鉄骨は540度を超えると急速に強度が弱くなり、700度を超えると曲がるといわれています。
火事の場合、温度は1200度まで上がります。
そのため軽量鉄骨造の家が万が一火事になった場合、最初は良くても突然倒壊してしまう可能性があるのです。
一方、木材は燃えると炭になります。
木造住宅がいったん炭になってしまえば、そのままある程度熱に耐えていられるといいます。
したがって火事になって家が倒壊してしまう確率は、木造より軽量鉄骨のほうが高いといえるのです。
しかし近年は軽量鉄骨造の家でも耐火被覆材という火に強い薬品を吹き付けることで、木造よりも耐火性を高くしています。
そのため軽量鉄骨造と木造とでは耐火性にほとんど違いはないか、軽量鉄骨造のほうが耐火性が高くなってきているといっていいでしょう。
アパートなら軽量鉄骨と木造のどちらが防音効果があるか?
耐火性と同じように、木造のほうが軽量鉄骨造より劣ると考えられるのが遮音性です。
防音効果は、鉄筋コンクリート造⇒鉄骨造⇒木造の順で下がっていきます。
木材は通気性が良い分、音の通りも良いのですね。
この3つを比べると、鉄筋コンクリート造の遮音性が圧倒的に高く、鉄骨造と木造とでは大きな違いはありません。
特に軽量鉄骨造と木造とを比べると、ほとんど同じといっていいほどです。
なぜかというと、鉄骨も木材も使われているのは家の骨組みの部分であり、音の通り道である壁や窓には関係していません。
一方鉄筋コンクリート造の遮音性が高いのは、音の通り道である壁に直接コンクリートが使われ、音をふさいでいるからです。
断熱材など遮音性のある部材が壁に使われていたり、窓ガラスの機能や外壁材が強化されていない限り、軽量鉄骨造であろうと木造であろうと違いはないといえます。
それでも賃貸アパートなどの場合は木造であると生活音が筒抜けになってしまうことが多く、トラブルに発展しがちです。
選ぶなら軽量鉄骨造のほうが良いといいますが、防音効果をみるため内見時に壁をチェックすることをおすすめします。
コンコンと叩いてみて高い音がするなら、その壁は防音されていないといえるでしょう。
通常、壁は石膏ボードにクロスを貼っただけですが、防音対策のとられた壁なら石膏ボードの間にグラスウールが敷き詰められているか、石膏ボードが二重に貼られています。
そのため叩くと鈍い、低い音しかしません。
高く響く音がするなら中身が詰まっていない、音の通りやすい壁といえるのです。
軽量鉄骨と木造との違いはほとんどないといえる
木材と鉄骨という、素材そのものには大きな違いがあるのにもかかわらず、メーカーの開発と工夫により、軽量鉄骨造と木造は互いのデメリットを補完しあうような優れた住宅へと進化し続けています。
安くて住み心地がよく、地震や火事による倒壊の危険性の少ない、安心して暮らせる住まいに向けて、さらに研究が進むといいですね。