木造住宅の柱寸法を左右する要因とは?柱の基礎知識を知ろう

在来工法の木造住宅を建てる際、会社によって柱寸法が105mm角や120mm角など、寸法が違うことがあります。

この違いの理由のひとつは、経済性です。

「そんな理由で」と思われるかもしれませんが、家は人生で1回買うか買わないかという代物。

それだけに金額も大きく、売る側も買う側も経済性の良い物を適正価格で売買したいものです。

木造住宅の柱の寸法は経済性によって決まる!?

柱と梁を中心として組み立てる在来工法の木造住宅は、各ハウスメーカーや工務店によって柱の寸法が違います。

柱の寸法を決める要素のひとつは経済性です。

この経済性は、購入者から見た経済性ではなく、企業から見た経済性です。

2階建ての木造在来工法では、断面が105mm×105mm角の柱(3.5寸柱)と、120mm×120mm角の柱(4寸柱)が多く使用されます。

現在の在来工法の住宅では3.5寸柱が一般的です。

木材は立米単価で金額がほぼ決まります。

3.5寸柱と4寸柱では、断面積が違うため金額に1.3倍程度の違いが出ます。

柱にとりつく土台・梁・桁・間柱なども寸法を合わせます。

これにより建物全体では金額に大きな差が出てくるのです。

建物を建てるには柱以外にも沢山の要素があります。

木造躯体(柱や梁、土台など建物を支える部分)の金額、断熱材の仕様、外装・内装の仕上げ、住宅設備、電気・給排水工事費等々、数多くの金額の差があります。

また、会社を経営するための経費も含まれます。

それらを考慮し、売りたい金額バランスの中で、柱寸法は決定されるのです。

ただし、柱の寸法の基準は建築基準法に定められているので、それに合う寸法のものを使用します。

柱の寸法の基準については、次項でご説明します。

木造住宅の柱の寸法の基準になるもの

木造住宅では、柱は建物を建てる上で構造上主要な部分です。

前項でお伝えしたとおり、構造上主要な柱の寸法の基準は、建築基準法で定めてられています。

「地震の際に倒壊しない建物にする」という考え方で、建築基準法には木造住宅で使用できる柱の最低限の寸法(柱の小径)が定められています。(建築基準法施行令第43)

具体的な基準は

・横架材間距離に法律で定める数値を掛けた小径】

・細長比150以下

・3階建ての1階部分の柱は13.5cm以上

です。

これらの基準は、柱に荷重がかかった際、座屈による破壊を防ぐことが目的です。

上記を簡易に説明すると、「細長い柱は折れやすい」と言えます。

例を挙げると、プラスチックの定規を両端から押すと、クニッと簡単に曲がります。

この現象を座屈といい、薄い定規を柱に見立てると、「細長過ぎてすぐに折れる」と言えます。

木自体、プラスチックほどしなやかではなく、曲げに耐えることができないのです。

建築基準法で定められている最低限の基準は、大地震でも柱が座屈しずらい基準を満たしているということです。

木造住宅の柱の種類

木造住宅の中で使用する柱には、大きく分けて2種類あります。

建物の荷重を支え地震に耐える役割の柱(構造柱)とそれ以外の柱(雑柱)です。

構造柱はその名の通り、建物の構造に必要な柱です。

地震時に建物が倒壊しないように、耐力壁とあわせて建物全体を支える役割をします。

木造住宅の中でたくさんの柱が立っていますが、ほとんどは構造柱です。

たくさんの柱を使って建物を支えることで、1本あたりにかかる負担を減らします。

構造柱には建築基準法の「柱の小径」が定めてあり、最低限の柱の太さが設定されています。

雑柱の役割は、部屋の間仕切りや建具建てつけを良くするために使われます。

実際、なくても差し支えありませんし、使わない業者もあります。

太さの定めはありませんが、工事の都合上、構造柱と同じ寸法を入れる場合が多くなります。

上記の二つを見分けるには、構造用金物の有無を見ればおおよそ判別できます。

構造柱は重さを支えるだけでなく、地震時に起きる柱の「引き抜き」にも対応しなければいけません。

柱の引き抜きは構造用金物が抜けないように負担してくれます。

建築中の住宅で見分けるには、構造金物の有無を確認します。

木造住宅の柱の寸法は耐震性に影響するか?

木造住宅において耐震性はかなり重要です。

柱の寸法を変えると、どの程度耐震性に影響するのでしょうか。

実際のところ、在来工法では3.5寸や4寸の柱では耐震性の向上にほとんど寄与しません。

在来工法では、構造用合板や筋交いといった面で地震に耐える工法になっています。

柱は地震時に建物の重さを基礎に伝える役割を果たしますので、3.5寸柱でも耐えることができる計算です。

太い柱は、古民家に見られる「貫工法」であれば耐震性に十分寄与します。

1尺や7寸柱に差鴨居、あり壁、通し貫などで構成されていれば柱の曲げ耐力により耐震性を発揮します。

しかし、現在ではそれほど太い柱・梁を準備することが困難になりつつあります。

また、「在来工法」と「貫工法」では地震に対する考え方に大きな隔たりがあります。

「貫工法」では、地震後の壁の亀裂や建物のゆがみをある程度許容します。

そのため、「ゆがんだ建物は引き起こせばよく、壁は補修すればよい」ということを十分に理解してもらえる施主様でなければ使えない工法です。

木造住宅の通し柱だけ寸法が違う理由

2階建ての木造住宅には、家の四隅にあたる箇所に通し柱を入れるのが慣例です。

住宅を建てた方の中には、管柱を3.5寸、通し柱を4寸として設計された方もおられると思います。

これは、桁や梁の「仕口」を柱へ差し入れる形になり、仕口分の断面欠損を見込んでいるためです。

そのため計算上は3.5寸柱として計算します。

工事上の条件から言えば、柱の寸法はどちらかにそろえたほうが工事はやりやすくなります。

つまり、見た目4寸柱、計算上は3.5寸柱として扱っています。

通し柱が4寸柱だからといって必ずしも地震に強いというわけではありません。

家の四隅に配置されるので、真ん中にある柱と比べると床の重さは4分の1程度負担しています。

そのため、圧縮力だけで考えれば3.5寸の柱でも十分に耐えることができます。

ただし、負担する荷重が軽いため引き抜き力は他の柱より大きな力がかかります。

それが、隅にあたる柱にホールダウンやN値の大きな金物が使用されている理由です。

また、建築基準法では適切な金物補強を行えば通し柱とする必要はありません。

実際の工事のしやすさから通し柱にする場合が多いだけなのです。

木造住宅の柱寸法は3.5寸と4寸、どちらを選ぶべきか

木造住宅の柱寸法、3.5寸と4寸、選べるとしたらどちらを選ぶかは迷うところです。

おすすめするのは、4寸で、そのメリットは「自由度の差」です。

その「自由度」の一部をご紹介します。

・深いニッチを取れるようになる。

ニッチを作る際、少しでも深いニッチが欲しいときは有効です。

ニッチ裏の空間も余裕ができます。

「リモコンやコントローラー類が出っ張ってしまう」という不満も少なくなりますし、絵画や美術品を展示するときも比較的自由な位置で展示できます。

・断熱性能に余裕を持たせることができる。

二つの柱寸法の差はわずか15mmですが、断熱性能では大きな差です。

外気に接している壁全面のため、断熱性能が少しでもあがれば快適性も向上します。

15mm分の断熱性能が足りないために、高性能の断熱材に変え余分な出費が出てしまうということも防げます。

・電気配線、設備配管などを壁内に通す余裕が生まれる

「ここにコンセントが欲しい。」「ここに手洗いが欲しい。」など、計画していく中で欲しい物はたくさんでてきます。

しかし、電気配線や配管を通せなければその計画も実現できません。

特に電気配線は「あと10mmあればな~」という場面が多々あります。

柱の差は15mmですが、その差が持つ「自由度」が家づくりの幅を広げてくれます。

木造住宅の柱寸法には基準がある

木造住宅において、耐震性はかなり重要です。

耐震性は柱の寸法に大きく左右されるわけではなく、適切な金物補強をしているかなどが関わります。

また、「在来工法」と「貫工法」では地震に対する考え方に大きな隔たりがあるので、柱の寸法と併せて、ご自身の考え方に合う工法を選びましょう。