現在賃貸アパートにお住まいの方で、ペットに猫を飼っている方も多くいらっしゃるでしょう。
ペット可のアパートであっても、そうでないアパートであっても、退去の際は原状回復が条件となります。
猫を飼っている人の、実際の退去費用はどのくらいかかるのでしょうか。
また、費用を抑える方法などはあるのでしょうか。
くわしくお話ししていきます。
アパートの退去費用とは?
まずは、アパートの「退去費用」についてくわしくお話ししていきます。
退去費用とは、借主が利用していた部屋を退去する時に発生する費用です。
壁紙や床、天井など、借主の「故意・過失」によって傷ついた部屋の修繕に充てる費用となります。
どのくらい故意・過失の部分が大きいかが重要で、「意図的に部屋を損傷させた」と取られると、退去費用もその分高くなってしまいます。
賃貸アパートは契約の際に、「敷金」や「礼金」を不動産会社に支払います。
不動産会社によって違いはありますが、よく「敷金2ヶ月分、礼金1ヶ月分」などを耳にしますよね。
この「敷金」が、退去の際にかかる修繕費用に充てられますが、敷金だけで補えない場合、プラスして退去費用を負担しなければならなくなります。
しかし、「どこまでが故意」であるかの判断基準は非常に難しく、金銭も絡むため、トラブルに発展しやすいところです。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、以下のようになっています。
・壁に貼ったポスターなどの跡は借主負担
・引っ越しの際にできたキズはオーナー負担
この考えですと、猫の付けた傷は借主負担になる可能性が高くなります。
次項でくわしくご説明していきましょう。
アパートで猫が付けた傷は借主負担?
借主が意図的に付けた傷は、アパートを退去する際、借主が費用を負担しなければなりません。
猫などのペットがつけた傷も、ここに含まれます。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」には以下のように記されています。
・飼育ペットによる柱や壁紙などの傷・臭いは借主負担となる
猫がつけた傷が柱やふすまなどの建具についていた場合、上記に該当しますので、借主の負担となってしまいます。
日々の暮らしの中で、傷をつけてはいけない場所を猫に「しつけ」することも重要となるでしょう。
また、このガイドラインはあくまでも「ペット可のアパート」の場合に該当するものです。
ところが、まれにペット可ではないアパートで、こっそり猫を飼っている方もいるようです。
猫は泣き声が犬ほど響かないため、室内で飼いやすい傾向があるためでしょう。
しかし、賃貸アパートでペットを飼うことを禁じられている場合は、「用法違反」にあたるため、絶対にやめましょう。
猫のいるアパートの退去費用①「フローリング」
猫がアパートの部屋を傷つけてしまった場合、退去する際に修繕費用を負担しなければなりません。
ここからは、退去費用がどのくらいかかるのかをご紹介していきましょう。
猫が傷つけやすい場所は、「フローリング」や「壁紙」などが考えられます
まずはフローリングの修繕費用からご紹介しています。
猫の性格も関係しますが、よく動きまわるタイプの猫は、年中部屋の中を走り回っています。
飛んだり跳ねたりするため、フローリングは傷だらけになってしまうでしょう。
自然による経年劣化の場合は費用負担する必要はありませんが、明らかに猫が付けた傷が多い場合は借主負担となります。
そしてフローリングの修繕費用の相場ですが、「1㎡あたり3,000~8,000円」と割高です。
これが、例えば、6畳(9.72㎡)の床をすべて直すとしましょう。
すると、およそ30,000~75,000円もの修繕費用がかかってしまうことになります。
12畳の部屋であれば、単純にその倍はかかってしまうでしょう。
アパートでペットを飼うということは、「大きな出費がある」というリスクを事前に頭に入れてから、部屋を借りるようにすることが必要と言えます。
猫のいるアパートの退去費用②「壁紙」
続いては、アパート退去の際にかかる、「壁紙」の修繕費用のお話をしていきましょう。
猫は、爪で引っかいたり、ものに噛みついたりする習性があります。
猫は主に以下のような理由うで爪とぎをしているとされます。
・爪が伸びてかゆい
・飼い主の気を引きたい
・ストレスが溜まっている
・研ぎやすいものが目の前にある
爪研ぎ自体を止めさせることは難しいので、壁紙の前に家具を置いたりして、なるべく傷がつかないように対処しましょう。
万が一壁紙を傷つけてしまった際の貼り換えの費用ですが、「1㎡あたり1,000円」くらいとなります。
壁紙は傷が付いている場所を中心に貼り替えるため、それほど費用はかからないと考えがちですが、実はそうでもありません。
壁紙に染み付いた猫の「におい」を消すため、部屋の壁紙をすべて貼り替えることがあるのです。
これについては壁紙だけでなく、先ほどのフローリングにも言えることとなります。
においの対策については、次項でくわしくお話をしていきましょう。
アパートでの猫の傷・におい対策
アパートの退去費用を抑えるためには、日々の生活の中で、猫の傷やにおいの対策をしっかりとることが重要です。
以下でそれぞれの対処方法をご紹介していきます。
●傷対策
フローリングのままで生活すると、猫を飼っていなくても傷は付きやすいです。
そのため、フローリングの上にカーペットやラグを敷いて対策しましょう。
コルクマットやジョイントマットであれば、汚れた際に部分洗いできて便利です。
猫が走り回った際の防音効果も期待できるでしょう。
●におい対策
猫や犬はマーキングといって、縄張りを印すために糞尿でにおい付けをする習性があります。
部屋の中でマーキングをしたら、すぐに拭きとってにおいが残らないようにしてください。
また、猫はよく毛玉や食べたものを吐き戻してしまいます。
これも独特な猫のにおいの原因となりますので、見つけたらすぐにきれいに掃除しましょう。
汚れたらすぐにきれいに拭くことが、においを染み込ませないポイントとなります。
アパート退去の際は「原価償却」を考慮!
賃貸アパートには「原価償却」というものが存在します。
これは、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によるもので、経年劣化によるアパートの建具などの「価値が下がった分を考慮する」というものになります。
例で言うと、アパートの壁紙の場合、耐用年数を「6年」とする決まりがあります。
これにより、6年以上経過している壁紙の場合、価値は「1円」にまで下がるのです。
賃貸アパートに住み始めて、「3年」で退去したとします。
壁紙の修繕費用が40,000円だと仮定して、3年で退去すると、壁紙の価値は半分まで下がったことになります。
すると修繕費用は、以下のようになります。
・40,000円×0.5(50%)=20,000円
これが1年で退去した場合はどうでしょうか。
・40,000円×0.83(83%)=33,200円
このように、退去した時期によって、修繕費用大きな開きがあるのです。
猫が壁紙を傷つけたとしても、6年以上経過していたら、減価償却により修繕費用が発生しないこともあり得るのです。
猫のいるアパートを退去する際は修繕費が必要
アパートで猫を飼っていると、床や壁紙を爪で傷つけたり、においが移ったりして、きれいな状態を保つのはなかなか難しいでしょう。
退去費用は「敷金」から支払われますが、破損場所が多いとプラスして費用を負担しなければなりません。
ペット可のアパートであっても、傷をつけて良いということではありません。
退去の際の負担を軽くするためにも、日ごろから猫への対策をとって生活しましょう。