墓地・霊園を新設する際には、「地目変更」も欠かせない手続きの1つです。
「地目変更」とは、土地の登記を変更する手続きで、住宅の土地や畑などはもちろん、お墓の土地にも関わってきます。
墓地経営を検討する方にとって、地目変更は非常に重要な手続きなので、必ず知っておきたいところです。
この記事では、墓地・霊園に必要な地目変更などの手続きについて、詳しくご説明していきます。
墓地新設に欠かせない地目変更とは?
そもそも地目変更について、その言葉さえ初耳な方もいるのではないでしょうか。
地目変更は、墓地や霊園を建設する上では必ず知っておきたい手続きなので、これを機にしっかりと理解しておきましょう。
まず、地目とは、不動産登記法で定められている土地の種類のことです。
全ての土地は宅地や田、畑など23種類の地目に分けられており、墓地もその1つに含まれます。
また、冒頭でもお伝えしたように、地目変更とは「地目を変更する登記」を指します。
例えば、売却した土地の登記地目が畑であっても、土地の現況が宅地と認められれば、地目を宅地に変更する必要があります。
ちなみに、土地の地目認定は、不動産登記法を下に土地全体の用途や現況から判断され、決定されます。
墓地を新設したい!手続きの流れ
墓地・霊園の新設には、「墓地・埋葬に関する法律」によって細かい規則が定められているため、それに則った手続きを踏まなければなりません。
基本的には、役所での事前協議から墓地経営許可の申請を行う必要があります。
では、さらに地目変更について踏まえながら、それらの必要な手続きの流れを大まかにご説明していきましょう。
①事前協議(市民福祉課)
まず、墓地・霊園の設置を検討する場合、役所と事前協議をしなければなりません。
と言うのも、墓地の経営許可は、法律で定められた設置条件に沿って判断されます。
また、自治体によっては、設置条件に墓地の周辺住民の同意が必須である場合があります。
これについては、事前協議の設置条件に明記されている場合があるので、必ず確認しておきましょう。
②分筆登記(法務局)
分筆登記とは、1つの土地を複数の土地に分割するもので、後々地目変更を行う上で重要な手続きです。
墓地・霊園の新設には、お墓を設置する土地以外にも、通路や休憩所などの共用施設が必要なため、地目が「墓地」だけでは収まりません。
そのため、1つの土地の中で、土地の地目を用途に合わせて分割する分筆登記が必要になります。
③墓地経営許可申請提出、許可書発行(市民福祉課)
事前協議にて設置環境が整えば、改めて墓地経営許可申請を行います。
許可が通れば墓地経営許可書が発行されます。
④工事着工・完了
⑤墓地への地目変更(法務局)
以上の順に沿って、墓地新設の申請を行っていきます。
地域によっては順序が異なる場合があるので、それぞれの役所や法務局に確認してみましょう。
墓地新設には「農地法」の手続きも
前項では、墓地・霊園の新設に関わる手続きの流れについてご説明してきました。
さらに、墓地を新設する上では、「農地法」の手続きが同時に必要な場合があります。
それは、建設する土地が元々は「農地」であった場合です。
「農地」から「墓地」に地目変更する場合、「農地法」においては、通常の土地の地目変更に加え、農地転用届申請手続きも求められます。
この農地転用申請の手続きは、一般的に墓地経営許可申請を提出する際に同時に行うもので、これは農業委員会へ提出します。
この両者の申請が確認されれば、晴れて許可書が発行されます。
このような手続きも、地目変更を行う地域によって変わってくる場合があるので、あらかじめよく確認しておくことが必要です。
地目変更はどのように手続きをする?
実際に墓地の地目変更を行う際には、法務局に対して以下の3つの書類を提出する必要があります。
それぞれご説明していきましょう。
①登記申請書
登記申請書には、主に以下のような記載が求められます。
・土地の所在地
・地番
・変更前後の地目
・変更前後の地積
・申請人の詳細
・登記の目的
ちなみに、申請書は法務局のサイトからダウンロードすることができます。
不動産登記法に即した記入が求められるため、あらかじめよく調べた上で記入漏れのないようにしてください。
②土地の案内図
土地の案内図は、法務局の職員が円滑に現地調査を行えるように、分かりやすく作成します。
③土地の公図の写し
土地の公図とは、登記簿に記載されいるその土地の地図を指します。
各地の法務局などで直接取得することはもちろん、サイトからダウンロードすることも可能です。
以上の3点は必ず不備がないように準備し、法務局へ提出してください。
墓地の廃止はどのような手続きが必要?
では、もし墓地・霊園の経営が困難になり、やむなく廃止しなければならなくなった場合、どのような手続きをすれば良いのでしょうか。
墓地廃止に関わる手続きは、以下の通りになります。
・墓地使用者の承諾
墓地廃止となった場合、現時点でお墓を建てている利用者は、他の土地にお墓の引っ越し(改葬)をしなければなりません。
そのため、まずはその墓地・霊園の使用者に対して詳細を説明し、承諾を得る必要があります。
・墓地廃止許可申請書の提出
墓地・霊園の新設と同じく、墓地廃止の場合も法律に沿った規定の下に手続きを行います。
そのため、行政に対して許可を申請する必要があるため、墓地廃止許可申請書を提出してください。
墓地利用者の承諾を得ていれば、ほとんどの場合、許可申請は受理されます。
・墓石の撤去
墓地の撤去は、一般的に石材店に依頼します。
ただし撤去前には、お墓の引っ越しのための改葬許可の申請や、墓じまいなどをしなければなりません。
また、上記の手続き以外にも、墓地新設と同様に地目変更が必要になってきます。
次項で詳しく見ていきましょう。
墓地廃止にも地目変更が必要
前項では、墓地・霊園廃止のために行う手続きについてご説明してきました。
では、墓地廃止に関わる地目変更についても見ていきましょう。
墓地・霊園が廃止となった場合、その土地の地目も「墓地」から変更しなくてはなりません。
この場合も新設のときと同様に、行政の許可が必要になります。
土地の地目変更は、今後のその土地の用途によって手続きが変わってきますが、提出する書類は新設の地目変更時と同じ、「登記申請書」「公図の写し」「土地の案内図」の3点の用意が必要です。
また、地目変更の費用は、墓地・霊園の新設、廃止問わずいずれもかかってきます。
一般的に、登記簿に記載されている土地1つ分に対し、およそ5万円前後が相場となっています。
ただ、墓地の場合、複数の地目変更を行う必要があるので、さらにコストがかかります。
また、地目変更の登記には、土地家屋調査士への依頼が推奨されているので、それを考慮した費用を準備しておく必要があります。
地目変更で悩んだらまずは役所に相談しよう
これまでに、墓地・霊園に関わる手続きや、地目変更についてご説明してきました。
墓地新設はもちろん、廃止の際にも必ず行う手続きなので、墓地経営を検討している場合は必ず覚えておく必要があります。
また、地目変更だけでなく、法律に則ったプロセスを踏んだ様々な手続きも行うため、今回の記事を参考に、まずは役所によく相談するのがベストと言えますね。