戸建を建てるときや外壁リフォームをする場合、昨今はサイディングを用いて仕上げる工法が主流になっています。
サイディングには多様な柄や素材感のものがあり、自分好みに外壁を仕上げることができますね。
ところで、「日本家屋風に木目調のサイディングを縦張りし、上部は白壁風に」などとリクエストすると、業者さんに反対されてしまうことがあります。
いったいどこに問題があるというのでしょうか。
人気の外壁仕上げ材サイディングとは
皆さんはサイディングという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
建築関係に携わっている方はご存知でしょうが、そうでなければ、ピンとこない方が多いかもしれません。
しかし、誰しも必ず目にしたことがあるものです。
実は戸建の多くに使われている外壁材をサイディングと言います。
昨今は、戸建を立てる際に、約7割がサイディングを使用しているというデータがあり、今の外壁仕上げ材の主流と言っても差し支えないでしょう。
外壁の仕上げ方には、湿式と乾式の2種類があり、昔ながらのモルタルや白壁などの塗り壁、またタイルなどを湿式と言います。
そして、サイディング仕上げは乾式になります。
このサイディングは、一定のサイズのボードを外壁に貼り付けていく工法で、塗り壁などに比べて工期が短くて済み、工事価格も安く済みます。
また、耐水性や耐天候性に優れているため、塗り壁のようにひび割れもしません。
なおかつデザインが豊富なため、自分好みの外壁に仕上げることができるのも人気の理由でしょう。
このように、多くのメリットを持つサイディングですが、木目調を縦張りで使用する場合には構造上の問題を含んでいます。
木目調のサイディングを縦張りにするのは危険?
サイディングは主に4種類あり、窯業系、金属系、樹脂系、木質系に分けられます。
窯業系サイディングは、セメント質のものと繊維質を混ぜ合わせた素材の板で、防耐火性に優れています。
金属系サイディングは、アルミニウムやステンレスなどの鋼板が使用され、金属は水を吸わないので、特に防水性に優れています。
次の樹脂系は、劣化しにくく塩害や凍害に強く、耐天候性に優れていて、軽いのもその特徴です。
最後の木質系ですが、その名の通り、天然木に塗装をして仕上げたもので、耐熱性能に優れています。
また、元が天然木なので木目調がおしゃれで人気もありますが、水に弱いのがデメリットで、こまめな再塗装やメンテナンスが必要となります。
この木質系の木目調を縦張りにするということは、実はサイディングの中でも最も水に弱い種類に、さらに耐水性を弱める施工を施すことになります。
というのも、サイディングは横張りすると上下間で重なるのですが、縦張りではフラットな面が密着するだけで、耐水性が弱まってしまうからです。
雨水などは上から落ちてくるので、横張りで下段のボードの端を上段のボードの下に入れ込むように重ねれば、壁の中に水が侵入することはありません。
しかし、縦張りのフラットな密着のみでは、何年か後に継ぎ目から雨水が浸入する恐れがあります。
サイディングの縦張りは可能だがデメリットも
このような事情を知る大工さんなどは、木目調に限らずサイディングの縦張りには、難色を示すことがあります。
顧客のためはもちろんですが、大工さんも、後でクレームを言われても困るからです。
ただ、メーカーのサイディングのカタログなどには、縦横どちらでも使用可能などと書かれています。
メーカーは、サイディングを売らなければ成り立ちませんので、デザインや利便性を宣伝しても、デメリットは敢えて強調しません。
そのため、事情を知らない素人は、デザインに執着し、縦張りを主張したりするのです。
しかし、現場をよく知る建築士や大工さん、リフォーム業者さんなどは、縦張りのデメリットをよく知っています。
見栄えよく外壁仕上げをしたとしても、家の大切な構造である壁材が傷んでしまっては元も子もありません。
知らないうちにサイディングの継ぎ目から壁の中に水が浸入し、壁材がひび割れたりカビたり、あるいは腐ってしまったら、一大事ですよね。
このようなことから、特に木質系で木目調のサイディングの縦張りなどは、プロには敬遠されています。
ですが、絶対に木目調のサイディングを縦張りにするのは無理かというと、そうでもないようです。
縦張りでは木目調サイディングの継ぎ目をしっかりシーリングする
サイディングボードの大きさは、規格が決まっていて、455ミリ×3030ミリというサイズが一般的です。
しかし、外壁は家の大きさによってバラバラで、もちろん規格などはありません。
そこで通常は、外壁のサイズによって数枚張り合わせて、いらない部分をカットして使用します。
つまり、木目調に限らず、一部を除いてどのサイディングを使っても、継ぎ目は必ずできてしまうものなのです。
そこで、その継ぎ目をシーリングなどで埋める作業を行います。
シーリング材は、合成樹脂や合成ゴムなどのペースト状の材料で、外装のジョイント部やサッシ回りなどに充填して、隙間を埋めていきます。
もし、木目調のサイディングを縦張りしたとしても、このシーリングをしっかりしていれば、すぐにどうこうということにはなりません。
ただ、木質系で木目調のサイディングは、他のサイディングに比べて防水性に劣ることから、サイディングの塗装がはがれる前に再塗装しなければなりません。
そして、シーリングは、サイディングよりもさらに劣化が早いと思っておいた方がよいでしょう。
つまり、こまめに補修やメンテナンスを行えば、たとえ縦張りをしていても、内壁への水の侵入を防ぐことが可能であるということです。
同じ木目調でも木質系より窯業系サイディングで
ただ、そもそもサイディングは、塗り壁などの湿式の外壁仕上げに比べて、耐水性がよく、劣化も遅く、メンテナンスに手がかからないのがメリットです。
せっかくなので、できる限りそのメリットを生かしたいものですよね。
そこでおすすめなのが、木質系サイディングではなく、窯業系サイディングの木目調のものです。
窯業系サイディングは、塗装技術が日々進化しており、天然木の木目調に近いリアルな質感の木目調を実現しています。
しかも、木質系サイディングが天然木を素材としているのに対して、窯業系サイディングの素材はセメント質と繊維質で、より耐水性に優れています。
他にも、耐火性や、最近頻発している地震にも強い特性があります。
また、最近は、サイディングが汚れにくくなるようにコーティングを施したものも販売されており、雨で汚れを洗い流せる工夫がされています。
もちろん、デザインにこだわるなら、木質系サイディングは本物の木なので、ただの模様である窯業系サイディングはそれには及びません。
ただ、木目調と縦張りの両方にこだわるなら、検討する価値はあると思います。
サイディングのメリットを生かしながら、できる限り好みのデザインに近づけるという点で、一度考えてみてはいかがでしょうか。
耐水性を補うため縦張りの際は中間水切りを
また、縦張りにこだわる場合、窯業系サイディングの木目調を使用するだけでなく、中間水切りなどを使用するという方法もあります。
水切りの立ち上がり部は、上になるサイディングの下に入るので、上のサイディングを伝わった雨水は、水切りで下のサイディングの上に流れるという仕組みです。
ただ、継ぎ目をシーリング仕上げするのに比べると、中間水切りの分だけ建築価格が上がってしまいます。
しかし、シーリング仕上げのみにしてしまうと、シーリングが劣化したときに、その部分からサイディング裏に水が入り込んでしまいます、
それによって壁の中が水で侵食された場合の修理費を考えると、水切りは取り立てて高い買い物とは言えないのではないでしょうか。
要するに、最初に予防として中間水切りに予算を使うか、こまめにシーリングを補修するのに予算を使うかしなければ、家は守れないということです。
確かに、サイディングは家の見栄えを左右するもので、好みのものを選びたいですよね。
ただ、家と違ってサイディングは一生ものではありません。
7~8年程度で、軽いものではシーリングの補修や、表面塗装のはがれを再塗装するなどのメンテナンスが必要となってきます。
そして、家の寿命はその何倍もあるので、家にとっての最善の方法を考えて、外壁の素材や仕上げ方を選んでみてはいかがでしょうか。
住宅街のサイディング施工例を参考に
今回は、外壁仕上げのサイディングについて学んできましたが、一歩外に出ると、住宅街にはさまざまなサイディングが見受けられます。
また、これがシーリング仕上げで、こっちが中間水切りなどというように、実際の施工例を実際に見ることもできますね。
それらを参考にして、家にとって最善で、好みに合った個性豊かなサイディングや施工方法を見つけていただきたいと思います。