空室対策として、家賃を5000円下げる交渉に応じることを余儀なくされた大家さん。
収益を計算すると、大きな差があることに愕然とすることでしょう。
そこで、大家さんが家賃の値下げをせずに、空室を解決する方法がないか、探してみました。
新規入居者の家賃を5000円下げると住人との差が生まれる
空室の部屋の内見も済み、あとは契約だけというとき、入居希望者から「家賃を5000円下げてくれれば考える」と、家賃の値下げを要求されたことはありませんか。
入居者にとっては、少しでも安く契約したほうが、良いに決まっています。
また、大家さんからしてみても、長期間の空室は避けたいものです。
そのため、入居してもらえるならと、値下げ交渉に応じる人もいるでしょう。
空室であることで発生する損失を考えれば、家賃を下げるのも、ひとつの方法です。
しかし、家賃の値下げに応じることで、起こるリスクはないのでしょうか。
考えてみましょう。
まず、資産全体を下げるリスクが考えられます。
1棟のアパートに10部屋あり、1部屋のみ空室で5000円家賃を下げると、以前から住んでいる9部屋の住人と、当然ながら差ができてしまいます。
その差は、1年間で6万円です。
同じアパートに住んでいるにも関わらず、新しい入居者のほうが家賃が安いことが明らかになったら、先に住んでいる人は、どう感じるでしょうか。
不満に感じ、近所トラブルの原因になり、退去へと向かってしまう可能性もあります。
しかし、周りの住人の家賃も下げようとすると、所有しているアパート全体の家賃が下がることになります。
そして、結果的に、資産価値を低くしてしまう要因になってしまうのです。
5000円家賃を下げると市場価値が下がる?
家賃を下げるリスクとして、市場価値を下げる要因になることも考えられます。
5000円値下げした家賃のまま、新たな住人を募集すると、「この辺りのエリアの家賃相場はこの金額が妥当なんだ」という勘違いが生まれます。
すると、新たに、その家賃で入居条件を相談してくることもあるのです。
そのままでいると、5000円値下げしたのにも関わらず、さらに値引き交渉をされる可能性が出てきてしまいます。
その結果、市場価値を下げることになってしまうのです。
先述したように、新規の住人の家賃を5000円下げれば、他の住人の家賃と差が生まれてしまいます。
例えば、新規に合わせて、全体の家賃を値下げしたとしましょう。
10部屋あるとすれば、1年間で60万円の差が生じます。
住人としては、嬉しい限りでしょうが、経営者としては、大きな損失になります。
こういったことを踏まえて、家賃の値下げをするのかしないのかを、判断していきましょう。
家賃を下げずに他の物件との差別化
毎月支払う家賃を5000円下げる行為は、他の住人の不満や、市場価値を下げる行為になりかねません。
では、家賃を下げずに、できる手立てはあるのでしょうか。
◎敷金・礼金・保証金を下げる
5万円の家賃の住居と仮定します。
この住居の敷金を、通常家賃2ヶ月分のところ、1ヶ月分に値下げをする方法です。
敷金10万円掛かるところが、5万円の支払いで済むとなれば、新たな入居者にもお得感が得られるのではないでしょうか。
初期費用を、なるべく抑えたい人にも、助かります。
大家さんからしても、家賃5000円に下げたときの年間の損失は6万円でしたが、敷金や礼金なら5万円で済むのです。
また、敷金に限っては、入居者が退去するときに返すお金です。
そのため、敷金1ヶ月分を引いたとしても、大家さんには損失がありません。
家賃の値下げは既存の住人との差額が生じて、クレームになりやすいですが、敷金や礼金の値下げをして不満を言ってくる人は、おそらく少ないことでしょう。
デメリットは、家賃滞納時に担保になるお金がないので、家賃滞納が起こった場合は、リスクが大きくなることです。
また、市場価値が低いエリアだと、敷金0円・礼金0円の物件が多く存在している場合もあり、そもそも比較になりません。
他の物件との差別化を図るなら「今だけ」「今回だけ」などと、特別感を出すことをおすすめします。
選べる家賃で入居者を呼び込む
さらに他の物件と差別化を図り、入居者を呼び込む方法として、家賃のプラン化もおすすめです。
入居者に、あらかじめ選べるプランを用意するのです。
これまでと同じように、家賃5万円のアパートで2年間契約と仮定してお話します。
★Aプラン
家賃値下げなしで、礼金もなし。
5(万円)×24(ヶ月)=120万円
★Bプラン
家賃3000円値下げで礼金1ヶ月。
4.7(万円)×24(ヶ月)+5(万円)=117万8000円
★Cプラン
家賃5000円値下げで礼金2ヶ月。
4.5(万円)×24(ヶ月)+10(万円)=118万円
このように、家賃と礼金を組み合わせるだけで、割引の差額が大して変わらなくなります。
世の中には、色々な考えや状況の人がいます。
毎月の家賃を下げて欲しい人もいれば、初期費用をなるべく抑えたい人もいるのです。
こうした選べるプランであれば、住人も納得したうえでの契約になるはずです。
納得した契約なら、短期で退去といったことも、防げるのではないでしょうか。
家賃5000円値下げせずにお得感を出す
先ほどご紹介したように、入居者が喜んでくれるサービスを提案することで、家賃の値下げの代わりになることもあります。
大家さんからしたら、家賃を5000円値下げするよりも、他の方法で解決したいところですよね。
では、入居者が喜んでくれるサービスとは、どんなことでしょうか。
例えば、引っ越しに掛かる費用を補助したり、エアコンの導入、家具のプレゼントなどです。
2年契約で、家賃を5000円下げる交渉を持ち掛けられた場合、損失になるであろう12万円分に等しいサービスを行うのです。
この方法は、大家さん次第では、差額を利用して得ができる方法でもあります。
先ほどの例で言えば、「引っ越し費用を5万円まで補助しますよ」としても、大家さんは7万円もの差があるので、得になります。
エアコンの導入や家具のプレゼントも、同じことが言えます。
先手をうつことで、値下げする影響を最小限に抑えられるのです。
ただし、入居してすぐに退去されては、赤字になってしまいます。
一定の期間住むことを条件にして、契約しましょう。
フリーレントと家賃を下げたときの差
敷金や礼金が要らない物件が多くあるなか、「フリーレント」も多く見かけるようになりました。
フリーレントとは、入居してから1~2ヶ月の間、家賃を無料にするといった集客方法です。
引っ越しには、なにかとお金が掛かります。
そんな入居者にとって、フリーレントは魅力的なので、フリーレントを活用したいと考えている人も多いはずです。
そして、家賃5000円の値下げよりも、絶大なインパクトがありますよね。
また、これは一種のキャンペーンのようなものです。
一度、言い切ってしまった家賃の値下げを撤回するのは困難です。
ですが、フリーレントなら、次回からやめることもできるのです。
仮に、家賃5万円で2年間の契約だとします。
家賃5000円値下げをすると、2年間で12万円です。
ですが、2ヶ月のフリーレントで契約すると、2年間で10万円の割引で済みます。
差額にして2万円です。
そして、2年間の契約を更新した場合も考えてみましょう。
値下げの場合は、家賃は変えられませんから、通常より4年間で24万円の損失になります。
しかし、フリーレントならば、入居の2ヶ月間だけのキャンペーンで済みます。
そのため、実質値下げしたのは10万円だけとなります。
家賃を下げたくないのであれば、こうしたフリーレントを活用する方法もあります。
値下げの仕方を工夫して収益を確保しよう!
大家さんにとって、死活問題になりかねない値下げですが、工夫さえすれば解決することができます。
入居者にとっても、大家さんにとってもお得な方法で、値下げ交渉に応じてみてください。
双方が納得する方法なら、長期の契約にも繋がり、意味のある値下げになることでしょう。