もったいない!家賃の引き落とし手数料はなくせるのか?

アパートの家賃を自動引き落としで支払っている方の中には、家賃に手数料がかかっている方もいらっしゃることでしょう。

場合によっては、月に1000円近くの金額が手数料だけで取られてしまい、もったいないと感じている方も多いのではないでしょうか。

今回は、なぜ家賃の引き落としに手数料がかかるのか、またそれをなくすことができないのかを解説していきます。

引き落としは家賃以外にも手数料が発生している

ご存知の方も多いかと思いますが、「引き落とし」とは日数と金額を指定することで、自動的に指定口座にご自身の口座からお金が支払われるといったものです。

しかし、これは「振込みを銀行がやってくれる」ということなのです。

振込みの場合は、振込手数料があることはよく知られていることですよね。

つまり、引き落としも振込みと同じ手順で行われているため、引き落としでも振込み同様手数料が発生しているのです。

ガスや電気、水道料金を引き落としにすると手数料がかからず、金額が安くなることもあるのに対し、家賃はなぜ引き落としにすると手数料がかかり、金額が高くなるのでしょうか。

ガス会社や電力会社、水道局は引き落とし手数料を負担してくれています。

ガスや電気料金を引き落としにしているときも手数料はかかっているのですが、それは相手方の会社が負担しているため消費者には請求が来ず、気付かないだけです。

家賃だけに引き落とし手数料がかかっているわけではないのです。

なぜ引き落とし手数料を会社が負担するのか

仮に、家賃が50,000円の場合、特段の但し書きがない限り、引き落とし手数料を含めずに家賃50,000円を支払わなければなりません。

民法上ではアパートの賃貸は賃貸借契約であり、契約を成立させるためには、契約者は振込みや引き落としなど支払方法の手段を問わず、支払の義務を履行しなければなりません。

民法上、債務者(この場合入居者)は債権者(この場合大家さん)の下に50,000円をしっかり届けなければ債務履行にならず、50,000円から500円の手数料を引かれた49,500円を支払うのでは、債務履行と認められるには不十分ということになります。

アパートの賃貸の場合、大家さんが手数料負担を認めていない限りは、契約者が引き落とし手数料を負担することになります。

では、なぜガス会社や電力会社、水道局はわざわざ手数料を負担してくれるのでしょうか。

これは、管理の手間を減らすということが、大きな意味として挙げられています。

電気やガス、水道といったライフラインは、全ての世帯が利用しています。

当然、契約者は莫大な数にのぼり、その集金と顧客管理を全て各会社が独自で管理することが困難だからです。

もしできたとしても、莫大な作業量と人件費を負担しなければなりません。

よって、ガスや電気、水道のように莫大な契約者がいる会社は、引き落とし手数料を負担してでも顧客の支払を簡略化された手順で管理できることを望んでいます。

引き落とし手数料を負担する意味があるからこそ、ガス会社や電力会社、水道局は引き落とし手数料を負担しているのです。

大家さんが家賃を管理できれば引き落とし手数料は不要?

前項で、引き落としの仕組みと手数料負担の意味をご説明しましたが、ここからは、引き落とし手数料を削減、免除できるかについて考察します。

これまでのお話を踏まえると、引き落としは管理の簡略化という点で大きなメリットがあることをご理解いただけたと思います。

逆にいえば、ご自身で契約者の家賃を管理できていれば、引き落としでなくてもよいといえます。

「大家さん」といっても、いくつも物件を持っていたり、数十世帯が入居可能な物件を持つ大家さんや、数部屋の家賃収入を得ているだけの大家さんなどと、その管理物件の数はまちまちです。

物件が多い大家さんは、全ての入居者の振込みを確認するのが負担なこともあり、管理会社に頼んで家賃の支払を一括管理してもらい、まとめて送金してもらう手順をとることが多いのです。

大手不動産会社所有の物件や、管理会社に家賃管理を委託している大家さん所有の物件の場合、入居者の希望で「自分だけ別で払いたい」といったとしても難しいでしょう。

しかし、家賃の管理を自分で行っていたり、所有物件の少ない大家さんの場合は、不動産屋さんの相談次第で引き落としから振込みなど、別の料金支払方式の相談に乗っていただけることもあります。

振込手数料をもったいないと感じている方は、不動産屋さんに頼んで大家さんに引き落とし以外の支払方法を相談してみましょう。

家賃を振込みで支払うと引き落としより手数料は安い?

大家さんとの交渉次第では、引き落としで払っていた家賃を別の支払方法に変更してくれる場合があることをお話しました。

では、家賃の引き落とし時と比較して、振込みで支払う場合手数料はどうなるのでしょうか。

2018年現在、主な金融機関の振込手数料は以下のようになっています。

(個人所有の普通口座のキャッシュカードを使っての振込みという同一条件での比較)

●ゆうちょ銀行
同行での振込み:支店を問わず月5回まで無料
他金融機関への振込み:振込金額が50000円未満の時は216円、50000円以上で432円

●三菱東京UFJ銀行
同行同一支店の振込み:一律無料
同行他店への振込み:一律108円
他金融機関への振込み:振込み額が30000円未満なら270円、30000円以上なら432円

●三井住友銀行
同行同一支店の振込み:一律無料
同行他店への振込み:一律108円
他金融機関への振込み:振込み額が30000円未満なら216円、30000円以上なら432円

●みずほ銀行
同行同一支店の振込み:キャッシュカードで行えば一律無料
同行他店への振込み:振込み額が30000円未満なら108円、30000円以上なら216円
他金融機関への振込み:振込み額が30000円未満なら216円、30000円以上なら432円

これを見てお分かりいただけるように、どの銀行も同行同支店での振込み手数料は無料になります。

大家さんが同じ物件や近所に住んでいる場合は、大家さんも近くの銀行を指定口座にしていることが多いため、振込みでの入金が可能であれば、ぜひ交渉したいところです。

家賃の引き落とし手数料が割高になる理由

前項で、メガバンクのそれぞれの振込手数料を比較していきました。

しかし、それ以上の引き落とし手数料を請求されている方もいるかもしれません。

引き落とし手数料は、最大で毎月700~800円ほど取られているという報告例もあります。

これはなぜなのでしょうか。

理由はいくつかありますが、一番多いのは大家さんの指定口座の銀行が借主と違う金融機関であり、なおかつ手数料の高い銀行である場合です。

例えば、みずほ銀行を例にとると、口座引き落としのルールは以下の通りです。

同行同一支店への引き落とし…一律0円
同行他店への引き落とし…引き落とし額が30000円未満の時は108円、30000円以上なら324円
他金融機関への引き落とし…引き落とし額が30000円未満の時は432円、30000円以上なら648円

ジャパンネット銀行の場合は、引き落とし額は以下の通りになります。

同行内の引き落とし…一律54円
他金融機関への引き落とし…引き落とし額が30000円未満の時は172円、30000円以上なら270円

大きく値段が異なるのが分かりますよね。

このように、家賃などの引き落としは、相手の使用する金融機関によって大きく手数料が変動してしまいまうのです。

口座引き落としは本当に必要か確認して交渉しよう!

家賃を支払う際に手数料を抑える方法は、ネット銀行を使ったり大家さんと同じ金融機関の口座を作って振り込むなど、方法はいくつかあります。

しかし、その支払い方法を大家さんが認めなければ、いくら方法があっても使えません。

先述の通り、大手の管理会社や複数物件を抱えるオーナーの場合は特に管理が混乱するため、支払様式の変更の相談には乗ってくれないことが多いです。

念のため、賃貸契約を結んだときに不動産屋さんと交わした賃貸借契約書を確認しましょう。

契約書に家賃の支払い方法に対して何の取り決めも記載されていないのに、大家さん側が「家賃の支払方法は引き落としに限定する」のような強要をした場合は、借主への強制力はありません。

よって、断られたとしても、借主は支払方法をわざわざ高い口座引き落としにしなくてもよいというわけです。

交渉の前に賃貸借契約書を確認し、支払方法の約款がないかを見てみましょう。

約款がなければ交渉することができます。

逆に、部屋を借りる際には不動産屋さんに確認して、家賃の支払い方法についての取り決めがあるかどうかを確認しておくのが確実です。

賃貸借契約書を作成される前ならまだお互いに話し合いがしやすい状況ですので、手数料が発生するか不安なときは、成約前に確認しておいた方がよいでしょう。

家賃の引き落とし手数料は回避しにくい

家賃の引き落とし手数料は、大手不動産会社や管理会社、物件所有の多い大家さんなどの物件では、管理が困難になるため回避することはやや難しいです。

そして、そのような会社は抜かりなく、賃貸借契約の時点で支払方法を指定している場合があります。

契約に盛り込まれると変更は困難なので、契約前の確認をしておくことが大切です。

必要であれば、契約前に不動産屋さんに見積もりを作ってもらうのもいいでしょう。