集合住宅の賃貸物件は家賃の他に、管理費もしくは共益費を月々支払わなくてはならない場合があります。
この管理費、共益費とはそもそも何なのでしょう。
また、家賃には消費税がかかりませんが、管理費や共益費はどうなのでしょうか。
物件を契約する際に消費税がかかるものはあるのでしょうか。
今回は集合住宅の賃貸物件にかかわる費用と消費税の関係についてお話しいたします。
そもそも管理費・共益費って何?
賃貸物件の集合住宅では、毎月の家賃の他にも管理費や共益費という名目での支払いをしなければならない場合があります。
そもそも管理費、共益費とは何かというと、どちらも集合住宅の共用スペースに関わる費用を指しています。
マンションやアパートには廊下やエントランス、階段やエレベーター、ゴミ置き場や花壇といった居住者の方にとって共用の場所がありますよね。
たとえば廊下には照明がついていますし、花壇には花が植わっています。
では、廊下がゴミだらけだったり照明が切れていたらどうしますか。
花壇の花が害虫に食い荒らされていたらどうでしょう。
共益費とはこうした照明代や害虫駆除代、廊下や花壇の清掃費用など、共用部分の維持管理に必要なお金のことをいいます。
さらには清掃員の人件費や、管理人が常駐している物件での管理人の給料など、物件管理のために幅広く充てられるお金全体を管理費と呼んでいます。
しかし、共益費と管理費の間に明確な違いはありません。
しいて言えば、管理費のカテゴリーに共益費が含まれる、といったところです。
いずれにせよ管理費、共益費は、居住者全員が支払わなくてはなりません。
「1階に住んでいるからエレベーターは使わないので共益費は払わない」というわけにはいかないのです。
管理費、共益費は家賃と同じく支払い義務がありますが、消費税はかかりません。
これも家賃と同じですね。
管理費・共益費は家賃に含まれることもある
管理費と共益費はどちらも共用スペースの維持管理に必要な経費ですが、両方が徴収されるということはなく、どちらか一方です。
なかには管理費・共益費は0円で家賃のみという物件もありますが、これは単に管理費(または共益費)が家賃に含まれているだけであって徴収していないわけではないのです。
たとえば家賃が65,000円で管理費(または共益費)が5,000円の物件Aと、家賃が70,000円で管理費(または共益費)が0円の物件Bがあったとします。
毎月の支払金額はどちらも70,000円と全く一緒です。
しかし、家賃が65,000円の物件Aのほうが安く感じられませんか。
賃貸物件では誰でも最初に「家賃」の金額に目が行きます。
少しでも安い家賃のほうが、トータル支払金額が同じでも割安に感じられるのです。
不動産検索サイトでもAは家賃60,000円台、Bは家賃70,000円台の物件として紹介されますから、管理費(または共益費)と家賃は別々のほうがお客さんをつかみやすいともいえます。
さらに敷金や礼金は「家賃」の何か月分と決まっているため、少しでも家賃の値段が安いほうが、初期費用を抑えられるともいえるのです。
とはいえ一概に家賃と管理費(または共益費)が別々のほうが良いとは言えません。
最終的には毎月支払う費用の合計額が決め手ですから、きちんと計算をしたうえで物件を見るようにしましょう。
特にシェアハウスの場合は共用部分の割合が増えるため、共益費が高い傾向にあります。
また、家賃、管理費(または共益費)の他に、駐車場については注意が必要です。
なぜなら駐車場料金は管理費、共益費と違い、消費税がかかることがあるからです。
管理費・共益費とは違う!駐車場に消費税がかかる訳とは?
賃貸物件の家賃には、そもそも消費税がかかりません。
居住用住宅は課税対象となっていないからです。
実は消費税が導入された平成元年当初は、賃料も課税対象とされ消費税がかかりました。
しかしその後、税制が改正され、現在では家賃は非課税となっています。
共益費や管理費も居住用住宅に付随するため非課税であり、消費税はかかりません。
しかし、ここで問題となるのが駐車場です。
家賃や共益費に駐車場の料金が付属する場合には非課税となって消費税はかかりません。
契約書には「駐車場利用料を含む。」「駐車場」などと記載されています。
しかし家賃や共益費に駐車場が含まれていない場合には、駐車場利用料として単独で請求され、料金に消費税がかかります。
つまり、駐車場を居住用住宅に従属するものとしてとらえるなら消費税はかからず、住宅とは別個のものとすると消費税がかかるのです。
駐車場付きのマンションでも、駐車場料金が家賃や共益費に含まれていないと、マンションの契約書とは別に、駐車場の契約書が必要になります。
契約の際は駐車場の扱いはどうなるのか、しっかりと確かめるようにしましょう。
駐車場だけじゃない!集合住宅で消費税がかかる可能性のあるもの
駐車場料金は、家賃や共益費(または管理費)に含まれるか否かによって、消費税の有無が変わってきます。
同じように考え方次第で、消費税がかかったりかからなかったりするものがあります。
たとえば下記のような料金は、家賃や共益費(または管理費)に含まれる場合には駐車場同様非課税となり、消費税がかかりません。
・その物件の住人しか使えないプールやアスレチック、温泉施設
・家具付き賃貸物件の家具使用料
・入居者の選択に関わらず、物件の敷地内にあらかじめ設置されている倉庫の使用料
・各戸に配線されている衛星放送共同アンテナ、CATV使用料
・各戸に設置されているエアコン等により冷暖房や空調を行う場合の施設使用料
・入居者の選択に関わらず、あらかじめハウスキーピングを付している場合の料金
逆にいえば、これらが家賃や共益費(または管理費)に含まれておらず、入居者個人の選択でなされる場合には課税対象となり、消費税がかかるのです。
契約の際には家賃や共益費に何が含まれるのか、記載事項をよく読んだり不動産会社に確かめたりしましょう。
特に家具付きやエアコン付きの物件、倉庫やプール、アスレチック施設などのついたマンションの場合には、それらが賃料に含まれているかいないかで課税か非課税かが変わりますのでご注意ください。
賃貸住宅であっても事業用なら消費税がかかる!
賃貸物件が居住用住宅として使われる場合、家賃や管理費、共益費には消費税がかかりません。
しかし同じ賃貸物件であっても、それが事業用として使われる場合には課税対象となり、消費税がかかります。
事業用とは、会社や個人に関係なく、収益が生まれる商業的行為全てを指します。
たとえばエステサロンをオープンさせるためにマンションの一室を借りるのなら、家賃は課税対象となり消費税がかかります。
また、はじめは住宅として借りたマンションの一室でエステを行うようになったのなら、事業用として変更の届け出をしなければなりません。
届けずに行っていた場合、トラブルにつながる可能性がありますので、必ず申告するようにしましょう。
倉庫として借りる場合には、自分の荷物をしまうためなら非課税となって消費税はかかりません。
しかし誰かに貸して料金を徴収するなら、事業とみなされ消費税がかかります。
つまり、金銭のやり取りがあるところにはすべて消費税がかかるのです。
居住用住宅には金銭のやり取りがなく、純粋に人が住むための場所であるため消費税がかからないのです。
こんな場合は消費税がかかる?かからない?
前述したように、賃貸物件が居住用住宅として使われる場合には家賃や管理費、共益費に消費税はかかりませんが、事業用として使われる場合には消費税がかかります。
では、以下のような場合はどうなるのでしょうか。
・住居と店舗を兼ねている場合
非常によくあるケースです。
たとえば賃貸マンションの一室がエステサロンで、そのほかの部屋を住居として使っている場合、それぞれの面積に合わせて住居部分は非課税、店舗部分は課税対象になります。
ですからエステをやっている部屋にだけ消費税がかかります。
・社宅の場合
事業者の借り上げ住宅であっても、すべて住宅用ですので家賃に消費税はかかりません。
・下宿の場合
住宅用ですので家賃に消費税はかからず非課税ですが、賄(食事)付きの下宿であるなら賄部分のみ消費税がかかります。
・長期間滞在できる宿泊施設の場合
利用者からすれば住居であっても、食事も部屋もすべて金銭のやり取りが発生するため消費税がかかります。
住まいのための費用には消費税がかからない
管理費・共益費は集合住宅の共用部分の維持管理のために必要な経費であり、家賃と同じく非課税となるため消費税はかかりません。
国税庁は、人が純粋に住むための住居には消費税はかからないと定めています。
なぜなら、金銭のやり取りが生じないからです。
逆にいえば人が住む場所ではないところ、あるいは人が住む場所であっても事業用として使われる場合には消費税がかかります。
契約の際にはよく注意するようにしましょうね。