木造住宅の一番下に位置する土台は、建物ができると大半が隠れてしまい、その姿は工事中にしか見ることができません。
工事中も、中盤以降は外壁で隠されてしまうため、上棟~工事序盤しか見ることができないのです。
今回は、隠れてしまう土台の規格と寸法についてお伝えします。
木造住宅の土台の役割
「木造住宅の土台ってどこ?」と尋ねられ、すぐに答えるのは難しいかもしれません。
完成した建物では、土台はほとんど見えなくなるからです。
木造住宅の土台は、建物の一番下、基礎のすぐ上に設置される部材です。
土台は柱と同じ太さの寸法で、基礎にアンカーボルトで固定します。
その役割は、建物の重さを基礎に伝え、基礎と木造部分をつなぐことです。
土台を基礎の上に敷くようになったのは、コンクリート基礎が発達してからです。
それまでは石など上に直接柱を立てていました。
基礎の上に土台を敷くことで、建物の重さを分散でき、基礎の一部が沈む不当沈下も予防します。
また、基礎と木造部分をつなぐ役割を果たす部材でもあります。
建物の基礎はコンクリートでできているので、土台を介したほうがより確実に固定できますし、柱を固定するためのホゾや金物を取り付けることで、安定して建物を建てれます。
このように、土台は建物の中で重要な役割を果たします。
木造住宅に使われる土台、役割や寸法などの決まりごとは?
木造住宅で使われている土台には寸法だけでなく、材料や強度、耐久性などの決まりごとがあります。
これらの決まり事を大きく分けると「土台としての役割」と「土台として使用できる材料」の二つに分けられます。
前者の「土台としての役割」は、土台の役割、必要箇所、取り付け方などを決めています。
「土台としての役割」を建築基準法では
「構造耐力上主要な部分である柱で最下階の部分に使用するものの下部には、土台を設けなければならない。」
と定めています。
「構造上主要な部分」は建物の重さ支える柱を意味します。
「最下階の部分」は基礎の真上です。
木造住宅ではほとんどの柱は建物の重さを支えますので、柱が建てられるすべての箇所に土台を入れる必要があります。
後者の「土台として使用できる材料」は、材料として利用できる木材の決まりです。
建築基準法 第37条「建築材料の品質」の中にJAS(日本農林規格)基準に適合するものと定められています。
JASの中で土台として使用できる材質、強度、寸法、耐久性に関する事項が決めてあります。
どちらも大切な決まりで、文化財などのごく一部の例外を除き日本全国で決まりに添った土台が使用されています。
言い換えれば、一般的な建築に使われる土台は日本全国どこでも基準を満たしています。
木造住宅でよく使われる土台の寸法は?
建て方が終わったばかりの木造住宅は、木軸が良く観察できます。
在来工法で建てられた家をよく見ると、土台と柱の幅がそろっているのに気が付くと思います。
先程もお伝えしたとおり、木造住宅で使われる土台の寸法は、基本的に柱と一緒の寸法です。
例えば、柱が10.5cmなら土台も10.5cmという具合です。
木軸ではなく、面で支える構造になっている2×4住宅ではどうでしょうか。
2×4住宅は建て方前に1階部分の床合板を組んでいくため、建て方後には土台は観察することが難しくなります。
2×4住宅は土台に9cm角材を使う場合と204材(3.8cm×8.9cm)を使うものと2つに分類されます。
日本では9cm角材を土台に使用することが多いようです。
9cm角材が流通上とても手に入りやすく加工もしやすいため使用されています。
1本の土台の長さは建物によってまちまちですが、ほとんどが4m以下です。
短いと30cmぐらい土台も使う場合があります。
ただ、土台は4mでも、建物長さは4m以上のものがほとんどです。
そのため、土台を建物に合わせて長くするのは、次に紹介する「継手」を使います。
土台どうしをつなぐ継手には寸法などの決まりはある?
在来工法の木造住宅を良く観察すると、ところどころ土台どうしがプラモデルのように組んである箇所を目にするかもしれません。
これは「継手」と呼ばれるもので、土台どうしを固定するために使用されます。
この継手にも決まりがあり、継ぐ場所と継手の種類が決まっています。
大切なのは地震に耐える構造体の真下に継手を設けないことです。
地震がかかった時に、継手が外れて壊れてしまいます。
一本の材料と比べると、どうしても継手は弱くなってしまいます。
現在、よく使われている土台の継手は、大きく分けて2種類あります。
土台どうしを直線的につなぐ「鎌継ぎ」と、直角につなぐ「蟻継ぎ」です。
それぞれの寸法は、土台の大きさによって多少変化します。
鎌継ぎの場合、土台どうしが重なる「継手長さ」は土台幅の1.2~1.5倍です。
直線的につなぐので、土台どうしがねじれないように重ね部分を多くとっています。
蟻継ぎの継手長さは3~4.5cm程度です。
直角に交わるので余り材料どうしを重ねることができません。
いずれも、長い経験の中で培われてきた合理性を考慮して決めてあります。
基礎と土台を頑固に固定、土台とアンカーボルトの決まり事
土台は、木造住宅の基礎と木造部分をつなぐ役目を果すとお伝えしましたが、より強固に固定するためにアンカーボルトが使用されます。
アンカーボルトで基礎と土台を強固に固定することで、地震に強いしっかりとした建物が出来上がります。
土台を固定するアンカーボルトには、入れる間隔や場所、使う寸法など様々な規定があります。
二階建ての場合、入れる間隔は土台を設置する場所に2.7m以内の間隔で設置していきます。
「2.7m間隔は結構広い」と思われる方もおられるかもしれません。
ただし、これはあくまで基本であってさらに次に紹介する通りに入れていきます。
・筋交い、構造用合板などの耐力壁両端の柱脚下部で近接した位置
・土台の切れ箇所、土台継手および土台継手の上木側
言葉で説明すると難しく感じますが、要は「地震の際に力が集中しやすいところ」に入れていきます。
土台と基礎がしっかりと固定されていなければ、地震の際に建物が基礎からずれて大変な被害が出ます。
アンカーボルトを決まった箇所に入れてこそ、地震に強い家が出来上がるのです。
日本の伝統建築に土台はあった?
最後に、古くからある木造住宅の伝統建築についてご紹介します。
冒頭で紹介したように、土台はコンクリート基礎が入ってきてから一般的になりましたので、それまでは土台という概念が一般的ではなかったのです。
当時の木造住宅は、「束石」と呼ばれる石の上に直接基礎を建てる「石場建て」方式が主流でした。
近代に入り、西洋建築の影響を受けコンクリート基礎が使われるようになってから、土台が使用されるようになりました。
「石場建て」は、直接束石の上に柱を立てるため土台の代わりに「足固め」と呼ばれる材料を柱の間に渡していきます。
これが土台の代わりになり、大引き・根太、床板の基準となっています。
足固めの寸法は柱よりちょっと幅が狭い程度です。
伝統工法では、柱の太さが21~18cmの現在より太い材料を使っていましたので、足固め材の寸法も18~15cmと現在の土台より太い材料を使っていました。
コンクリートで頑丈な基礎を作り、土台を敷いて家を建てやすくする工法は法的に整備され全国に広がっていきました。
しかし、土台の寸法は伝統工法の考えを引き継ぎ、18~15cmの太い土台が使用されています。
木造住宅の土台の規格や寸法
今回は工事序盤で隠れてしまう土台について、規格と寸法を中心にお伝えしました。
土台は基礎と建物をつなぐ重要な部材です。
一見すると柱と同じような材料ですが、ここがしっかりしていないと建物全体が支えられないのがお分かりいただけたかと思います。
ご自宅を建てられるときに、ちょっと気にかけて頂ければと思います。