2014年に始まったNISAは、テレビや広告などを通して広く知れ渡るようになりました。
しかし、NISA口座を開設するにあたっては、いくつかの制限が設けられているため、その複雑さから口座開設を躊躇している方もいることでしょう。
特に、口座を複数持ちたい方にとっては、その開設制限についても気になるところです。
この記事では、NISA口座を開設する上でのルールについて詳しくまとめていきます。
NISA口座は複数持つことが可能?そもそもNISAとは
株や投資に興味がある方であれば、NISAという名前だけならご存知の方もいることでしょう。
まず始めに、NISAとはどのような制度なのか、詳しくご説明していきましょう。
NISA(ニーサ)とは、イギリスのISAをモデルに立ち上げられた制度で、正式には「少額投資非課税制度」と呼ばれています。
「少額投資非課税制度」とは、2014~2023年までの期間に限り、株や投資による利益が一定額非課税になる制度です。
通常、株や投資で利益が発生した場合、その配当に対して税金が課税されます。
それに対しNISAでは、毎年120万円までの投資利益を、最長5年間に渡って非課税にすることができるのです。
例えば、投資への資産運用によって10万円の利益が生じた場合、通常はその20%の税金が徴収されるため、実際に収益となるのは8万円になります。
しかし、NISA口座で投資をすれば、投資利益の課税が免除されるので、10万円そのままを利益にすることができるわけです。
このようなNISAの非課税制度は、投資をする方にとっては、またとない節税制度であり、もし複数の口座を持つことができれば、より効率的に収益を上げることにも繋がります。
では、NISA口座を開設する場合、複数の口座を持つことが可能なのでしょうか?
それも踏まえて、口座開設をする上でのルールについて詳しく見ていきましょう。
NISA口座の基礎!投資可能な上限金額は?
まず、NISA口座の基礎知識として覚えておきたいことは、投資可能な上限金額についてです。
NISA口座で投資を行う場合、その上限金額は「年間120万円まで」となります。
世間一般で投資を考えたとき、「投資=大きな資金運用」のイメージが強くあるため、このようなNISAの上限金額には少なく感じる方もいることでしょう。
しかし、投資には必ずしも大金が必要なわけではありません。
上場株式や株式投資信託の中には、数万円程度から投資ができる機関も多く存在しており、少額投資で利益を得ている投資者も大勢いるのです。
また、投資初心者にとっては少額から始める方も多いため、それを踏まえれば、NISAの「年間120万円」という上限は十分な金額と言えます。
ただし、年間120万円の上限について、注意しておきたいポイントもあります。
NISA口座では、120万円の非課税対象枠はその年限りにしか有効ではありません。
つまり、その年に非課税対象枠が20万円分余ったとしても、その余った枠を翌年に持ち越すことはできないのです。
この点については、しばしば誤解が生じることもあるため、あらかじめよく理解しておくことが大切です。
では、NISA口座を複数持つことに関して、次項で詳しく見ていきましょう。
NISA口座を複数作りたい!口座の複数所持は可能?
結論から言うと、NISA口座を複数持つことはできません。
と言うのも、仮にNISA口座の複数所持を認めてしまえば、複数の口座を駆使することで、それぞれ120万円ずつの投資を可能にしてしまうからです。
NISAが非課税制度を設けている背景には、税務署の厳しいチェックが介在しています。
NISA口座開設における流れは、以下の通りになります。
①NISA口座開設の申し込みを受けた金融機関は、税務署にNISA口座開設申請を行う
②税務署は申込者に対し、複数のNISA口座を開設していないか確認
③「非課税適用確認書」を交付
上記のような厳しい審査を踏んだ上で、初めてNISA口座開設のOKが出るというわけです。
つまり、複数の口座を開設しようと申し込んでも、税務署の厳しいチェックによって阻止されてしまうので、これについてもよく理解しておきましょう。
口座の複数所持はNG!では金融機関の変更は?
前項の説明で、NISA口座の複数開設は審査上できないことが分かりました。
では、NISA開設後に金融機関を変えることはできるのでしょうか?
2018年現在に至っては、1年ごとの金融機関の変更が可能になっています。
もともと、NISAがスタートした2014年当初では、口座開設以降の最大4年間は変更することはできませんでしが、使い勝手や効率性が考慮されたことで、2015年以降は1年ごとの変更が可能になりました。
実際にNISA口座の金融機関を変更するにあたっては、以下のような条件があります。
①変更を希望する年の9月末までに手続きを行う
②その年に金融商品を購入している場合、その年に限っては変更することはできない
上記の条件をクリアした上で、金融機関の変更が可能になります。
金融機関の変更のメリットとしては、自分のニーズに合わせた投資対象をより幅広くできることです。
と言うのも、証券会社・銀行・郵便局などの金融機関では、それぞれに取り扱う商品が異なります。
金融機関の変更によって、投資対象をより豊富に持つことは、将来的に投資を続けていく上でもメリットは大きいと言えます。
もし現在の投資商品に不満がある場合は、金融機関の変更を検討してみるのも良いかもしれませんね。
金融機関の変更には注意点もある!
実際に金融機関を変更するにあたっては、注意点についても知っておく必要があります。
例えば、A銀行で2016年に開設したNISA口座がある場合、その口座の非課税対象期間は5年間の2020年までになります。
そこで、2017年にA銀行からB銀行にNISA口座を変更した場合、B銀行での非課税対象期間は、新たに2021年までとなります。
A銀行で保有している商品は、そのままA銀行で保有することができますが、ここで注意したいのは、「A銀行からB銀行への保有商品の移管」です。
A銀行で開設したNISA口座の中身は、B銀行へそのまま移管することはできません。
と言うのも、B銀行への口座変更は、NISA口座の複数開設を意味しているおり、その年に非課税枠が複数存在することはあり得ません。
したがって、A銀行で保有している商品はそのまま利益や非課税を受け取ることはできますが、売却以外の新規購入はできないということになります。
あくまでもNISA口座は一人一つであることを忘れずに、金融機関の変更を行ってください。
「ジュニアNISA」や「つみたてNISA」の制度も利用しよう
これまでに、NISA口座の開設や金融機関の変更についてご説明してきました。
実は、通常のNISA以外にも、「ジュニアNISA」や「つみたてNISA」という制度もスタートしています。
この二つの制度について、それぞれにご紹介していきましょう。
・ジュニアNISA
20歳未満の子どもを対象に、一人につき年間80万円までの投資利益を非課税にすることができます。
・つみたてNISA
20歳以上の国内居住者を対象に、一人につき年間40万円までの投資利益を、20年間非課税にすることができます。
通常のNISAと同様に、これらのNISAも複数口座を開設することは勿論、この両者を同時に利用することもできないので注意が必要です。
ただし、「NISA」「ジュニアNISA」「つみたてNISA」は、家族それぞれに持つことができるので、非課税枠を増やしたい場合は、世帯で複数の口座を作ることをおすすめします。
NISA口座をうまく活用しよう
NISA口座は一人一つしか開設することができません。
たとえ、口座開設の申し込みを複数で行ったとしても、税務署の厳しい審査が入るため、申請されるのは一つのみです。
しかし、通常のNISA以外にも、「ジュニアNISA」や「つみたてNISA」の制度もあるので、家族それぞれでこれらの口座を持つことも、投資で節税するための一つの方法です。
NISA口座をうまく活用して、投資環境をより良くしていきましょう。