家賃滞納で保証会社に裁判を起こされたらその後どうなるの?

賃貸契約とは、物件に居住する権利と引き換えに月々の家賃を支払うという金銭債務契約です。

しかし、もしリストラや病気などで生活が苦しくなり、家賃滞納をしてしまったらどうなるのでしょうか。

実は、保証会社を通して賃貸契約を結んでいた場合などは、早くて2ヶ月~3ヶ月で裁判、強制退去ということになる場合があります。

今回は、家賃滞納をした場合、裁判や強制退去に至るまでの流れを詳しく見ていきましょう。

保証会社の利用背景と、裁判までの時間が短い理由

賃貸契約をする場合は、一般的には連帯保証人が必要となります。

皆さんも親や兄弟に連帯保証人になってもらって、賃貸契約をされているのではないでしょうか。

万が一家賃滞納をしてしまった場合には、連帯保証人である親や兄弟に迷惑をかけることになるので、どんなことをしても支払わなければと思いますよね。

このように、身近な人を連帯保証人にすることは、家賃滞納を牽制するための有効な方法と言えるでしょう。

しかし、核家族化が進み、親族に連帯保証人を頼みづらい状況や、身寄りのない世帯の増加などの社会的背景から、保証会社の利用が増加しています。

よく、不動産会社の店頭に貼り出してある物件情報などに、「保証人不要」などと書かれていることがありますね。

しかし、あれは、ただ保証人がいらないということではなく、保証会社を利用するという条件が付いている場合がほとんどです。

つまり、身内ではなく、ビジネスとして家賃保証を請け負う会社に保証させるシステムであるというだけなのです。

そして、このような保証会社を仲介させた場合、彼らはプロであるため、普通より早く裁判、強制退去という段階に至ってしまうことがあります。

保証会社は家賃滞納を見逃さない

このような保証会社を利用することは、家主と賃借人の両方にメリットがあります。

家主側のメリットは家賃滞納リスクが軽減できることであり、賃借人にとっては保証人なしで賃貸契約が可能になることです。

しかし、その対価として保証料が発生します。

保証料は、保証会社によってバラバラですが、入居時に家賃の半分~1ヶ月分などを支払ったり、1万円~3万円程度の固定額を支払ったりします。

中には、毎月、家賃の数パーセントを保証料として徴収する保証会社もあります。

そして、保証料で収入を得るのと引き換えに、万が一賃借人が家賃を滞納した場合、保証会社が家主に家賃を建て替えて支払うのです。

これを「代位弁済」と言います。

ただ、代位弁済したからといって、滞納した家賃が消えてなくなるわけではありません。

ここから、保証会社の賃借人に対する家賃の取り立てが開始されます。

保証会社は、立て替えた家賃を回収しなければ経営が成り立ちません。

そして、家主と違い、家賃を滞納した賃借人は保証会社にとって顧客ではなく、ただの債務者です。

そのため、保証会社の取り立ては、家主の督促より厳しいものとなり、すぐに裁判や強制退去に発展するのです。

家賃滞納で保証会社が裁判を起こすまでの流れ

では、保証会社を仲介して契約した物件で家賃滞納をしてしまった場合の、その後の流れについて見ていきましょう。

一般的に家賃は、民法では後払いが原則ですが、契約書の内容が優先されるため、前払いになることがほとんどです。

その支払い期日を過ぎると、数日で督促の連絡が入るでしょう。

おそらく最初は丁寧に「ご入金が遅れておりますが…」などと問い合わせてくる程度です。

これは、ひょっとしたら、故意ではなく、不注意で引き落とし金額が不足していただけかもしれないためです。

しかし、支払うと言って支払わなかったり、放置しておくと、悪質な滞納と判断され、強く支払いを求める内容の督促状などが届きます。

さらに支払いをしないでいると、内容証明郵便で延滞金などと合わせた滞納家賃の請求及び督促状が届きます。

そのまま1ヶ月も放置していると、保証会社は少額訴訟や支払督促など、裁判所に法的手続きを求めて訴訟を起こします。

そうすると、滞納している賃借人のところに、ある日裁判所から訴状が届くことになるのです。

保証会社の場合、この手続きに至るまで、早いと1ヶ月~2ヶ月程度のこともあります。

なぜなら、放置すればするほど滞納金額が膨れ上がり、回収が難しくなるからです。

家賃滞納で裁判を起こされるとどうなる?

保証会社の訴えにより、裁判所から訴状が届いた場合、答弁書を出頭期日の1週間前までに提出しなければなりません。

そして、求められる証拠などを準備して、指定の期日に裁判所に出頭します。
簡易裁判のうち少額訴訟の場合などは、審理は1日で終わり、和解もしくは判決が出るという流れになります。

このとき、滞納分の家賃と延滞金などを支払うことができれば和解することも可能でしょう。

しかし、支払うお金がないから家賃滞納するわけです。

このような場合は、判決として家賃支払い命令が言い渡されます。

判決が出た場合、2週間の間は不服を申し立てることができますが、2週間経つと判決は確定します。

そして、判決に従わない場合は、裁判所への申し立てによって強制的に従わせることになります。

それがいわゆる「強制執行」で、少額訴訟の場合、給与を差し押さえられることが多いです。

もし、給与差し押さえになると、勤め先の会社に迷惑がかかるだけでなく、会社に家賃滞納の事実がすべて知られてしまいます。

このように、保証会社の取り立てを放置しておくと、確実に裁判になり、最終的には強制執行になってしまうのです。

家賃滞納で裁判までいくと強制退去を求められることも

一方、家賃が払えないわけですから、入居している物件からは退去しなければなりません。

これは、普通は少額訴訟と同時に進めている、明け渡し請求の訴訟になります。

しかし、1ヶ月程度の家賃滞納で即強制退去になるわけではありません。

実は、契約書にある契約解除の条件に当てはまらなければ、家主や保証会社といえども退去を求めることができないのです。

もし、契約書に「2ヶ月以上の家賃滞納があった場合、契約解除となる」などの記載があるとします。

その場合、裁判では目安として3ヶ月以上の滞納で初めて強制退去が認められます。

他にも、家賃支払いの意思がない、家主との信頼関係が崩れてしまっているなどの条件がそろった場合に、強制退去となるのです。

ただし、保証会社は裁判慣れしていて、取り立てや差し押さえ、明け渡し請求のプロです。

ビジネスとして対応するため、すべてにおいてスピーディーで、相談の余地などはほぼありません。

さらに、強制退去に際して、少額訴訟における滞納家賃の返還請求が同時進行している場合は、家財なども差し押さえられることがあります。

最悪の場合、身一つで追い出されることもあり得るのです。

保証会社を利用する際の注意点

このように、保証会社を介して賃貸契約を結ぶと、メリットがあるとはいえ、家賃滞納をした場合は大変なことになります。

しかし、連帯保証人が見つからない、遠方に住んでいるため手続きに時間がかかるなどの場合は、保証会社の利用も仕方がありません。

ただ、1つ気を付けておかないといけないのが、不動産会社の中には、連帯保証人とは別に保証会社の利用を義務付けるところがあるということです。

これは、不動産会社に、保証会社からのキックバックなどがあるためです。

また、グループ会社の中に保証会社があり、そこの利用を義務付けている場合もあるようです。

このような場合に家賃を滞納すると、保証会社の家賃滞納の取り立ては、契約者本人だけではなく、連帯保証人になってくれた親族にも行ってしまいます。

連帯保証人を巻き込んで裁判になってしまったら、それこそ大事になります。

万が一の場合に、せめて親族を巻き込まないためにも、契約の際には保証会社の利用条件などをしっかり確認しておきましょう。

そして、何よりも大切なのは、家賃滞納を放置しないことです。

賃貸契約は、賃貸物件を介した金銭債務契約です。

何かあったときのため、問題が解決するまでの期間を想定して、ある程度の金額を蓄えておくなどして契約に臨みましょう。

そうすれば、家賃滞納に陥る危険性を回避できるはずです。

家賃滞納した場合、誠意をもって支払う姿勢を示すこと

今回は、家賃滞納をしてしまった場合、裁判に至るまでに保証会社がどのような処理をするのかを見てきました。

万が一このような状況になった場合、先に述べたように、放置することは賢明とは言えません。

賃貸物件に住んでいる以上、毎月の家賃の支払いから逃れることはできないのです。

まずは誠意をもって自分から状況を説明し、一部でも支払える金額を支払うべきでしょう。

そうすれば、裁判にまで至らず、違う問題解決の糸口が見えてくるかもしれません。