賃貸借契約で借主が気になるものの一つに、月途中の契約開始または月途中の退去解約時に発生する家賃の日割り計算、それに付随して発生する端数の処理があります。
この日割り家賃の計算方法や端数の処理はどのようになされているのでしょか。
今回はこの日割り計算による日割り家賃の算出、端数処理について記していきます。
家賃の日割り計算とは
月途中での期間満了や解約、あるいは月途中からの入居など、その月の使用収益期間が1ヶ月に満たない場合があります。
たとえ月途中からでもキッチリ1ヶ月分の家賃を徴収する契約もありますが、通常1ヶ月に満たない期間の家賃は、1ヶ月を30日として日割り計算とするかあるいは歴日数を基準として日割り計算をして日割り家賃を算出しています。
賃貸借契約では、家賃を月払いで徴収していますが、家賃は物使用収益に対する対価ですから、借主が使用した日数に対応する賃料を徴収することが合理的です。
つまり1ヶ月の家賃を「30日」あるいは「歴日数」で割り、これに使用した日数をかけることによって日割り家賃の総額を算出するのです。
そして、その処理基準を「30日」とするか「歴日数」とするかはオーナーによって違いますがは通常は「30日」を基本に日割り計算をします。
標準の賃貸借契約のフォーマットも「30日」となっています。
歴日数と定められている場合は、その月の日数で割ることになります。
例えば2月の場合ですと28日です。
「30日」、「歴日数」どちらで割っても切りのいいところで割り切れればいいのですが、割り切れず端数が生じる場合があります。
その端数については次項でご説明します。
家賃の日割り計算方法と端数について
家賃の日割り計算の方法に特に決まった法律等はありません。
前述しましたように、1ヶ月を「30日」とするか「歴日数」とするかは条件を提示するオーナーの考え方次第です。
いずれにしても、家賃の金額や入居日数関係で1円単位でも割り切れず端数が生じる場合があります。
例えば家賃が月額60,000円で、10月16日に入居、契約するとします。
「歴日数」で日割り計算すると60,000円÷31日=1,935.48…円(1日分の日割り家賃)。
「30日」で日割り計算すると60,000円÷30日=2,000円(1日分の日割り家賃)。
「歴日数」で計算すると小数点以下も割り切れず端数が生じます。
このように「30日」を基準にすると比較的に端数が出にくいです。
そして一律「30日」で割った方が、月末が30日以下の月を除けばわずかながら一日分の日割り家賃が「歴日数」を基準とするより高くなります。
このようなところから「30日」を基準にする方向となっています。
いずれの基準をとっても家賃の金額によっては端数が生じます。
次項ではこの端数処理について記します。
日割り家賃の端数処理について
前項では、家賃の日割り計算の方法について記しました。
また、その計算に伴って端数が生じることも前述の通りです。
その端数処理ですが実際にどのように処理されているのでしょうか。
日割り計算の方法については賃貸借契約書等に明記されていますが、端数の処理までは明記されていません。
その管理会社、オーナーが自由に決めています。
端数処理は「四捨五入」「切り捨て」「切り上げ」の3種類ですが大抵の場合は「四捨五入」または「切り捨て」、単位については100円単位くらいが一般的です。
なかには、小数点以下を「四捨五入」にしてほしいと言いう入居者もいますが、例外といえます。
入居者からすると、「切り捨て」であれば良心的と感じるでしょう。
不動産広告における端数処理について
これまで入居者の入居における家賃の日割り計算について記しましたが、こちらでは、少し視点を変えて不動産物件の広告に関する端数処理について記します。
不動産の広告は、小売業などの通常の広告以上に制約が法律で課せられています。
例えば、物件の広告で◯◯駅から徒歩◯◯分といった表現がよく見られます。
この広告の根拠は成人が通常の速度で歩いた場合、分速80mで歩くと仮定しています。
例えば駅まで500mの距離を分速80mで歩くと、6.25分ですが広告で表示する場合、四捨五入をすると6分と表示できます。
しかし、不動産の表示に関する公正競争規約では、端数は1分として算出しなくてはならないため、この場合7分と表示します。
また◯◯駅徒歩0分(1分未満は切り上げのため)、◯◯駅徒歩30秒(1分未満は切り上げ)表現も違反となります。
日割り計算による家賃と前家賃との違い
前項で端数処理について記しましたが、こちらでは入居者が契約時に混同しやすい日割り計算によって算出された日割り家賃と前家賃の違いについて記します。
前家賃とは、入居者が賃貸借賃貸契約を締結し、入居が決まった時点で支払う翌月分の家賃です。
民法614条では家賃は「毎月末」という後払いに規定されていますが、これも不動産業界の慣習で月末に翌月分の家賃を支払うこととなっています。
オーナーが家賃を遅滞なく得るために賃貸借契約書に前払いの条項を入れることが一般的受け入れられたためです。
その為、入居者が月の途中で賃貸借契約を締結する場合は、入居月の日割り家賃と次月の前家賃を一緒に支払うこととなります。
そうなると、入居者よっては入居日が月初の場合、2ヶ月に近い家賃を支払うこととなります。
さらにその他諸費用を含めると、初期費用はそれなりの金額となります。
昨今では、入居者が契約する際オーナーまたは管理会社に対して交渉することが多いのですが、日割り家賃を節約あるいはカットする方法もあります。
次項ではその日割り家賃をカットあるいは節約する方法について記します。
日割り家賃を抑える方法
日割り計算により端数が出ることは前述した通りです。
その端数は交渉によりカットすることもできますが、大半のケースはわずかな金額なので、費用節約の効果は薄いでしょう。
そのためこちらでは、日割り家賃を抑えるあるいはカットする方法について記します。
まずは、日割り家賃を抑える方法をご紹介します。
家賃90,000円、30日を1ヶ月として日割り家賃を算出する契約内容の物件に入居を3月12日で契約を締結するとします。
この場合、3月12日から3月31日までが日割り家賃となります。
日数的には12日も含めますので、20日間の日割り家賃が発生します。
1ヶ月分の家賃が90,000円ですので、90,000円÷30日×20日=60,000円となります。
入居日を1ヶ月前倒しにして2月12日とします。
2月の場合、閏年以外末日が28日ですから、2月12日から3月28日までが日割り家賃となりま
す。
18日間の日割り家賃ですので90,000円÷30日×18日=54,000円となります。
同じ日に入居しても、月によって2日分から1日分の日割り家賃を節約できます。
次の方法は、フリーレントを明示している物件に申し込むことです。
フリーレントとは家賃が1ヶ月から2ヶ月分、無料となるシステムです。
したがって日割り家賃が発生しませんし、2ヶ月ですと前家賃も不要です。
入居者にとってはかなりの経費節約となりますが、月末の入居で1ヶ月のフリーレントですと1日しか無料となりませんので、入居日が月の上旬であればあるほどお得ということです。
またフリーレント期間中に解約すると相応の違約金を請求されるケースもありますので、契約時に注意が必要です。
日割り計算の方法を理解し物件選びに生かそう!
一口に家賃の日割り計算といっても、「30日」で計算するか「歴日数」で計算するかで金額は変わります。
また、日割りをすることで発生する端数の扱いについては、オーナーや管理会社によって異なります。
初期費用を抑えるためには、フリーレント物件を選ぶという方法もありますので、検討してみるとよいでしょう。