セメントと砂を配合し、水で練り上げて作るモルタルですが、その強度はどれくらいなのでしょうか?
また、セメントや砂、水の配合によって、強度は変わってくるのでしょうか。
今回は、基本の配合を中心に、注意しなければならない点や、モルタルの強度について見ていきましょう。
モルタルとコンクリートの違いについて
セメントは、石灰石や粘土、石膏などを細かく砕いて混ぜ合わせたもので、モルタルやコンクリートの素材になります。
そのセメントに砂を配合して練り上げたものがモルタルで、さらに砂利を加えるとコンクリートになります。
セメントは強度は高いのですが、収縮性も高いので単独で使うには問題があります。
そこで、砂や砂利といった素材を配合して、強度と収縮性のバランスを取ったものがモルタルとコンクリートです。
モルタルは、レンガやブロックを積むときの接着材料や、仕上げ材としても幅広く使われています。
また、コンクリートで作られたものも、「仕上げにモルタルが使われている」ということも多く、木造の建物の仕上げ材としても使われています。
一方、コンクリートは建物の基礎やブロック塀の土台など、モルタルよりも強度を求められる場所に多く使われています。
このように、モルタルは用途の範囲が広いのでDIYに使われることも多く、案外身近なものと言えるでしょう。
セメントの配合を高めるとモルタルの強度は上がる?
モルタルを作る場合、セメントと砂の配合はどのくらいが良いのでしょうか。
基本的なモルタルの配合は次の通りです。
・基本の配合 セメント1:砂3
・接着材料としての配合 セメント1:砂2
・造形物用の配合 セメント1:砂3~4
先ほど述べたように、セメントは強度が高いので、セメントの配合を増やすと当然、モルタルの強度は高くなります。
そのため、接着材料として使う場合は、強度を求めてセメントの配合が多くなります。
では、強度を高くするには、セメントの配合をどんどん増やしていけば良いのかというと、それは間違いです。
セメントは強度が高いのと同時に収縮性も高いとお話ししました。
収縮性が高いということは、乾いたら縮んでしまうので、ひびが割れてしまうなど、かえってもろくなってしまうのです。
したがって、モルタルと砂の配合は最低でも1:2で、それ以上砂を少なくすると、強度は上がりますが、使い勝手が悪くなります。
また、砂の配合が多すぎても強度は低くなるので、セメント1:砂2~4の配合を用途によって使い分けるのです。
モルタルに配合する「水の量」で強度は変わる?
それでは、モルタルを作るときに、水の配合でモルタルの強度は変わるのでしょうか。
セメントを扱うときには、「水セメント比」というものがあります。
これは、文字通り水とセメントの比率のことで、「水セメント比」は、コンクリートやモルタルの強度や耐久性などに大きく関わってきます。
セメントに対して、水が少ないと強度の高いコンクリートやモルタルができ、多いと強度が低くなるのです。
モルタルは、砂をセメントで接着したものです。
水が多いと、セメントの接着剤としての濃度が下がるので接着力が低くなり、当然、モルタルの強度も低くなります。
また、モルタルが硬化する前に乾燥してしまっても、強度に影響を与えます。
水は、モルタルの材料がよく絡み合い、一定の時間を掛けてセメントが固まっていくときに、蒸発して抜け出ていかなければなりません。
しかし、水が多すぎると、蒸発が間に合わず、セメントが先に固まってしまい、乾燥のバランスが悪くなり、密着度が低くなるため、強度も低くなってしまうのです。
したがって、必要以上に水を加えると、強度や耐久性の低いモルタルになってしまいます。
モルタルに配合する適正な「水の量」は?
先ほど、お話ししたように、モルタルに配合する水の量が多すぎると、強度に影響があることがお分かりいただけたと思います。
それでは、適正な水の量とはどれくらいなのでしょうか。
セメントが固まるために必要な水の量は、一般にセメントに対して40%と言われています。
この40%のうち、15%は粒子の結合に使われます。
40%を超える水を加えると、モルタルの中で粒子と結合できず、余分な遊離水になります。
そのため、モルタルが乾燥するときに、この遊離水も蒸発し、余計な収縮が生じて、ひび割れなどが出やすくなるのです。
したがって、「水セメント比」が小さいほど、隙間が少なくなり、強度や耐久性が高くなる、という傾向にあります。
しかし、実際に40%の水の量でモルタルを作ると、バサバサしてしまい、かえって砂とセメントが混じり合わなくなってしまいます。
ひとつの目安として、国の指針では、コンクリートの「水セメント比」は65%に定められています。
「水セメント比」は、水が多くても少なくても、モルタルの強度や耐久性に影響が出ます。
65%を超えないようにしながら、天候や季節に合わせて水の配合をしていきましょう。
モルタルの強度には温度も大切!
モルタルを作るときに、セメントや水の配合も大切ですが、温度も強度に影響を与えます。
温度によって強度が出るまでの時間が変わってくるのです。
そのため、施工後の平均気温によって施工時に予め強度に補正を加えます。
一般的なセメントを作るときの強度補正値は次の通りです。
・予想平均気温 15度以上 強度補正0
・予想平均気温 8度~15度未満 強度補正+3
・予想平均気温 3度~8度未満 強度補正+6
つまり、気温が低いとセメントの強度は低くなってしまうのです。
また、あまりにも気温が低すぎたり、高すぎたりしても、強度は発揮されません。
上記にはない、予想平均気温が3度を下回るような寒い時期や、25度を上回るような暑い時期には、それぞれ「寒中用」「暑中用」といったように、通常とは違う配合や養生が必要になってきます。
特に寒い時期の養生は、モルタルの表面が乾燥しやすいので、寒気から保護しつつ、乾燥し過ぎないように注意することが必要になるでしょう。
また、練り上げたモルタルは、すぐに固まりはじめるので作業を手早くしなければなりません。
気温が25度を超えると、より固まりやすいので注意しましょう。
セメントの種類による「水セメント比」と「圧縮強度」
最後に、セメントの種類によってどれくらい強度に差が出るのか見てみましょう。
一般的に販売されているのは「ポルトランドセメント」ですが、そのなかでも何種類かあります。
・「普通ポルトランドセメント」通常、セメントと言えば、これを指します。
・「早強ポルトランドセメント」普通ポルトランドセメントの3分の1の速さで強度を発揮します。
・「中庸熱ポルトランドセメント」普通ポルトランドセメントの7分の1の速さで強度を発揮します。
・「低熱ポルトランドセメント」長期強度に優れ、乾燥収縮性が低いなどの特長があります。
普通ポルトランドセメントを100とした場合の圧縮強度は次の通りです。
【水セメント比65%の場合】
・早強ポルトランドセメント 7日/125 28日/109 91日/105
・中庸熱ポルトランドセメント 7日/52 28日/89 91日/113
・低熱ポルトランドセメント 7日/26 28日/69 91日/112
【水セメント比55%の場合】
・早強ポルトランドセメント 7日/124 28日/111 91日/98
・中庸熱ポルトランドセメント 7日/58 28日/97 91日/111
・低熱ポルトランドセメント 7日/31 28日/88 91日/117
このように見てみると、普通ポルトランドセメントはとてもバランスの良いセメントと言えますね。
モルタルを配合するときには、こういったセメントの特性も知っていると便利でしょう。
強度の高いモルタルを作るときには配合が重要!
このように、モルタルを作るときには、水とセメントの配合が重要です。
多すぎても少なすぎても、強度や耐久性が変わってきてしまいます。
また、平均気温もモルタルに影響を与えるので、外で作業をする場合には注意しましょう。
この記事を参考に、用途や季節に合わせた配合で、よりモルタルの良さを引き出して使ってください。