住宅などの建物にとって、擁壁は縁の下の力持ちといえるものです。
地味かもしれませんが、その役割はなくてはならないものといえます。
しかし、そのように重要な擁壁に亀裂が生じている場合があります。
また、亀裂のなかでも、補修が必要なものと、そうでないものがあります。
ここでは、擁壁に生じる亀裂の原因などについても、深く掘り下げていきます。
擁壁には建物を支える重要な役割がある
擁壁という言葉を聞いたことはあっても、その詳しい役割などは知らない方が多いのではないでしょうか。
ここではまず、擁壁の役割についてみていきましょう。
擁壁には、崖などが崩壊するのを防ぐ土留めとしての役割があり、主にコンクリートや石を材料としています。
例として、道路からみて敷地の高さがあり、その上に建物を建てる場合に擁壁が必要となります。
また、隣の敷地と高さの違いがある場合にも、擁壁が必要となるでしょう。
では、もしこのような土地に建物を建てる場合、擁壁がなかったらどうなるでしょうか。
そのような場合、地面が崩れて、建物も崩壊する可能性があります。
例えば土などを積み上げると、横方向に広がろうとする力がかかります。
すると土は崩れ、斜面となります。
しかし、土はある程度崩れたところで安定します。
そのときの斜面の角度を「安息角」といい、この角度を超えるような高低差がある場合、擁壁がないと土が崩れてしまう恐れがあるのです。
しかし、このように建物にとって重要な役割を担う擁壁でも、年月の経過による劣化は避けられません。
またそれにより、亀裂が生じる場合もあるでしょう。
擁壁に亀裂が生じている場合、どのような原因が隠れているのでしょうか。
また、補修が必要かどうかについてもご説明していきます。
擁壁に縦の亀裂が!すぐに補修は必要!?
擁壁で生じる亀裂といっても、縦の亀裂と横の亀裂で場合が異なります。
まずは縦の亀裂が生じている場合ですが、すぐに補修が必要となるのでしょうか。
例としてコンクリート擁壁について考えます。
一見建物にとって不具合ともみえる縦の亀裂ですが、材料であるコンクリートの性質により縦の亀裂が生じることは珍しいことではありません。
それは、コンクリートの特徴でもある乾燥による収縮などが関係しています。
そのため、縦の亀裂を完全に防ぐことは難しいといえます。
またこれを受け、建物の種類はもちろん、その建物の置かれている環境によっても亀裂に対する許容にも程度が違ってきます。
つまり縦の亀裂は、このように許容に程度は違えど、すべてのものに対して補修が必要ではないということがいえます。
ちなみに、縦の亀裂の許容の範囲は一般的に0.1㎜といわれており、その程度の縦の亀裂あれば建物への影響はないと判断できるでしょう。
しかし、注意が必要なのが3.4㎜程度の大きな縦の亀裂です。
これは、擁壁のなかに埋め込んだ鉄筋とコンクリートが分離している可能性が示唆されるため、擁壁の補修はもちろん、その他の対応も重要となります。
横に亀裂が!しっかり造られた擁壁には生じない!?
前項では、コンクリート擁壁に生じる縦の亀裂についてご説明しましたが、一方で気になるのは擁壁に生じる横の亀裂です。
擁壁に縦の亀裂が生じた場合、乾燥による収縮などが要因として挙げられましたが、擁壁に横の亀裂が生じた場合、強度不足によるものである可能性があります。
つまり、擁壁にかかった圧力の影響により生じた亀裂の可能性があるのです。
擁壁に横の亀裂が生じている場合、圧力に負けて壁がしなっていると考えられます。
これはいずれ擁壁の崩壊や転倒に繋がる恐れがあります。
このことから、擁壁で生じる亀裂は縦のものより横のものに注意する必要があるといえるでしょう。
もし、擁壁に横の亀裂が生じている場合、早めの補修やその他の対応をおすすめします。
擁壁の補修費用は状況により違いがある
擁壁は建物や人の安全を守るためにとても重要な役割を果たしていますが、年月の経過とともに劣化して、亀裂などが目にみえて表れることが多くなるでしょう。
擁壁としての役割を果たせなくなる前に、補修などの対応が必要となります。
場合によっては既存の擁壁を撤去して、新しいものを設置する必要があるかもしれません。
この場合、補修以外の撤去費用もかかるため、費用がかさみます。
それだけでなく、工期も長くなってしまうでしょう。
一方、既存の擁壁の状態によっては撤去せずに、既存のものを残したまま劣化がみられる部分のみの補修をする場合もあります。
その場合、既存の擁壁を撤去する場合と比べると費用はかかりません。
また、工期も短くなるでしょう。
補修費用はどちらが負担?擁壁は隣人との亀裂を生じることもある
年月の経過などにより補修が必要となる擁壁ですが、その際の費用をどちらの敷地所有者が負担するのかという問題もでてきます。
その際には隣人と慎重に話し合いをすることが重要です。
自分の意見を通すだけでなく、隣人の考えや主張を受け、冷静に話し合うことが求められます。
しかし、もし話し合いが行なわれなかった場合、困ったトラブルに発展するかもしれません。
当然ではありますが、いざ補修費用を支払う際に、どちらが負担するのかというトラブルになることは想像に難くありません。
これによって隣人との間に亀裂が生じ、後を引いて後の世代にも影響を与えることもあります。
それを防ぐためにも、あらかじめ擁壁を補修した当時の敷地所有者同士が、しっかりと話し合いをして取り決めを行なっておくことをおすすめします。
また、どのように補修したのかなどの補修内容を書類等で残しておくなども、後の世代に亀裂を残さないために大切といえるでしょう。
石の種類で印象も変わる!
擁壁は主にコンクリートや石などを材料として造られると述べました。
擁壁はその役割が重要ではありますが、使われる素材の種類によっては建物などの印象にも影響を与えます。
ここでは、コンクリート擁壁以外のものをいくつかご紹介しましょう。
●間知石の擁壁
間知石は、石垣などによく使われる材料で、その強度が魅力です。
色は圧迫感のない白を貴重としており、住宅とのなじみもよい印象です。
●玉石の擁壁
玉石を使った擁壁は、様々な形の玉石をうまく組み合わせて造るため、技術力もより必要になるでしょう。
見た目の印象は重厚感を感じさせ、和風の住宅ともよく合います。
●大谷石の擁壁
間知石や玉石に比べ、よくみかけるのが大谷石の擁壁です。
このように、擁壁にも種類があり、これによって建物の印象もがらりと変わります。
住宅を建てる際に擁壁が必要となる場合などは、このことも頭に置いておくとよいでしょう。
また、擁壁に亀裂などの補修が必要となった場合、その費用も種類により違いがありますので注意してください。
そのため、施工会社に詳しい説明を求めることもよいでしょう。
擁壁は横の亀裂に注意!補修の際には慎重な話し合いを
思いの外重要な役割のある擁壁ですが、時折気になるのが亀裂です。
その亀裂は大きく分けて縦と横のものがありますが、主に注意が必要なのは横の亀裂です。
横の亀裂は、いずれ重大な不具合をもたらすことも考えられますので注意が必要といえます。
また、補修の際にはその費用をどちらが負担するのか、隣人との話し合いも重要です。