生活保護受給者の入院中の扶助はどうなる?家賃もその対象?

生活保護を受給していると、生活費や医療費などを始め、実に様々な分野で扶助を受け取ることができます。

しかし、入院しなければならなくなった場合、生活保護の扶助対象がどのようになるのか、ご存知でしょうか?

特に、入院中の家賃の支払いについても、気になるところだと思います。

そこでこの記事では、生活保護受給者における、入院中の家賃を始め、様々な扶助やその注意点についてご紹介していきます。

生活保護の扶助対象に家賃が含まれる

生活保護を受給している方にとって、入院中の家賃がどうなるのかは、気になるところだと思います。

それをご説明する前に、まずは、生活保護制度についてご説明していきましょう。

そもそも生活保護制度とは、様々な事情により生活が困難になってしまった方に対して、「最低限度の生活」を保障しながら、自立をサポートすることを目的とした制度です。

この生活保護は、受給を希望する方の申請書に基づき、国の定めた条件の下で審査が行われ、受給者が決定されています。

生活保護の扶助対象には、生活する中で、実に多くのものが挙げられます。

・生活(食費、被服費、光熱費などの、生活費)
・住宅(賃貸住宅の家賃)
・教育(義務教育に関する不可欠な費用)
・医療、介護(医療・介護費用)
・出産(出産費用)
・葬祭(葬祭費用)

以上のように、人が生活する上で、必要不可欠な事柄を対象に、必要最低限の扶助が受けられるのです。

では次に、生活保護受給者が入院した場合について、入院費などの医療費について見ていきましょう。

生活保護受給者の入院中の医療扶助とは?

前項でもご説明したように、生活保護を受給している場合、必要な医療費は全て扶助対象とみなされます。

そのため、入院費用や入院中の医療費は、生活保護制度によって賄われるので、その費用を自己負担する必要もありません。

では、入院中の食事代についてはどうなるのかご存知でしょうか?

この入院中の食事代は、医療費ではないので、「自己負担の対象」という印象を持つ方が少なくありません。

しかしながら、扶助対象となるのは入院医療費だけではなく、入院中の食事代もその対象となります。

したがって、生活保護を受けている方の場合は、入院中の食事代は全て無料になりますので、この点についても覚えておくと良いでしょう。

では次に、生活保護受給者が入院した場合の、家賃などの住宅扶助について見ていきましょう。

生活保護受給者の入院中の家賃はどうなる?

生活保護受給者が入院中の場合、一定の条件の下で、家賃などの住宅扶助を受けることができます。

基本的には、住宅扶助の範囲は入院後6ヶ月までと決められていますが、入院期間によって変わってきます。

では、詳しく見ていきましょう。

・9ヶ月以内に退院する場合

入院後6ヶ月が経過し、その3ヶ月以内に退院の見込みがある場合、住宅扶助を更に3ヶ月間引き伸ばすことができます。

つまり、その場合に限り、最長9ヶ月間は家賃の住宅扶助を受けることが可能です。

・9ヶ月以上の入院が必要な場合

入院後6ヶ月が経過しても、その3ヶ月以内に退院が見込めない場合には、住宅扶助は6ヶ月間だけに限られます。

つまり、9ヶ月以上の入院が必要な場合でも、家賃の扶助は6ヶ月までとされているのです。

そのため、これでは家賃の支払いができなくなるので、賃貸物件から退去せざるを得なくなりますが、その際の家財を処分する費用に対しては、「家財処分料」という扶助を受給することが可能です。

そして、長期間の入院を終えた場合にも、「転居費用」という新たな住居への移転費用を受給することもできます。

これらの扶助については、自治体よっても若干異なる場合があるので、事前に生活保護担当のケースワーカーに問い合わせてみることが重要です。

では、こういった住宅扶助の上限はどのようになっているのでしょうか。

次項で詳しくご説明していきましょう。

家賃の扶助には地域差がある?家賃に対する生活保護について

前項では、入院中の家賃に対する生活保護受給についてご説明してきました。

先にも述べたように、この扶助は地域によっても少なからず異なる場合があり、その支給される上限額もその地域の自治体に委ねられています。

というのも、生活保護の目的は「最低限度の生活の保障」であるので、地域によっても「最低限度の住居家賃」に差が生じてきます。

つまり、地域での生活形態や物価などの生活水準を考慮した上で、地域差をつけているのです。

例として挙げれば、平成27年のデータによると、単身の場合による住宅扶助の最高限度額は、以下のようになっています。

・東京:53,700円
・大阪:40,000円
・佐賀:29,000円

以上のように、住宅家賃に対する限度額には、大なり小なり差が生じているのが分かりますね。

ただ、住んでいる家賃の値上げや、住宅扶助の引き下げによって、扶助の上限をオーバーしてしまう場合もあります。

そういった場合、オーバーした金額を自己負担できれば、継続して住むことができるケースもあるので、ケースワーカーに相談してみるのが良いでしょう。

入院中や退院時に気を付けたい注意点!

前項では、住居家賃に対する扶助の限度額も、地域によって差が生じてくることをご説明してきました。

先で述べたように、生活保護受給中の入院においては、必要な入院費や医療費は全て扶助の対象になります。

しかしながら、それでも、生活保護を受けている中での入院中や退院時に関しては、知っておくべき注意点もあります。

生活保護受給者が入院した場合、まずは、生活保護対象である生活扶助の支給がなくなります。

その代わりに、入院中に必要な日用品の費用である「入院日用品費」が支給され、2018年時点では、全国一律で22,680円になっています。

この支給については、毎月1日の時点で入院しているか否かによって判断されます。

そのため、例えば5月2日に入院した場合、6月1日までは今まで通りの生活保護が支給されることになります。

したがって、急病でもない限りは、できるだけ月の前半に入院した方が、金銭的にはベターと言えます。

また、退院の場合も、毎月1日の時点で判断されるので、退院は入院の逆で、月末が良いと言えますね。

生活保護費の減額?今後はどうなっていく?

これまでに、生活保護受給者における入院医療費の扶助や、入院中の家賃、そして気を付けたい注意点などをご説明してきました。

生活保護を受給している上では、入院中においても医療費や日用品などの扶助があるため、安心して入院することができます。

しかしながら、2018年現在、生活保護の基準額については、引き下げの検討がされています。

もともと、生活保護基準については、5年ごとの見直しがなされており、2018年がちょうどその年にあたります。

前回行われた2013年度の見直しでは、生活扶助を始め、家賃扶助などの加算額に大幅な引き下げが行われました。

そのため、前回に引き続いて、保護費が減額されるということですから、その当事者や、支援組織、反貧困ネットワークなどが抗議の表明をしています。

こういった反対表明が多いために、生活扶助や家賃扶助などの基準については、基本的には、それぞれの地域の自治体に委ねられる場合も多くなってきているようです。

したがって、家賃や生活扶助の引き下げに関して困ったことがあれば、まずはケースワーカーに相談してみるのがベストと言えるでしょう。

まずはケースワーカーに相談しよう!

生活保護の受給中に入院してしまった場合、それに必要な入院医療費や日用品、そして家賃に対しても扶助が受けられることが分かりましたね。

ただ、入院中の家賃扶助に関しては、基本的に6ヶ月までとされ、さらに、入院する期間によっても変わってくるので、注意が必要です。

いずれにしても、分からないことがあればケースワーカーに相談し、安心して入院できることがベストと言えるでしょう。