日常生活が困難な人のための制度として、生活保護があります。
生活保護を受けている間に、体調を崩したり怪我をしたりして、入院してしまうこともあります。
そのような時、住んでいる家の家賃はどのようになるのでしょうか。
最低限の生活を保障する生活保護
さまざまな事情によって、生活が困難な人がいます。
生活保護は、そのような人に「最低限度な生活を保障する」という制度です。
国が生活を保障し、最低限のお金を支給してくれます。
返済義務がありませんので、返済義務がある奨学金とは違います。
しかし、申請すれば誰でも受けられるというわけではありません。
生活が困難である人でなければ、受けることはできません。
生活が困難であるということは、働くことができず、近親者にも生活を援助してもらえず、預貯金もなく、車や不動産などの財産もない、という状態のことです。
生活保護は、生活が困難な人のための、最後の砦である保障制度なのです。
生活保護を受けるということは、不動産などの財産を持っていないということなのですから、生活保護の人の住居はほとんどの場合アパートなどの賃貸住宅です。
もし、体調を崩すなどして入院してしまった場合には、その家賃はどうなるのでしょうか。
生活保護には家賃の上限がある
入院中の家賃のお話の前に、生活保護では、どのような住居に住むことができるのかをお話します。
住居は、生活の基礎となりますので、もちろん生活保護でも保障されています。
生活保護を受けると、家賃の支払いはどのようになるのでしょう。
それは、月々の生活費の支給とは別に、住宅扶助として家賃の分が支給されます。
しかし、どのような物件に住んでも良いというわけではありません。
生活保護は税金で賄われているため、家賃の支給額には上限が設けられています。
生活保護は、最低限の生活を保障してくれる制度です。
そのため、希望の物件があったとしても、その希望通りにはならないことがほとんどです。
生活保護を受給する自治体内で、住宅扶助の上限金額以内に収まる物件を見つけなければなりません。
住宅扶助の上限金額は、地域によって違います。
しかし、必要最低限の住居ですので、相場よりも安めに設定されています。
すでに住んでいる物件が、上限を超えている場合、上限金額以内に収まる家賃の物件に引っ越すように指導が入ります。
しかし、どうしても上限金額を超えている物件に住みたい場合もあると思います。
例え、「生活費を家賃に充ててもそこに住みたい」といっても、それが認められることはほとんどありません。
生活保護を受給するのであれば、決められた金額の範囲内で生活していかなければならないのです。
入院したら生活費は減額される
生活保護を受けている間に入院をしてしまうということは、あり得ることです。
生活保護を受けている人が入院すると、生活に大きな影響が出てきます。
まず、入院期間が1ヶ月未満であれば、特に問題はありません。
医療費は全額給付されますし、食費も負担はありません。
生活保護費も全額支給されますので、もちろん家賃である住宅扶助の支給もあります。
しかし、入院期間が1ヶ月を超えた場合、生活保護の支給金額が減額されます。
なぜかといいますと、入院していれば、住宅にかかるはずのお金がかかりませんよね。
例えば、電気代や水道代などの光熱費は、かからないことになります。
また、食事も病院で出されますので、食費もかからないことになります。
医療費関しては、全額給付されますので、医療費ももちろんかかりません。
つまり、入院している限り、ほとんどお金を支払うことがありません。
生活保護は、最低限の生活を保障するものですので、光熱費や食費に関わる費用が減額され、「入院患者日用品費」に切り替わるのです。
支給額がゼロになることはありませんが、減額されることには違いありません。
生活保護は、個人単位ではなく、世帯単位で受給するものですが、もし単身世帯であれば、大きく支給金額が減ってしまいます。
複数世帯でしたら、ほかの家族が住宅に住んだままなのですから、そこまで大きな減額はされません。
減額措置が始まるのは、入院して1ヶ月が経過してからです。
入院した月の次の月から減額が始まります。
もし、単身世帯の生活保護を受けている人が、長期入院をしてしまった場合、住宅の家賃はどのようになるのでしょう。
入院中の家賃はどうなる?
住宅については、入院中は住んではいないものの、家賃はかかってしまいます。
1ヶ月以内に退院できれば良いのですが、入院が長期化してしまうこともあります。
生活保護を受けている人が入院している場合、アパートなどの賃貸物件の家賃は、6ヶ月まで費用を受給することができます。
また、6ヶ月以上の入院になったとしても、「あと3ヶ月以内に退院できる」という診断書を医師に書いてもらえるのであれば、3ヶ月分まで延長して家賃が出ます。
しかし、これは3ヶ月が限度です。
入院がそれ以上に長引いしまった場合、家賃の支給がなくなりますので、月々の家賃を支払うことができなくなります。
そのため、アパートを退去しなければならなくなるのです。
アパートの部屋を引き払うことになり、荷物は保管場所に移動しなければなりません。
家財を処分するのであれば、「家財処分料」が支給されます。
家財処分料は、上限金額が決まっておらず、何社か見積もりを取って、その中で最も安い金額が実額で、全額支給されます。
家財を処分しない場合、最長で12ヶ月間「家財保管料」が支給されます。
1ヶ月13,000円です。
しかしこれは、1年以内に退院する見込みがある場合に支払われるものです。
1年以上になる場合は支払われません。
退院後の家賃も保障される
生活保護を受けている間に長期の入院をし、家賃の支給がなくなってアパートを引き払ったとします。
その後、病気が治り退院するときには住居がありません。
新しい住宅に住み始めるのには、お金が必要ですよね。
その際の敷金や礼金の費用は、申請すれば支給されます。
また、生活保護を受けていれば、公営住宅の抽選も優遇されやすいとされています。
障害者、母子家庭、高齢者など、困っている度合いによって優先度をつける場合もあります。
生活保護を受けている場合、生活が困難ということですので、優先的に見てもらいやすいのです。
しかし、住んでいる自治体によっては、公営住宅の応募が多く、高倍率になってしまうこともあります。
その場合は、受かりにくいこともありますので、何度か応募することになる可能性もあります。
生活保護でも入院中に自己負担があることも
生活保護を受けている人が入院すると、家賃は6ヶ月間は保証され、医療費や食費について負担がないということがわかりました。
しかし、入院中でも、自己負担が発生することもあります。
自己負担の考え方については、健康保険の適用範囲と同じと考えるとわかりやすいと思います。
例えば、病院の個室です。
入院すると、通常、数人で使う共同の病室で過ごします。
しかし、金銭的に余裕があれば、有料で個室に入ることも出来ます。
これは自己負担であり、健康保険の適用外ですよね。
生活保護も同じく、個室の使用料は自己負担です。
個室に入りたくて、親族に金銭の援助を受けた場合、受給額が減額されることもあります。
また、病衣のリース代や日用品なども自己負担です。
入院中は生活保護費が減額されますが、「入院患者日用品費」が支給されます。
その中から、これらの支払いをすることになります。
生活を立て直すにはまず体調から
いろいろな出来事によって、生活が困窮してしまうこともあります。
そのようなときに、最後のセーフティネットになってくれるのが生活保護です。
生活保護では、入院についても保障してくれます。
入院費が払えないから、病院に行けないということはありません。
しっかり体調を治して、生活を立て直しましょう。