2013年8月、通貨発行権を持つ中央銀行に対し、ハンガリーが反旗を翻したことは、世界にとって衝撃を与えました。
このことは、日本のメディアを通して報じられることはありませんでしたが、近年の日本でも、不景気やデフレーションの懸念のため、通貨発行権を政府に戻す、政府紙幣について様々な議論が交わされています。
そこで、この記事では、通貨発行権や政府紙幣の議論について、詳しくご説明していきます。
通貨発行権とは?政府と日本銀行について
「政府紙幣」についてお話ししていく前に、そもそも、「通貨発行権」という言葉は、あまり一般的に知られていないのではないでしょうか?
「通貨発行権」とは、文字通りに「通貨を発行する権限」を意味するものです。
現在、日本を含めた大半の国では、政府が管轄している印刷局や印刷会社で製造した紙幣を、一時的に「中央銀行」に交付し、その「中央銀行」が銀行券として流通させることが一般的です。
したがって、政府の管轄下にあることから、建前的には政府下に通貨発行権があります。
しかしその一方で、日本の硬貨には、「日本国」の刻印があり、紙幣には「日本銀行券」と書かれていることが分かります。
つまり、政府が持っているのは「硬貨」に対する発行権だけで、「紙幣」の発行権を持っているのは「日本銀行」が有していることになります。
そのため、紙幣の額の方が断然大きいので、実質的に通貨発行権を持っているのは日本銀行だとも言われています。
この仕組みからも分かるように、日本を含めた多くの国では、日本銀行のような「中央銀行」が、通貨発行権を有しており、世の中のお金を流通させているのです。
では、「中央銀行」についてのご説明をしていきましょう。
中央銀行の役割とは?通貨発行権と中央銀行について
「中央銀行」とは、国家において金融機関の要となる重要な存在で、金融政策を行いながら金利と物価の安定化を図ることから、「通貨の番人」とも言われています。
中央銀行の役割を簡単にご説明すると、以下3つの通りになります。
①中央銀行がその国の紙幣を発行する(通貨発行権を持つ)
②中央銀行は、政府や市中銀行に対して預金を受け入れ、資金を貸し出す
③国の預金を受け入れることで、政府の資金管理をする
つまり、紙幣を発券する銀行であり、銀行の銀行であり、政府の銀行でもあるのです。
この中央銀行が、日本を含めて世界的に議論されているのですが、その理由については、政府から独立した機関であり、場合によっては政府の介入が効かないことがあるからです。
では、次項で詳しく見ていきましょう。
中央銀行や日本銀行の独立性とは?政府と癒着しない政策を
まず、世界経済的に、中央銀行は政府から独立しているもので、例えば金利などの金融政策に対しては、独自の判断で行える権利があります。
もともと、世界的に見れば、世界の中央銀行の大半が政府の影響下にありましたが、1980~1990年の間に、多くの中央銀行は独立性を認められています。
中央銀行が政府から独立している理由は、主に以下になります。
①金融政策において、政府に癒着しない中立的・専門的な判断を行うため
②政府から発行された国債を、中央銀行が通貨を発行することによって、直接引き受けることを避けるため
特に、政治的介入による思惑や判断によって、流通させる通貨量が適切に行われなければ、急激なインフレーションなどによって、経済は混乱に陥ります。
このような観点から、中央銀行の独立性が確立され、通貨発行権が与えられているのです。
また、日本においては、1998年の日本銀行法改正によって、日本銀行の独立性も確立されています。
しかし、中央銀行の独立性は、メリットだけではありません。
例えば、政府が雇用対策の意向を示しているにも関わらず、独立性を持つ中央銀行がインフレーション抑制を優先した場合、デフレーションや失業率が高止まりになるリスクがあります。
このように、政府と日本銀行の意向が対立した場合、両者の政策に齟齬が生まれ、足並みを揃えることができないケースもあるのです。
そこで、近年では、このような中央銀行の通貨発行権を政府に戻す、「政府紙幣」の議論が世界的に飛び交っています。
では、「政府紙幣」とはどのようなものなのか、次項で詳しくご説明していきます。
「政府紙幣」とは何か?日本でも議論される通貨発行権の移動
「政府紙幣」とは、中央銀行とは別に、政府が独自で発行する紙幣を指します。
つまりこれは、実質的な「通貨発行権」の主導権を、政府が握ることを意味するのです。
近年、日本においても、政府紙幣に関する議論が交わされていますが、特に、活発的に議論されたのは、1990年のバブル崩壊後です。
バブル崩壊後の日本では、デフレーションが長く続き、デフレスパイラルに陥っていました。
①物が売れないので価格を下げる
②低コスト化は技術革新によるものではないため、企業の利益は減少する
③賃金がカットされる
④さらに消費が伸び悩む
⑤①に戻る
これは俗に、「失われた20年」とも言われています。
この景気後退期に、政府紙幣を発行することで、流通する通貨量を増やし、デフレーションを脱却することが活発に謳われていました。
また、現在では、日本の借金が1000兆円を超えたと言われていますが、政府紙幣発行のもう一つの目的は、国債発行をやめることです。
つまり、国債発行をやめて紙幣を発行することで、借金を打ち消してしまうという考えです。
また、政府紙幣は国債とは異なり、金利が付かず債務にならないメリットもあります。
では、仮に日本が政府紙幣の発行を行い、インフレーションになった場合、私達の生活はどうなるのでしょうか?
日本が政府紙幣を発行したら?ハイパーインフレーションへの懸念
仮に通貨発行権が完全に日本政府の主導になり、政府によって政府紙幣が発行されれば、日本経済はインフレーションに舵を切ります。
そもそもインフレーションとは、継続的に物価が上昇することですが、分かりやすくご説明すると、以下の通りになります。
①景気が良くなる
②給料が上がる
③需要が増えるので物価が上がる
この繰り返しが、継続的な物価上昇に繋がります。
これは、景気が良くなり、世の中にお金が回ることですから、日本経済にとっては良い傾向になります。
しかし、もし政府紙幣が急激な量で発行されれば、インフレーションを飛び越えて、ハイパーインフレーションに繋がる恐れがあります。
つまり、政府紙幣で懸念されていることは、このハイパーインフレーションになることです。
これにはいくつか前例があります。
第一次世界大戦後、ドイツではハイパーインフレが起こりました。
このとき、これによって最も苦しんだのは、年金や預貯金の利子で生活している高齢者達であったと言われています。
と言うのも、労働者であれば、インフレの影響で給料も上がりますが、それに対して、年金や預貯金は増えるわけではありません。
むしろ、その国の貨幣の価値は安くなりますから、年金や預貯金は紙くず同然になってしまいます。
したがって、年金や預貯金を頼りにしている高齢者は、物価の上昇によって困窮し、生活が困難になったとされています。
そのため、仮に日本で政府紙幣が発行されれば、最も苦しむのは、年金生活をしている高齢者だと指摘されているのです。
いずれにしても、通貨発行権の全権が政府主導になることは、日本銀行の存在意義も問われることを意味しますし、法整備も行わなければなりませんから、現実的な政府紙幣については、なかなか難しい問題と言えます。
世界のお金はロスチャイルドが支配している?陰謀論について
これまでに、世界的な通貨発行権を通した中央銀行、そして日本の日本銀行についてご説明してきました。
通貨発行権を知る方ならご存知かもしれませんが、日本銀行を含めた世界の中央銀行は、ロスチャイルドによって牛耳られている説も存在しています。
「ロスチャイルド」という言葉だけなら、皆さんも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
ロスチャイルドとは、欧州の財閥で途方も無い大富豪ですが、世の中のお金を支配していると言われている銀行家です。
陰謀論のような話になってしまいますが、このロスチャイルド一族は、世界の中央銀行、そして日本銀行もその影響下にあるという説もあります。
と言うのも、1881年に日本銀行を設立した大蔵大臣、松方正義は、ロスチャイルド一族の影響下にあったと言われています。
そして、通貨発行権を日本銀行(中央銀行)に独占させるために、なんらかの働きかけがあったのではないかとされています。
また、日本銀行の株の55%は日本政府が所有していますが、残りの45%は非公開にされているので、ロスチャイルド一族がある程度は所有しているのではないか、との説もあります。
こういった陰謀論は、真実か否か定かではないですが、興味のある方は調べてみるのも良いですね。
中央銀行に対する今後の動きは?
通貨発行権について、中央銀行や日本銀行、そして政府紙幣を通してご説明してきました。
中央銀行のような日本銀行は、政治的介入を避けるために独立性が認められ、日本経済を安定させるためには重要な金融機関です。
現在では、世界的に中央銀行からの脱却が謳われ、通貨発行権を実質的に政府に戻す動きがありますが、今度どのように世界が動いていくのか、注目するところですね。