アパートなどは、貸主にとっては大事な資産ですよね。
そんな大事な資産が、不運なことによって、火災に巻き込まれてしまうこともあります。
そのときに、火災保険に加入していれば補償を受けることが可能ですが、原因が地絡や漏電であっても補償を受けることはできるのでしょうか?
この記事では、まず地絡と漏電の違いをみていき、それらが原因で火災が起きても火災保険でも補償されるのかをお話ししていきます。
地絡と漏電の違いって何?【地絡とは】
それでははじめに、地絡と漏電の違いについてみていきましょう。
一見、これら2つは同じように感じますが、全く異なったものです。
最初は地絡(ちらく)についてお話をしていきます。
地絡とは、高圧配電線や送電線が雷撃によって、碍子(がいし)破損や樹木接触などが起こり、大地に電流が漏れることをいいます。
碍子とは、電線を支持し絶縁するために、電柱や鉄塔などに取りつける絶縁体の器具のことです。
絶縁体は本来、電気や熱を非常に通しにくい物質です。
そのため、電柱には電線がつながっていますが、この絶縁体をつけることにより、人が電柱に触れても電気が伝わらないようになっています。
しかし、落雷などによってこの絶縁体が破損してしまうと、電柱にも電気が伝わってしまいます。
そうして、電柱を通じて地面に電流が流れてしまい、大地にまで電流が漏れてしまうのです。
このことを地絡といいます。
地絡と漏電の違いって何?【漏電とは】
つぎに、漏電についてお話をしていきます。
漏電とは、電流が正規の通路以外に漏れることをいいます。
電流は本来、決まった電気回路以外には流れません。
そして、地絡と同様、絶縁体が備わっているので、電流が他の回路に漏れるということはありません。
しかし、異常事態により絶縁体が破損し、元々の電気回路とは別の回路が作られて、そちらに電流が漏れてしまうことがあります。
異常事態の原因の多くは、家電製品などの老朽化です。
家電などが老朽化してしまったことにより、電線が傷ついてしまったり被覆がはがれてしまい、漏電につながってしまうのです。
例えば、電化製品に触れてピリッと感じたことはありませんか?
これは何らかの原因で、その電化製品が漏電したことが考えられます。
ピリッと感じるだけならまだ平気ですが、最悪の場合、漏電が原因で命を落とすことにもつながります。
漏電の規模によっては、火災にまで発展することもあるのです。
ですから、アパートを所有する方は漏電によって大事故にならないよう、備えなくてはなりません。
もちろん、先ほどお話をした地絡も意味に違いはありますが、大事故になる可能性も否定できませんので、注意しなければいけないものです。
ショートは地絡や漏電と違いはあるの?
先ほどまで、地絡と漏電の違いについてみてきましたが、他にも意味の似ているものがあります。
雷が鳴っている日に、よく「ショートした!」ということを耳にしませんか?
このショートも、地絡や漏電と意味が少し似ていますが、全く異なるものですのでここで違いを知っておきましょう。
ショートは短絡(たんらく)とも呼ばれ、何らかの理由で2本の電線を接触させてしまったときに起こることをいいます。
2本の電線とは、プラスの配線とマイナスの配線のことです。
この2つの電線を直接つないでしまうと、「バチッ」と火花を散らすなどの現象が起こります。
ショートする原因として考えられるのは、電気回路が誤作動を起こしたり、電気回路の設定値よりもはるかに大きい電流が流れてしまうことです。
火花を散らすだけなら良いのですが、異常発熱によって火災にもつながることがあります。
また、スマートフォンやタブレット端末などの機器がショートを起こすこともあります。
これが起こってしまうと、これらの機器が故障だけでなく大切なデータなどが消えてしまうこともあり得るのです。
ですから、家電だけでなくスマートフォンなどの機器も、使用する際はショートしないために注意しなければならないものなのです。
地絡・漏電・ショートは火災保険で補償される?
地絡と漏電、ショートの違いについてお話をしてきましたが、おわかり頂けたでしょうか?
似ているようで、実は意味的には全く異なったものですので、知識の1つとして身につけて頂けると幸いです。
そして、大事な資産の1つであるアパートで、これら3つのことが起こった場合についてお話をしていきます。
特に、築年数が比較的古いアパートの場合は、漏電やショートになる可能性が高いのです。
もし、これらが起こり、電化製品などが故障してしまったら火災保険で補償はされるのでしょうか?
火災保険には、不測かつ突発的な事故という火災保険の支払要件がありますので、地絡が原因の場合は補償されることがあります。
それでは、漏電やショートについてはどうなのでしょう。
このとき、火災保険につけられる以下の特約によって、補償されるかどうかが変わります。
『電気的・機械的事故は建物の火災保険しか補償しない』
電気的・機械的事故というのは、漏電やショートなどで、家財が外見は損害がないけれど実質使用不能になった場合のことをいいます。
この特約によって、漏電などが原因で故障した家電が補償されることもあります。
しかし、よくみてみると、「建物の火災保険しか補償しない」とされていますよね。
電化製品は、「建物」と「家財」に分けられるのです。
どのように分けられるかというと、簡単に取り外すことが可能もしくは不可能かで判断されます。
例えば、エアコンのようなものは、自分では取り外しが困難ですので「建物」に当てはまります。
反対に、「家財」に当てはまるものは、扇風機などのようなコンセントでつながっていて、簡単に取り外すことができるものです。
ですから、漏電やショートで電化製品が壊れてしまったとき、エアコンなどの「建物」に当てはまるものは火災保険で補償されますが、扇風機などの「家財」に当てはまるものは補償されないように決められています。
もちろん、この特約をつけていなければ全て適用されませんので、火災保険に加入するときはこの特約がついているか確認しておくことが重要です。
扇風機などの家財が火災保険で適用されるのは、外から雪が入り室内の家財に直接被害を与えた場合です。
しかし、なかなか起こりにくいことですので、家財が火災保険で補償されるのはあまりないと認識していたほうが良さそうです。
大事なアパートが火災!地絡が原因でも起こるの?
地絡と漏電、そしてショートが火災保険で補償されるのかどうかの違いをお話ししたところで、万が一これらが原因で大きな事故につながった場合をみていきましょう。
これら全てに共通して起こり得る事故は、火災です。
漏電やショートは先ほど火災になり得ることをお話ししましたが、地絡も関係あるのか疑問に感じる方もいるかと思います。
まず、地絡によって火災が引き起こされるのかをお話ししていきます。
地絡は電撃が原因で大地に電流が漏れることですので、火災になってしまうのかわかりにくいものです。
しかし、アパートには送電線などがありますよね。
送電線にも絶縁体がついているため、何の問題もなく入居者の方々も電気を使うことができています。
ところが、アパートの送電線の絶縁体が落雷などで破損してしまったら、その電流がアパート全体に漏れてしまうのです。
送電線の電圧は数十万ボルトともいわれていますので、漏れてしまうと感電してしまったり火災につながることが考えられるのです。
ですから、漏電やショートだけでなく、地絡にも火災になる可能性が考えられるわけです。
漏電などでアパートが火災!火災保険で補償される?
地絡、漏電、ショートは意味に違いはありますが、火災を引き起こしてしまう恐れがあることは同じです。
それでは、これらが原因で火災が起きた場合、アパートが加入している火災保険で補償はされるのでしょうか?
結論から申し上げれば、補償されます。
火災保険の補償内容には、「過失・隣の火事で被害にあった・放火で家が焼けたなどの場合に補償される」と明記されています。
ですから、何が原因であっても火災になってしまったら、火災保険で補償を受けることは可能なのです。
家電であっても、火災が起きてしまえば「建物」も「家財」も補償を受けられます。
では、どのくらい補償を受けられるのでしょうか?
保険金は、以下のようにして計算されます。
『損害額ー自己負担額=損害保険金』
損害額とは、協定再調達価格というものを基準として算出し、保険の対象を事故発生時の状態に復旧するのに必要な費用のことをいいます。
自己負担額は免責金額ともいい、この金額までは保険を使わず自己負担するというものです。
例えば、建物が損害を受けたときに1,000万円を最大で給付される保険に、自己負担額を5万円という設定をしている場合でみていきます。
このとき、500万円の損害があった場合は495万円が支払われ、5万円は自己負担するという契約になります。
免責金額というのは、保険会社が責任を免れる金額という意味です。
そして、損害保険金は、万が一のときに受け取れる最終的な保険金額のことをいうのです。
損害保険金は、契約当初に決めた保険金額が最大となります。
契約当初に、建物に最大1,000万円を受け取れる火災保険を契約した場合、アパートが全焼したとしても1,000万円が最大になります。
もし1,200万円分の損害があったとしても、当初の取り決めで1,000万円の保険金までしか支払われませんので、200万円分は自己負担となってしまいます。
とはいっても、火災保険に加入していなければ、このような補償は受けられませんので、大事な資産であるアパートを守るためにも火災保険に加入することは重要なことですね。
大切なアパートを守るために!火災保険はマスト!
地絡や漏電の違いから、火災保険で補償されるかをお話ししてきました。
大切なアパートを守るためにも、火災保険にはぜひ加入しておいてほしいものです。
また、火災保険には「家賃補償」というものをありますので、火災などで家賃が途切れてしまったときも家賃の補償を受けることができます。
万が一の場合に備えて、火災保険の見直しをしてみても良いのではないでしょうか。