長期に渡る家賃滞納者への対応は、賃貸経営者にとって悩みの種ではないでしょうか?
家賃滞納者に対して裁判所へ訴えることは、一般的にあまり起こりえるものではないために、敬遠してしまいがちです。
しかし、あまりに長い間、家賃滞納者に困っているようであれば、裁判所を通して解決することも、一つの方法です。
この記事では、裁判を通す前にしておくべきことを始め、裁判の流れや注意点をご説明していきます。
家賃滞納者へはどう対処する?裁判所に行く前にするべきこと!
長期に渡って家賃の滞納をされている経営者にとって、裁判所を通して解決することは、確実な方法と言えます。
しかし、裁判所を通す前に、こちらでできる催促は全て行った上で、最終的な手段として裁判を通すことがベターです。
では、家賃滞納者に対する催促について、それぞれの順に見て行きましょう。
・電話による支払い要求
まず、最初の手段として、電話で滞納された家賃を要求します。
これは、滞納から1週間以内の滞納者に対する催促の方法です。
・督促状を送る
滞納者が電話での対応に応じず、滞納が1週間以上続いた場合、督促状(とくそくじょう)を使って改めて請求します。
・連帯保証人に伝える
家賃滞納者の連帯保証人に、賃借人が滞納している旨を伝え、連帯保証人からもプレッシャーを与えます。
・催告書を送る
何度も滞納の請求をしたにも関わらず、少なくとも3ヶ月超えても何らかの対応がなかった場合は、催告書を送ります。
催告書は、滞納者に対する支払い要求だけではなく、契約解除も催促する内容を入れたもので、いわゆる「最終通告」になります。
催告書を送る際は、内容証明郵便を介して郵送するのがベターで、後々裁判をする際に、証拠書類としても使えます。
では続いて、家賃滞納を催促する際に、知っておきたい家賃滞納の時効について、ご説明していきます。
家賃滞納にも時効がある?その時効に気を付けよう!
前項では、家賃滞納者を裁判所で訴える前にするべきことを、詳しくご説明してきました。
しかし、長い間家賃を滞納されたまま、手に負えない賃貸経営者も少なくないのではないでしょうか?
そこで注意したいのが、家賃滞納にも借金と同様で、「時効」の制度が適用されるということです。
これについてはあまり知られておらず、実際に数年分の滞納家賃が無効にされてしまった、賃貸経営者も多いです。
では、滞納された家賃は、どのくらいの期間で時効が成立してしまうのでしょうか?
結論から言うと、民法において、毎月定期的に生じる家賃などは、借金と同様に5年の時効が定められています。
つまり、5年を超えた滞納は時効によって無効になりますが、その一方で、5年以内の滞納家賃は請求することができます。
また、賃貸経営者は、時効間近に「時効の阻止」をすることによる、時効の中断をすることが可能です。
ただ、この「時効の阻止」による手続きは、非常に大変な手続きなので、時効までに家賃滞納の解決をすることをおすすめします。
では次に、家賃滞納者に対する最終的な手段である、裁判所への訴状提出などについてご説明していきます。
家賃滞納者を訴える!裁判所で民事訴訟するには?
では早速、家賃滞納者に対する裁判所での民事訴訟について、順に見ていきましょう。
①訴状の提出
まず、民事訴訟を始めるには、訴状の提出を行いますが、以下についての記入が必要です。
・原告(訴える側)と被告(訴えられる側)の名前、住所
・請求の趣旨(原告に求める内容)
・紛争の要点(請求の原因)
また、訴訟の趣旨を証明できるものがあれば、例えば内容証明郵便を介した催告書などを添付して提出します。
その後、裁判所から被告側に訴状が通知された時点で、訴訟は成立となります。
②答弁書提出と受理
答弁書とは、被告側が訴状に対する、以下のような認否を記入した書類です。
・請求の趣旨に対する答弁の認否
・紛争の原因に対する認否
答弁書が届いたら、訴えた原告側は証拠書類や証人の準備に入ります。
証拠書類には、契約書を始めとした、被告とのやり取り全てが対象になります。
では引き続き、裁判について見ていきます。
裁判所での口頭弁論から判決まで!その流れと内容
それでは、前項に引き続き、裁判所での口頭弁論から、判決まで見ていきましょう。
③口頭弁論
口頭弁論では、それぞれの主張や証言、証人への尋問などが行われます。
また、判決を決める上では、十分な証拠や証言が揃うまで、口頭弁論は数回に分けて続けられます。
【和解】
口頭弁論の途中で、裁判所による和解の確認をされることがあります。
多くの訴訟は、話し合いでは解決する余地がなかった上での、最終的な手段での裁判ではありますが、和解にもいくつかのメリットがあります。
・早い解決ができる
・相互が納得しているため、退去手続きが進めやすい
以上のように、和解には今後の対処がスムーズに行えるメリットがあります。
【判決】
原告と被告の和解に至らず、判決に十分な証拠が揃ったら、いよいよ判決が下されます。
この判決に不満があれば、上級裁判所に対して上訴をすることも可能です。
以上が、裁判所での裁判内容と流れになります。
また、家賃滞納者への対応には、裁判を通さずに、弁護士に依頼する方法もあります。
では、次項で詳しく見ていきましょう。
弁護士を通した家賃滞納の解決!そのメリットは?
前項を見てみると、家賃滞納の問題を裁判所で解決するには、それに労する準備や時間がそのつど必要になってきます。
では、裁判所を通さずに、弁護士に依頼した場合のメリットを見ていきましょう。
・裁判前の和解率が高い
・滞納者に対して、弁護士が直接対応をしてくれる
・弁護士が干渉しているため、今後の滞納に歯止めが効く
・時間や費用を抑えられる
以上のように、裁判所で訴訟を起こすことに比べると、様々な手続きをする必要がないため、労力的な負担も軽減することができます。
また、その依頼者に合ったアドバイスや解決方法を提案してくれるので、安心して相談ができます。
弁護士によっては、費用の支払いも分割で対応しているところもあるので、弁護士による解決を考えている方は、相談してみると良いでしょう。
裁判以外にも斡旋機関を使った解決方法も!
これまでに、家賃滞納者への対応として、裁判所を通した解決法や、弁護士への相談などをご紹介してきました。
裁判や弁護士に頼る以外にも、他の解決方法がいくつかあります。
では、家賃滞納者に対する解決方法を、それぞれ見ていきましょう。
・民事調停
民事調停とは、滞納者が賃貸経営者の話し合いに応じる意思がある場合は、調停手続を行い、裁判所の調停委員を当事者の間に挟むことで、円満な話し合いをして解決に導いていくものです。
・紛争解決センター
紛争解決センターとは、日本弁護士連合会などが運営している斡旋機関です。
裁判所においては、法律の下に判決を下すため、当事者の納得のいかない結果になる場合があります。
そこで、この紛争解決センターでは、法律の訴訟とは別の視点から問題を見ていくことで、納得のいくような解決を目指しています。
以上が、主な斡旋機関になります。
上記の斡旋機関は、裁判よりも低コストなために、相談しやすい機関になっています。
また、これら以外にも解決方法はありますので、気になる方は是非調べてみてください。
自分に合った解決方法を
家賃滞納者への対応には、まずは、電話や督促状などを使った支払い催促を行うことが重要です。
しかし、それでも長期に渡る滞納が続いた場合は、最終的な手段として、裁判所を通した民事訴訟を起こすことが、確実な解決方法と言えます。
ただ、裁判を起こすのも大変な時間と労力を使うので、弁護士や斡旋機関を利用することもおすすめします。
いずれにしても、自分に合った解決方法を探してみましょう。