大阪市西成区は治安が悪い?飛田新地やあいりん地区とは?

大阪在住の方ならご存知だと思いますが、大阪市西成区は治安が悪いと言われています。

西成区といえば、日本最大級の遊郭街「飛田新地」は有名ですよね。

そして、その西側に広がる通称「あいりん地区」は、日雇い労働者の宿泊施設などがあり、メディアでもたまに取り上げられるいわくありげな地域です。

今回はこの特異な2つの地域に触れながら、西成区の治安について考えていきましょう。

西成区の治安の悪さは家賃相場に現れている

西成区というと、大阪では「女性の一人暮らしに不向きな街ナンバー1」と言えるでしょう。

私自身、大阪に住んで20年以上になり、その間、3回ほど引っ越しをしましたが、西成区に住もうとは思いませんでした。

なぜかというと、飛田新地やあいりん地区の存在を知っていたからです。

知っていたといっても、実際にそこを訪れたわけでなく、近づいてはいけない場所というイメージを持っていたわけです。

そのくらい、西成区の「治安が悪い」というイメージは、大阪では定着しています。

そしてそれは、家賃相場に如実に現れています。

ある住宅サイト調べですが、キタと呼ばれる「梅田」のある大阪市北区の家賃相場は、ワンルームで5.7万円、3LDKでは19.4万円です。

また、ミナミと呼ばれる「難波」のある中央区では、ワンルームが5.8万円、3LDKで16万円です。

そして天王寺区では、ワンルームが5.8万円、3LDKで14.1万円です。

対する西成区は、ワンルーム3万円、3LDKで9万円と、家賃相場の低さがうかがえます。

治安が悪く人気がないため、地価が安く家賃相場も安いと言えるのではないでしょうか。

飛田新地やあいりん地区以外の西成区の治安

では、本当に西成区は治安が悪いのでしょうか。

西成区の治安を見ていく前に、まずはその位置関係について説明しておきましょう。

西成区は、大阪市の南部にあり、東西南北をそれぞれ阿倍野区、大正区、住之江区、浪速区に囲まれています。

浪速区には、いわゆる新世界と呼ばれる通天閣のある地域があり、先ほどのあいりん地区はそのすく南に位置しています。

そして飛田新地は、あいりん地区のすぐ東側にあります。

西成区全体から見るとこの2つの地域は、北東の角の一角で、区全体の1割にも満たない地域でしかありません。

そして西成区は、他にも天下茶屋、岸里、鶴見橋、津守、千本、玉手などの広いエリアを有しているのです。

ただ、この2つの地域の特異性から、まるで西成区を代表する地域であるように言われているのでしょう。

しかし、西成区の他のエリアは、近隣の区とさほど違いはないといってよいでしょう。

西成区とそれを囲む4区や近隣の南東部の区は、大阪のなかでも比較的庶民的な、いわゆる下町エリアです。

もちろん北区や中央区などとは一線を画していますが、西成区も一般的な下町エリアと言えます。

家賃相場でもわかるように、物価が安く庶民的で、入り込めば住みやすい地域といってよいでしょう。

ただ、飛田新地やあいりん地区のイメージが先行して、治安の悪い場所とひとまとめにされているのが現状です。

犯罪発生件数から見る西成区の治安

ところで、治安を考える際にデータとして犯罪率がよく用いられますが、西成区の犯罪率は、実際それほど高いとはいえません。

大阪市のHPに発表されている、平成30年1月末の犯罪発生件数のデータで、西成区の犯罪発生件数は154件ですが、これは全区の平均値程度の発生件数です。

一番多いのは中央区の527件で、次いで北区の524件、次が浪速区の243件という具合で、西成区が少ないとは言えませんが、多くもないのです。

内訳を見てみると、一番多いのが自転車泥棒で26件、次が車上狙いの12件で、ひったくりにいたっては1件だけでした。

このことから、イメージのような歩いているだけで危ないという治安ではないことがうかがえます。

逆に、キタやミナミの繁華街の方が気が抜けないと言えるでしょう。

ただ、やはりあいりん地区は、危険でないとは言えないようです。

あいりん地区だけのデータなどはありませんが、実際に西成区に住んでいた、また住んでいる人のブログなどから、それがわかります。

この地区に入ってきた車を、大勢でドンドン叩いて追いかけているところを見たそうです。

このような西成区の地域を一言で表すなら、飛田新地は「遊郭街」ですが、あいりん地区は「危険地域」、その他の地域は「下町」と言えそうです。

西成区の飛田新地とはどんなところか

では、その中身をもう少し詳しく掘り下げていきましょう。

まずは飛田新地です。

西成区の飛田新地は大正時代に築かれた遊郭街ですが、1958年の売春防止法で、日本ではもう表向きには遊郭は存在していません。

飛田新地でも、遊郭ではなく料亭や旅館として営業しています。

私は飛田新地を訪れたことはありませんが、もう一つの遊郭街、大阪九条の松島新地を歩いたことがあります。

歩いたのは昼間で、近くに住む姪のところを訪ねようとして迷い込んだだけでしたが、そこは小規模の建物が密集した旅館街でした。

ただ、ひっそりとしていて、旅館の前を掃除する老齢の従業員さんくらいしか見かけませんでした。

ところが、あるひとつの旅館のガラス戸の向こうを見て、ドキッとしたことを鮮明に覚えています。

そこには、きれいに化粧をし、胸の開いた青いドレスを着た若い女性が、正面を向いて座っていたのです。

そのショーケースの中の商品のような佇まいに、遊郭という言葉が思い出され、ハッとしたのです。

飛田新地も松島新地と同様に、表向きは旅館として営業していますが、内実は変わっていないのでしょう。

男性はともかく、女性が一人でふらふら歩く場所ではないと言えます。

もちろん、夜の街ですので、治安の面でも住むには不向きと言えるでしょう。

西成区で飛田新地と並び称されるあいりん地区とは

次に、飛田新地とともに西成区のイメージを悪目立ちさせているといってもよい、あいりん地区について見ていきましょう。

地名としては釜ヶ崎で、年配の方はこちらの方がイメージしやすいかもしれません。

JRの新今宮駅の南側一帯を指しますが、日雇い労働者が集まり、簡易宿泊所や安宿が立ち並び、生活保護受給者も多い地区です。

また、三角公園や四角公園などでは、炊き出しが行われており、いわゆる路上生活者のテントなども立ち並んでいます。

本来なら公共の公園にテントを張って寝泊まりするのは禁止されていますが、ここでは暗黙の了解として黙認されているようです。

また、2010年代前半くらいまでは、無許可の路上販売なども普通に行われていました。

私もテレビの特番で、生活保護受給者が病院でもらってきた薬などを、路上で販売しているの観たことがありました。

ひと昔前は、暴動をはじめ麻薬密売などの犯罪の温床でもあり、よくメディアに取り上げられていたものです。

その名残か、この地区の公共の建物の周囲はやたらと頑丈な作りの柵で囲まれていたりします。

民家の窓にも必ず格子が付けられ、治安の面で対策がなされているようです。

西成区の治安は確実によくなってきている

この地区では、今でも毎日夜8時になると警察の見回りがあり、歩いていると職務質問されたりするそうです。

そして、度重なる警察の取り締まりや摘発によって、昨今はこの地区に変化が訪れているといいます。

路上販売や麻薬密売などもなくなり、比較的治安が安定してきています。

また、何よりも若い世代がこの地区を選んで飲食店を出店するなど、危険な街から庶民の暖かさが感じられる下町として、生まれ変わろうとしているのです。

本当にそうなれば、東京でいう下北沢などのように、人気の街になる可能性もあるでしょう。

そして、この地区でも、普通に歩いているだけで危険なわけではありません。

興味本位に訪れて、路上で人の写真を撮るなど、誰でも嫌がるようなことをしない限りは、何かが起こるわけではないのです。

普通に食事を目的に訪れる、話を聞きたければ礼儀をわきまえて話しかけるなどすれば、逆に都会よりも暖かく接してくれる街といえるでしょう。

西成区の治安について、飛田新地とあいりん地区に触れながら述べてきました。

確かに、西成区は治安のよい街とは言えません。

ただ、過去のイメージから今変化を遂げようとしていることは確かですし、西成区全体で見れば、決して住みにくい街ではありません。

逆に庶民的で物価が安く、人情味のある街といえるのではないでしょうか。

西成区の若い世代は希望の星である

今回は西成区について見てきました。

実は今学校などでも、変化が起きているといいます。

あるブログで「学力はまだ高いとはいえないが、それを変えていこうとしている子供たちの頑張りが見られる」と、現役教師の方が述べておられました。

そして、「この子たちが社会に出たときに、西成区というだけで特別視されないようにしなければ」と続けておられました。

それがとても印象的であったことを最後に書き加えておきたいと思います。