受け取っていた敷金を返金する!そのときはどう仕訳する?

大家さんたちは、ご自身が所有するアパートなどの入居者が決まったときに、敷金をはじめに受け取りますね。

退去時には、原状回復費用を敷金から差し引き、残った分を返金することになります。

このときの敷金は、どのように仕訳すれば良いのでしょうか?

順を追ってみていきましょう。

あらためて知ろう!敷金とは

大家さんであれば多くの方がご存知だとは思いますが、ここで一度敷金についてお話ししましょう。

敷金とは、端的にいえば「担保として預かっておくお金」のことです。

どういうことかというと、アパートの住人が何らかのトラブルなどに巻き込まれて、家賃が支払われなくなる恐れもなくはありません。

そのようなときに、敷金として預かっていたお金から家賃を頂くことができるのです。

さらに賃貸物件では住人に退去時の原状回復義務がありますが、なかには破損などをそのままの状態で部屋を後にする方もいます。

このときの修繕費も、敷金から頂くことができます。

ただしあくまでも敷金は担保として預かっておくお金ですから、退去時には返金しなくてはなりません。

先ほどの家賃の滞納や修繕費を差し引いても余剰が出るようでしたら、その分を返金します。

しかし、法律上では敷金の返金についてきちんと決められているわけではありません。

賃貸借契約次第では返金する額を一部であったり、全額返金しないというケースにすることも可能です。

それではもし、この敷金を返金するとなったとき、どのように仕訳をすれば良いのでしょうか。

次項からみていきましょう。

仕訳についても知っておこう!

敷金を返金した場合の仕訳についてお話をする前に、仕訳についてもご説明します。

簿記や会計の知識がある方には、仕訳はお馴染みともいえる言葉ですね。

仕訳は、仕訳帳と呼ばれるものに記入していくことをいいます。

記入する内容は、簿記上で発生した取引の内容です。

家計簿やお小遣い帳を想像して思い浮かべると、わかりやすいかもしれません。

これらには、その日にお金を何にいくら使ったかを記入しますよね。

「○月×日 食費 500円」などと書いていくかと思います。

この会社版が仕訳帳なのです。

仕訳する場合、家計簿などと少々記入の仕方が異なり、借方(かりかた)と貸方(かしかた)に分けて記入していきます。

仕訳帳に借方欄と貸方欄がありますので、そこに書き込みます。

例えば、9月18日に消耗品1,000円分を現金で買った際の仕訳は以下のとおりです。

9月18日 (借方)消耗品1,000/(貸方)現金1,000

このように、いつ何にお金を使ったかもしくは得たのかを、仕訳帳に記録していきます。

仕訳を正確にできていないと、確定申告の際に提出する決算書等を誤った情報で申告することにもなってしまいます。

ですから、「家計簿のようなもの」と甘くとらえず、慎重に正確に仕訳を行うことが重要です。

入居者決定!敷金を受け取ったときの仕訳

それでは敷金を返金した場合の仕訳をみていく前に、まずは入居者が決定し、敷金を受け取ったときの仕訳についてみていきましょう。

仕訳については先ほどお話をしましたが、仕訳を行ううえで重要となるのが勘定科目です。

勘定科目とは、簿記上の取引を記録するために必要な分類項目のことです。

家計簿で考えると、「食費」や「光熱費」などが勘定科目に当てはまりますね。

仕訳は借方と貸方の2つに分けて記入しますから、1つの仕訳に勘定科目は2つ以上使われることになります。

9月1日に入居者が決まり、150,000円の敷金を現金で受け取った時の仕訳をみていきましょう。

9月1日 (借方)現金150,000/(貸方)敷金150,000

このように仕訳されます。

敷金とはいえ、あくまでも「担保として預っているお金」ととらえる場合は、

9月1日 (借方)現金150,000/(貸方)預り金150,000

と仕訳されることもあります。

この受け取っていた敷金を返金した場合の仕訳についても、次項でみてみましょう。

入居者が退去!敷金を全額返金するときの仕訳

敷金を受け取った場合の仕訳についてお話をしましたので、返金した場合の仕訳もみていきましょう。

家賃の滞納もなく、原状回復費用もかからなかった場合は、全額の敷金を返すことになるかと思います。

返金したときの仕訳はどのように記入するのでしょうか。

考え方としては、受け取った時の仕訳の借方と貸方を反対にするだけです。

前の項の例を用いてみてみると、敷金を受け取った時の仕訳は

9月1日 (借方)現金150,000/(貸方)敷金150,000

となりましたね。

敷金を返金した日が10月31日だとすると、仕訳は

10月31日 (借方)敷金150,000/(貸方)現金150,000

となるのです。

預り金と仕訳していた場合も、同様の仕訳をすればOKです。

特に問題もなく、敷金を返金するとなれば、仕訳もシンプルに済みます。

しかし、預かっていた敷金を、全額入居者に返金することは少ないでしょう。

なぜなら、退去時の原状回復費用を敷金から頂くことが多いからです。

その場合の仕訳についてもご説明します。

現状回復費用を差し引いて返金!そのときの仕訳は?

受け取っていた敷金を全額返金することは滅多にありません。

先ほどもお話ししましたように、原状回復費用として差し引かれるためです。

それでは、原状回復費用を差し引いた額を返金することになったときは、どのように仕訳をするのでしょうか。

ちなみに、原状回復費用という勘定科目はありませんので、仕訳をする時は「修繕費」もしくは「立替金」という勘定科目を用いて記入します。

10月31日に退去が決定し、受け取っていた敷金150,000円から、原状回復費用80,000円を差し引いた額を普通預金から返金した場合の仕訳はこのようになります。

10月31日 (借方)敷金150,000/(貸方)普通預金70,000 修繕費80,000

修繕費ではなく、立替金として仕訳をする場合は、「修繕費」を「立替金」に替えましょう。

ここでの仕訳のポイントとしては、1つの取引の中で借方と貸方の金額がピッタリ合うことです。

そのため、上記の仕訳のように、貸方欄に2つの勘定科目が登場することになったとき、その合計金額が借方の金額と合っているか確認しなくてはなりません。

金額が違っているのにそのままにしていれば、確定申告の際に指摘されることにもなり得ます。

借方もしくは貸方で、複数の勘定科目を使用する際は、金額に注意しながら仕訳してください。

敷金を返金しない!そのときの仕訳方法

これまでは敷金を返金するときの仕訳のしかたについてご説明をしてきましたが、返金しないということもありますよね。

はじめでもお話をしましたように、賃貸借契約で「全額返金しない」とあらかじめ決めている場合は、当然いつ退去しようとも敷金を返金することはありません。

そのため、敷金を受け取った時点から仕訳方法が異なるのです。

入居者に敷金を返金することはありませんから、「担保として預かっているお金」ではなく、家賃収入と同様の扱いとなりますので「売上」になります。

これを踏まえたうえで、9月1日に敷金を現金で150,000円受け取り、返金しないことが決まっている場合の仕訳のしかたは、

9月1日 (借方)現金150,000/(貸方)売上150,000

と仕訳帳に記入します。

これ以外にも、原状回復費用が思いのほかかかり、敷金を満額使用することも考えられます。

そうなれば、敷金を返金することもできませんから、これについても仕訳をしなければなりません。

10月31日に退去し、受け取っていた敷金150,000円全額が原状回復費用となったとき、

10月31日 (借方)敷金150,000/(貸方)修繕費150,000

このように仕訳されます。

返金する場合でもしない場合でも、簿記上の取引が発生した時点で仕訳を行わなくてはいけません。

その際は、どの勘定科目を使うのかを確認したうえで、正確に仕訳帳に記入していきましょう。

敷金もきちんと仕訳しよう!

大家さんであれば、入居者が決まったときに敷金を受け取り、退去時には返金するという機会が多くあるかと思います。

その際は、仕訳帳にきちんと仕訳を記録しておくことがとても大切です。

正確に記入しないと、確定申告の際に指摘されることもありますので、敷金も家賃同様、注意して仕訳を行いましょう。